第41話 グランプリ
「それでは、第一回ぐあぐあ滑りグランプリを開催します」
ハトが高らかに謳い上げ、カラス以外の集まった面々はくええと称賛の鳴き声をあげた。
何でこんなことになっているんだ。ただ一羽だけ顔をしかめるカラスは、首を下げうなだれる。
ゆるーい傾斜でかつ長い屋根を見つけたとハトに伝えたまではよかった。しかし、いつ声をかけたのか分からないが、いざ屋根を滑ろうとやって来ると三連星とトンビがくえくえと待っているではないか。
そして、ハトが謎の宣言をして今に至るというわけなのだ。
「ハト、グランプリって何をするんだ?」
やれやれといった風にカラスがハトへ問いかける。
すると、ハトは首を傾けくるっぽーと応じた。
彼の瞳には知性の輝きが一切ないのが印象的である。
「みんなで並んで、一斉にスタートするんすよ。で、先にゴールした鳥が優勝っす!」
「おー!」
ハトの言葉に三連星だけでなくトンビまでもが歓声をあげているじゃあないか。
分かった。競争はやろう。そこまではいい。
しかし、ルール無用では勝ち負けなんて決められないだろ……カラスは頭を抱えた。
「いいか、レースってのはレギュレーションが必要なんだよ」
「んん、軍用食ですか?」
「それは、レーション! レしか合ってねえじゃないか!」
ハトの様子に話をしても無駄だと悟ったカラスは、勝手にルールを決めていく。
「いいか、競技は滑る。だから、飛んだらダメだ。足を地面につけること。いいな」
カラスの説明に一同は頷きを返す。
「それで、屋根の一番下にある庇まで先に到着した鳥が優勝だ」
「さすが先輩っす!」
「待て、まだだ、行くな。ゴール前に審判を置く。三連星の緑以外に頼んでもいいか?」
三連星の緑以外が即了承したので、いよいよ屋根を滑り降りるグランプリが開催の運びとなった。
カラス、ハト、三連星の緑、トンビか横一列になり、三連星のその他の合図を静かに待つ。
――スタート!
いよいよレースが始まり、まず飛び出したのはハトだった。
彼は勢いをつけすぎ転ぶことを厭わず思いっきり前へ踏み出した。
が、案の定、身体の勢いに足が耐えきれず転がってしまい足が地面から離れたのでリタイア。
三連星の緑は小さく軽いため、なかなか進まない。
そんな中、カラスとトンビは順調に距離を伸ばしていた。
お互いに顔を見合わせるとニヤリといい笑顔で彼らはくええと鳴く。
「先輩ー! トンビさん! どっちも頑張っすー!」
観客に回ったハトから二羽へ声援が入る。
「やるじゃねえか、トンビ!」
「お前もな、カラス!」
ヒートアップする二羽のデットヒートが続く。
しかしそこへ……
雨粒がポツリポツリと。
降ってきたと思ったら、数秒しないうちにバケツをひっくり返したような豪雨へと変わる。
さすがにこの雨の中、競技を続けることが出来なくなってしまったので、第一回グランプリは雨天順延となったのであった。
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