第11話 公園
いつもの都内某所にある駅厩舎の屋根の上。カラスとハトはあくせく動く人間たちが汗をかいている姿を眺め、あくびをしていた。
「くああ、眠い」
「そうっすねえ」
「しかし、ここ、ハトが多いな」
「僕は群れないんで分かりませんが、ハトの縄張りみたいすよ、ここ」
「ふーん、俺には関係無いがな! くええ!」
「僕もっす! くああ!」
彼らの言う通り街には「縄張り」というものがある。鳥たちは種族ごと……強いてはグループごとにそれぞれの勢力圏を持っているのだ。
駅舎や公園の芝生はハトが多く、カラスは単独でいることが多いもののゴミ捨て場を好む。
「そういや、ハト。公園の雑草を刈り倒していたな」
「そうっすね! 今朝から僕の知り合いのハトが生き生きと向かってましたよ」
「ほうほう」
「先輩、とてもいい顔をしてますね!」
「くああ! 行くか、ハト」
「はい!」
二羽は邪悪な笑い声をあげながら、飛び立ったのだった。
◆◆◆
「そんなわけで、やって参りました。公園です」
「だから一体誰に……お、ハト、面白い光景だな」
草を刈り倒した後の広場は、様々な虫が出てきてハトたちのいい餌になる。だから、彼らは集まってくるのだ。
しかし、現在広場は異様な様相を呈していた。
いつもは隅っこの方で細々と餌を取っているスズメたちが中央を堂々と占領し、逆にハトたちが端に追いやられている。
カラスはスズメたちの中に「三羽」異質な奴らがいることに気がつく。
威風堂々としたその姿、小さいながらもハトさえ圧倒するだけの風格を備えているように見受けられる。
だが、ここで引くようなカラスとハトではない。
彼らはくあくあと鳴きながら、センターに着陸すると餌を探し始めたのだった。
「おいおいてめえら、ここはスズメ三連星のシマだと知ってのことか?」
三羽のスズメたちが口々に囀る。しかし、カラスはまるで動じない。
いくら強そうといってもしょせんはスズメ。ハトより更に大きなカラスがビビる相手ではない。
そんなわけで、カラスは無視してスズメたちの中に割り込む。
スズメは体当たりするも、カラスを動かすどころか逆に弾き返されてしまった。
「なんかやったか?」
この上なく邪悪なくええをあげて、カラスはスズメを睨みつけた。
これにたじろくスズメたち。
「かっこいいっす! 先輩!」
ハトがカラスを褒めたたえる。
しかし、その時、いやな鳴き声が。
――にゃーん
びくうううと震えるカラスとハト。
ギギギギと振り向くと、やはり奴がいた!
「ハト!」
「はい! 先輩!」
二羽は慌てて翼をはためかせ上空に逃げ出す。
「そういや、ハト」
「なんすか、先輩?」
「俺、地面から虫取るの無理」
「そうなんすか!」
くああと鳴く二羽。
彼らは「オーダーを寄越せ」という声を聞いた気がしたのだった。
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