第39話 特別編3 西の山?
んー。西の山って言われてもなあ……ユミとかユウって地名の可能性も無きにしも非ず。
うーん、うーん。あれ? カラスがいつの間にかいねえ。
人が真剣に考えているってのに何て奴だ!
いつまでもここで油を売っているわけにはいかない俺は、カラスのことは頭の隅に押しやりコンビニへ戻る。
ずっと店内を見ててくれたオネエさんにお礼を言うと、彼女?は可愛らしい笑顔を見せ「いいのよ」と言ってくれた。本気で彼女が本当にお姉さんなら、惚れていたかもしれないくらいのいい笑顔だったとだけ……。
「青木くん、何か悩んでいるの? オネエさんが相談に乗ってあげるわよ?」
レジに一緒に並ぶオネエさんが俺の様子を敏感に察知して心配してくれる。
申し遅れたが、俺の名前は
いや、口が裂けてもそんなことを言ってはいけないぞ。絶対だ。
「あ、いえ、西の山だけ分かっていて地名が不明なんですよねえ。知人が西の山がどこか知りたいみたいで聞いてきたんですけど……」
「ふうん。それなら、その別の人にも聞いてみたらどう? 他の人が情報を持っていることもあるわよ」
「確かに、そうですね」
なるほど。それなら、あいつにも聞いてみるか……。
何て思っていたら、来やがったよ。バイトが終わるのを待っていたかのように目つきの鋭い猫がお座りしてコンビニのごみ箱の前にいやがる。
「おい、人間。ソーセージをくれ」
「全く……」
俺はフランクフルトを半分に手でちぎって、猫に与えてやる。
残った半分は俺のだ。ここで注意しなければならないことがあるのだ。
それは……猫が食べ終わる前に俺が完食していなければ、残りをねだられるということ。この猫……猫の割に食べるのが早いもんだから困る。
「にゃーん、知ってたら教えて欲しんだけど……」
「なんだ? 今の俺は気分がいい。逝ってみろ」
相変わらず偉そうな猫だな、おい。
しかし、いちいちそんなことで突っ込んでいては話が始まらねえ。
気にしないことにして、俺は言葉を続ける。
「ええと、カラスが『西の山』とかユミとか言ってたんだけど、何か分かる?」
「ほう、カラスがなあ」
「知ってるの?」
「おそらく……あの人間のことだろう。それなら『高山』を目指せ」
「高山って飛騨とかそんなものかな?」
「さあな……ソーセージの礼はしたぞ。じゃあな、人間」
スタスタと去っていく猫。高山だけじゃあ分から……いや、そうでもないかも。
東京より西にあって高山って地名。そして、山の中というキーワードを組み合わせれば、どこか分かるかもしれない。
つっても、場所が若田ッところで、高山地方だという大雑把な範囲でしか特定できないけどなあ……例えば、二十三区のどの区に探し人がいるか分かったところで捜索は困難を極めるだろうなあ……。
人探しとか興味を持ったから、特定してみたかったけどここまでが俺のできる限界だな。うん。
俺は納得し、スッキリしたところで帰路につくのだった。
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