創作作品には様々な形の主人公が存在しています。
このレビュー内では、それらを物凄く雑に「変化していくキャラクター」と「変わらないキャラクター」に二分して本作の紹介に繋げさせていただきます。
「変化していくキャラクター」に該当する主人公の形式を挙げるなら
『始まりは未熟でも作中の様々な経験を通じて大きく成長し、一角の人物となる子供の主人公』
『過去の挫折で折れてしまうも作中で事件に巻き込まれて、再び立ち上がる大人の主人公』
といったところでしょうか。
彼らが主人公となる作品では、彼ら自身が大きく変わっていく場面が見所の一つであり、その成長に心を震わされます。
ただ、その性質上、変化していく主人公が「変わるために」経験する焦燥や葛藤などが受け手にもダイレクトに伝わってくることがあります。
これは欠点ではなく、カタルシスを得るのに大いに役立つ性質なのですが、受け手に精神的な負担を与える側面もあるのです。
端的に述べるのなら、彼らが主人公となる作品は、楽しむために必要なカロリーが多いのです。
他方、「変わらないキャラクター」としての主人公は、「変わらない」精神性の在り方によっては非常に安心感があります。
例えば
『どんな状況でも他者の幸福を願えて、可能な限りの善性を尽くす光の主人公』
『何らかの目的のために、己を含む如何なる犠牲をも厭わない闇の主人公』
といったように
方向性に違いこそあれど、受け手が「あいつ(主人公)ならそうする」と、物語の進行に関わらず思えてしまう主人公です。
彼らが主人公となる作品では、良くも悪くも主人公は「変わらない」、つまりは最初から少なくとも精神面に関しては完成してしまっているため、成長を楽しむことは出来ません。
一方で、彼らは問題をばかすか解決して無双するにしても、敢えなく敗北して場合によっては死亡するとしても、確固たる信念を作中で貫き通すしますので、受け手としてはキャラクターを信頼しやすいのです。
「こいつ(主人公)なら絶対やってくれるorやらかしてくれる」という、期待感を持って作品に触れられるのが個人的には一番好きなポイントです。
端的に述べるなら、安心して楽しみやすい作品と言えるでしょう。
長々と語りましたが、本作の主人公は例えの中で選ぶなら「変わらない」『闇の主人公』タイプです。
情報を当てはめますと
自身の知っている作品世界への転生を自覚した状況において
『現実となった世界を、美少女コンテンツとして楽しむために可能な限り、誰かが犠牲となるような「曇らせ」を防ぎ
その上で自身もミステリアス美少女というコンテンツになり(転生先は男性です)、他の美少女を「曇らせ」るための犠牲を己のみで背負うために
美少女パワー(情熱や執念の類い)全開で邁進する闇の主人公』
です。
本物のミステリアス美少女であろうとする、偽物の主人公は本作に登場する、どんなキャラクターよりも美しいのです。
そんな主人公「那滝ケイ」(以下、親しみを込めてケイ君と呼称します)が暮らすのは、なかなかに重たい世界観の漫画作品の世界であり、登場人物たちはそれぞれの目的のために本気です。
日常パート的な箸休めはあれど、ケイ君は多くの厄介な事件に巻き込まれたり、全速力で首を突っ込んだりします。
次々に巻き起こるシリアスでハードな展開に対して、ケイ君は架空原作の主人公に任せきりにはしません。
しかし架空原作の主人公を蔑ろにするワケではなく、彼らに敬意を持った上で原作では助からなかった「美少女」を救っていくのです。
その内心は、どれだけハードな展開でも美少女コンテンツへの情熱で爆発していますが、ケイ君はそんなことを直接口にすることはありません。
それもそのはず。
なぜならケイ君はミステリアス美少女だったからです。
本作はそうして現実に起こるシリアスな展開と、どこまでも美少女命なコミカルで少し狂気的な内心のギャップがコメディーとして成立している勘違いモノの作品です。
「変わらない」信念のケイ君が、人を世界を人外を、そして何より美少女を「変えていく」様を、是非ご一読ください。
P.S.
一読者視点としましては、大変クオリティが高い上に169話もの毎日投稿、以降はレビュー投稿現在まで続く隔日投稿という更新の速さも魅力の一つです。
また、各章のタイトルと揃えられた、各話のタイトルの統一感も面白く、日々楽しませてもらっています。
是非、初見の方は章タイトルをクリックorタッチして展開してみてください。
まず、「かませ役♂」という言葉の偏見で何度もスルーしたこと謝らないと…!ラノベあるあるだけど、この設定は1ページくらいですぐなくなります。
が、これは正直どうでも良い!主人公がすごく“いい性格”をしてます。読者もみな脳を焼かれます。
コメ欄も含めて、こんなにヤバい(褒めてます、たぶん)小説は初めてです。
『深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている』
これを体現した小説ってこと、なの…?「帰り道はありませんが。」ってこのことだったんだね……。もう、私は手遅れみたい。
最後に一言。この小説、◾️◾️の感染力強すぎて怖いよ〜〜世に知られたらパンデミックも時間の問題かも、ふぇ〜(>_<)
本作は女装からスタートして可変TSを手に入れ、さらなる完全TSを目指す求道者のストーリーであると同時に、ジャンル:TSの見どころ、楽しみ方を主人公が体当たりで一つ一つ丁寧に教えてくれる入門書、指南書でもあります。
作者様のお人柄もあってか、感想欄にも洗練された紳士淑女が集っており、彼ら彼女らの反応を合わせると、今後TSものを嗜まれるうえで感性をステップアップさせていく指針となるでしょう。
もちろんエンタテインメント性も極めて高く、寝食を忘れて読み耽ってしまうこと請け合い。
最新話まで追いついたころにはあなたも立派なTSスキーとして
「美少女TSして他人の脳を焼いて遊びたいなぁ」
と思うこと間違いなしです。
さぁ、あなたも勇気を出してこの扉を開きましょう。
帰り道はありませんが。
あらすじ
転生TS主人公になりたかったただの転生主人公がそのガッツだけでTS主人公になる話。
そして全人類をTS美少女か美少女にして世界平和を目指す話。
※↑はネタだけど嘘ついてません※
1周目はただ面白くて勢いで
2周目は伏線を見つけてニヤニヤして読んで
3周目で美少女のことしか考えられなくなる
主人公がTSモノにつきがちな葛藤をスキップして、美少女ならどうでも良いやの精神力を身につけているので、非常にサクサク物語が進みます
主人公が転生モノにつきがちな葛藤をスキップして、美少女なら何しても良いやの行動力を手に入れているので、転生したことによる展開を先読みしてつよつよムーブかますことはあんまりありません(ありはします)
主人公がその精神力と行動力でまわりを振り回し、まわりにいる美少女たちに振り回されますが、美少女だから何やってもいいんです