第26話 いつの間にか
遠出することに決まったが、せっかく人間たちが公園からいなくなったので、カラスとハトは滑り台で滑ってから移動することにした。
遊んでいると見知ったスズメたち……三連星が、カラスたちが奪い取ったスナック菓子の残りを食べているではないか。
気が付いていたが、カラスもハトもついでに奴もお腹が膨れていたから、特にスズメたちをとがめることはなかった。
ひとしきり遊んだカラスとハトは、日陰で寝そべる奴へ声をかける。
「そろそろ動くか」
「ほう。逝くか?」
「行くっす!」
わいわいとやっていると、三連星がからんでくる。
「やいやい、何だかおもしろそうなことを言ってるじゃないか。混ぜろ」
「うーん」
こいつらやかましいし……面倒なんだよなあ……とカラスはどうやってこいつらをまくかなあと当初考えていた。
しかし、寝そべったまま顔をあげる奴と目があい彼の頭にぴこーんと電球が浮かぶ。
あ、そうか。もし三連星がいれば奴が空腹で俺たちを襲う前にやりやすい三連星からになるだろう。うんうん。なら、いいか。俺の安全のためだ。
カラスは納得したようにくああと何度も首を縦に振り、三連星に言葉を返す。
「まあ、ついて来たければ構わんぞ」
「来るなと言われても勝手に飛んでついていくがな」
なら言うなよ……とカラスは突っ込む気力も無くなり、ハトと目を見合わす。
「じゃあ、行きますかー」
「はいっす!」
「おう」
カラスのやる気のない掛け声にハトは元気よく、奴はけだるそうに応じたのだった。
◆◆◆
「えー、現在……どこにいるのか分からなくなってまいりました」
「奴は飛べないのを忘れていた……くああ」
「そうっすね、先輩!」
路地を歩く奴を遠目で確認しながら、時に歩き、時に飛行しついていくカラスとハト。
「グダグダ言わすについてこい」
ぎろりと彼らを睨みつける奴に二羽の背筋が寒くなる……。
「くえええ」
「くあああ」
しかし、二羽はすぐに元のご機嫌なくああに戻るのだった。
この日は隣の隣街くらいまで進み、夜を迎える。
三連星? カラスは彼らの姿を見なかったが、いつの間にか出現しているのできっとついてきているのだろう。
別に来なくてもいいがな……カラスは心中そう思いながらくああと眠るのであった。
◆◆◆
――翌朝
奴についていくと、なんだか見たことのある海沿いの公園が見えて来る。
「あれ、先輩、ここって」
「あー、ここってあれだな、あれだよ」
うんうんと頷きあう二羽へ奴が一言。
「飯の補給だ」
確かにここは、食べ物が取り放題だ。とカラスは納得するが、思ったより自分たちが進んでいなかったことに気が付く。
海沿いの公園までは、飛べばすぐに着いちゃう距離である。
そんなわけで、海沿いの公園で間抜けな人間どもから食料をかすめ取っていると……やはり出会った。
「よお、珍しいな誘いもしないのにここにいるなんて」
そう、トンビである。
「まあ、俺たちにもいろいろあるんだよ」
「そうなんです! 旅の途中なんで」
「こら、ハト。何言ってんだよ!」とカラスが突っ込むよりはやく、トンビが反応する。
「何だか面白そうだな。俺も混ぜてくれよ」
というわけで、トンビまでついて来てしまうことになった旅路。とはいえ、トンビも後から追っかけると言うではないか。
どうやってカラスとハトを感知するのか彼らには分からないが、トンビはいつも彼らがどこにいても見つけて声をかけてくるのだから……深くは考えまい。
とカラスは思った。
そんなこんなで、この日も旅路を進み。奴曰く、明日には着くとのことだ。
いつのまにか大所帯になったカラスたち。果たして……。
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