第30話 朝ごはん

――翌朝

 朝日と共にステキな自身の寝床で目覚めたカラスは、くああと大きく伸びをする。

首をフリフリ、身震いして体を振るうと朝露がバサバサーっと落ち……ては来ない。

 くえ……とりあえず、朝ごはんでも食べに行くか。

 

 一番のお気に入りのゴミ箱に行くと、あったあった透明ゴミ袋の大群が。

ここのゴミ捨て場は緑色の網で蓋をしているが、囲いも無く路上に打ち捨ててあるだけである。

 こんなもの、なんの対策にもなんねえぞ。とカラスは邪悪な笑みを浮かべると、くああと奇声を発し網を嘴でくわえた。

 そのまま首を左右に振って気合を入れると翼をはためかせる。

 カラスの揚力と網が引っ張り合い、ふわりと網が動きはじめた。

 カラスは自身が入り込めるだけ網を動かすと、中に入って行く。

 透明ビニール袋はよいものだ。カラスはくええと一つ一つゴミ袋を物色していく。

 人間てほんとバカだよなあと思いつつも自身が楽をできるのは悪くない。透明だと中身が丸見えだ。わざわざ袋を破かずともいい。


 ふむ、今日はこれにするか。朝だしな!

 カラスは目につけたゴミがいっぱい詰まったビニール袋を嘴でぐあぐあすると、中から食パンの切れ端をつまみ出す。


 さてと、行くか。

 カラスは食パンの切れ端をくわえたまま、いつもの駅舎の上に向かう。


 くえくえと駅舎の屋根で食パンを食べていると、ハトがくるっぽーとやって来た。


「先輩ー! 朝ごはんですか?」

「おう、ハトはもう食べたのか?」

「はい、もう食べました。食糧はうなるほどあるので」

「そうだな! 人間どもがいくらでも。くああ!」

「そうっすね! くええ!」


 二羽は得意げに叫ぶと、翼をバタバタさせる。

 カラスは食パンの残りを食べていると、ある事に気がつく。


「そういや、三連星の奴らに会ってないけど、あいつらどうしたんだろうな?」

「いましたっけ?」


 ハトは三連星のことなど完全に忘却の彼方にあるようだ。

 まあ、ハトだしな。カラスはすぐに納得しくああと一声鳴いた。


「……気になり出すとやたら気になる……」


 食べ終わったカラスはそう呟く。なんかこう、喉元に引っかかった何かが取れない気持ち悪さと言えばいいのか。

 ならば、行くか。ちょうど食後の運動の時間だ。


「ちょいと、散歩してくるわ。ハト」

「僕も行くっす!」


 そんなこんなで、駅舎から飛び立つ二羽。

 ひょっとしたら何処にも居ないんじゃないかと思っていたが、公園の雑草が生えそろった広場でスズメを発見した。


 意外にあっさりと見つかり拍子抜けするカラスだったが、三連星を含めた大量のスズメたちは食べるのに忙しそうだ。


「あー、草刈りしたんすね。スズメたちも必死ですね」


 草刈りをすると、虫たちが驚いてたくさん出てくるのだ。スズメたちにとってはご馳走がいっぱいてところだろう。


「なるほどな。それで来なかったんだな」

「先輩、話をしていかないんですか?」

「いや、特に用事はないしな」

「そうっすね!」

「くああ!」

「くええ!」


 二羽は公園に降り立つことなく駅舎へと帰って行った。

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