概要
皇帝になれなかった王子は、処刑されなければならない。
オスマン帝国においてこのようなものが慣習化して、約半世紀。
スレイマン大帝の5男として生まれ、6人兄弟の「出来の悪い方から2番目」を自認するバヤズィット王子は、当然、優秀な兄弟の即位とともに、処刑されるものと思い、「一番出来の悪い兄」と共に、仲良く自堕落な生活を送っていたが…?(↓登場人物一覧あり)
*制度自体が残酷ですが、場面として残酷なとこは書いていませんので、セルフレイティング「残酷描写有り」にはチェックを入れていません。
*タイトル通り、死にゆく35歳児の一人称成長物語です。
『羅針盤は北を指さない』や他のオスマン帝国・サファヴィー朝作品の子世代編にあたりますが、「続編」という位置付けではありませんので、単
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!定められた死と、生きるということ。
皇帝になれなかった王子は死ななければならない。
生まれながらにそんな運命を定められた王子バヤズィット。
最後に残った一歳上の兄の取り巻きにより、望まぬままに反旗を翻した形になり、国を追われ、敵国の王の下に保護される。
多額の身代金と引き換えに優雅な軟禁生活を送りながら、その王と過ごすうちに、死ぬことなどなんとも思っていなかったはずの彼に変化が起きていく……。
定められた死の運命に、面と向かっては逆らわず、
俺の死は悲劇なのだが、俺はそれを笑う。
俺は凡愚だが、やっぱり特別な凡愚なのだ。
それは譲れない。
と、その死と向き合っているようで向き合っていない彼に、特別…続きを読む - ★★★ Excellent!!!胸がいっぱいでレビューが書けない
何度もレビューを書こうとして、何度も書けない……となり、読了から32時間ほど経過したいまになってようやくキーボードをカタカタしています。
……が。やっぱり書けない……!!
おわかりいただけますか……おわかりいただけますかこの感覚、この思い……!!胸がいっぱいすぎて言葉がなにも出てこないんですよ……!!
私とて物書きのはしくれ、なんとかこの作品の素晴らしさをお伝えしようと思ったのですが……
ム リ !!
だってほらぁぁああ!!こうやってタイピングする間にもまた涙がぁあああ!!これほんとの話ですよ。ほんとの話ですよ!?
というわけで、なんかもういろいろと諦めて、素直に現状を暴露することに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心にあたたかな潮が満ち、何も言えなくなる。
この物語を更新のたびにずっと楽しみに拝読し、いま最終回を読み終えたところであるが、心に何とも言えずあたたかな潮が満ち、いっぱいとなって言葉が押し流されていってしまった。
オスマン帝国最盛期のスルタン・スレイマン1世の王子バヤズィットは、身に覚えのない謀反の罪を着せられ、父祖の宿敵であるサファヴィー朝に逃げ込んだ。その主はタフマ―スブ1世、彼はカリスマ性溢れる建国者イスマーイール1世の息子に当たる。そして、彼とバヤズィットの父帝は、関係修復の代償としてバヤズィット処刑の約束を取り交わす。
もとより「兄弟殺し」の慣習を持つオスマン帝国の王子であるバヤズィットは、この「約束」によってまさしく期…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生を完結するための繋がり
死が決まっているバヤズィット、死をもたらすタフマースブ。
信仰を持っていると言うバヤズィット、信仰など持っていないと言うタフマースブ。
この二人の会話が中心に置かれた架空歴史作品です。
この作品が提示しているテーマの一つは、避けられない死を前にした人間が気持ちの折り合いをどうつけていくかだろう。
親であれば子供という存在に、何かを成し遂げた人であれば業績に、いろんな立場の人がいろんな理由をもとに自身の死に折り合いをつける。
それをバヤズィットは、タフマースブの在り方を見て、また彼との会話を通して自身を成長させて見つけていく。
バヤズィットは、関わりの中で生じた繋がりによって多くの人に残し…続きを読む