バヤズィット王子の処刑

作者 崩紫サロメ

99

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★★★ Excellent!!!

西欧と東欧を繋ぐ、絢爛たるオスマン帝国に存在した、残酷な風習……皇帝になれない王子は、処刑されねばならない。
謀反の疑いをかけられ、国を逃げ出したオスマンの王子、バヤズィット。ひょんなことから、彼を拾い、処刑の日まで、共に過ごすこととなったサファヴィー朝の王タフマースブ。

ときにコミカルに、ときに悲壮に交わされるバヤズィットとタフマースブの対話。
死とは、生とは……遥か遠い中東の、歴史の大河から掬い上げられた、現代に通じる普遍を、鮮やかに描いた一作です。

★★★ Excellent!!!

私はたぶん死ぬことについて限りなく最初の頃の王子と似たような感覚を抱いている気がする。

家族には申し訳ないし、(私がそう感じてしまうのは私が先に死ぬと親不幸という平凡な理由だけれども)仲良くしてくれて友だちもまぁ他にも友だちはいるだろうけど悲しむだろう。

あと痛いから死にたくない。むり、痛いのダメ。

だからこそ、こうしてちゃんと死ぬことと向き合ったバヤズィット王子に共感する。そして、そんな風に思うのはなんとかなく後ろめたさを感じていたので、この話で少し心が軽くなった。きっと私もいつか生きていたいと思えるし、それはとても喜ばしいことだ。

★★★ Excellent!!!

何度もレビューを書こうとして、何度も書けない……となり、読了から32時間ほど経過したいまになってようやくキーボードをカタカタしています。

……が。やっぱり書けない……!!

おわかりいただけますか……おわかりいただけますかこの感覚、この思い……!!胸がいっぱいすぎて言葉がなにも出てこないんですよ……!!
私とて物書きのはしくれ、なんとかこの作品の素晴らしさをお伝えしようと思ったのですが……

ム リ !!

だってほらぁぁああ!!こうやってタイピングする間にもまた涙がぁあああ!!これほんとの話ですよ。ほんとの話ですよ!?
というわけで、なんかもういろいろと諦めて、素直に現状を暴露することにいたしました。伝われ、この思い。

最初から提示されているように、この作品の最後には死が待っています。
そこに向かうまでの、死ぬ運命にある王子とその処刑を引き受けた王の語らいの日々。
ほとんどその2人がおしゃべりしてるだけなのに、なんでこんなにいろんな感情が胸のなかを渦巻くのか……!!
もうやだぁ……やめてぇ……ああああぁぁぁ……!!

でも。
でも!!
決して悲劇ではないんです。
それが素晴らしいんです。
だからといってこの「皇帝になれなかった王子は死ぬしかない」という制度を正当化しているわけでもなく。
だから……!!とにかく……!!

わかってくれこの思い……!!!!

というわけで読んでくださいお願いします……そして私の代わりにレビューを書いてください……私にはもう……これしか言えない……

★★★ Excellent!!!

この物語を更新のたびにずっと楽しみに拝読し、いま最終回を読み終えたところであるが、心に何とも言えずあたたかな潮が満ち、いっぱいとなって言葉が押し流されていってしまった。

オスマン帝国最盛期のスルタン・スレイマン1世の王子バヤズィットは、身に覚えのない謀反の罪を着せられ、父祖の宿敵であるサファヴィー朝に逃げ込んだ。その主はタフマ―スブ1世、彼はカリスマ性溢れる建国者イスマーイール1世の息子に当たる。そして、彼とバヤズィットの父帝は、関係修復の代償としてバヤズィット処刑の約束を取り交わす。

もとより「兄弟殺し」の慣習を持つオスマン帝国の王子であるバヤズィットは、この「約束」によってまさしく期限付き――ラマダン明け――の生命を異郷の地で終えることになるだろう。

かくして、敵国の宮中でバヤズィットは敵国の王と生活を共にすることになった。神を信じる前者、信じない後者。殺す者、殺される者。2人はある時は食事を取りながら、ある時は寝台に横たわりながら会話を交わす。対峙し、共感し、反発しつつ……。こうした対話や内省のなかでバヤズィットは来し方を振り返って家族を思い、現在目の前にいるタフマースブやその家族を観察し、来るべき未来について考える。

なぜ死ななくてはならないのか、なぜ生き続けていくのか?神を信じるということは?あるいは信じないということは?

哲学的神学的な問いが2人の間を往来して化学反応を起こし、2人を変える。だが時は、処刑に向かって淡々と流れていく……。

宮中といういわば密室で2人の会話劇が中心になるが、話の広がりと深さに惹きこまれ、人物たちの情愛に心打たれ、また苦しみと葛藤に時に心を痛めながらも読みすすめ、最終回は落涙を禁じえなかった。もっとも、これはバヤズィットの見出したものに安堵し、共感しながらのいわば嬉し涙である。

本作も含め、この作者さんの作品はその高い… 続きを読む

★★★ Excellent!!!


死が決まっているバヤズィット、死をもたらすタフマースブ。
信仰を持っていると言うバヤズィット、信仰など持っていないと言うタフマースブ。
この二人の会話が中心に置かれた架空歴史作品です。

この作品が提示しているテーマの一つは、避けられない死を前にした人間が気持ちの折り合いをどうつけていくかだろう。
親であれば子供という存在に、何かを成し遂げた人であれば業績に、いろんな立場の人がいろんな理由をもとに自身の死に折り合いをつける。
それをバヤズィットは、タフマースブの在り方を見て、また彼との会話を通して自身を成長させて見つけていく。
バヤズィットは、関わりの中で生じた繋がりによって多くの人に残した自分というところに、折り合いをつけるための幸せを見つける。

折り合いまで彼を導いたのは信仰。
理不尽な死を受け入れるためには、それしかなかった。
信仰というと、自分なりの宗教観を持ち、ある種の思考停止した姿勢をもたなければならないように感じるものだが、バヤズィットはそうではないと言う。

「何とかなる、は信仰。願望は、祈り。」

何とかなるという根拠無き期待が信仰であり、願うことは祈りなのだと言う。

ああ、確かに、全ての期待に明確な根拠を保っているわけではない。
自分の力ではどうしようもないことには願ってしまう。

その姿勢は思考停止ではない。
人知の及ばないところに信仰や祈りが必要となるのだと言う。

作品ではバヤズィットの死の瞬間までは描かれていない。
だが綺麗に折り合いをつけて彼は死んでいくのだろうと読者へ想像させる。
そこに切ないストーリーでありながら、生を潔く感完結させる幸せを持ち得たバヤズィットへの羨ましさを感じさせられる。

重く難しいテーマを、過不足なくサラッと扱われている作者さんの知識と構成に驚く。

★★★ Excellent!!!

 16世紀オスマン帝国とサファヴィー朝を舞台にした歴史小説・神学的ディスカッションです。

 偉大な父––サファヴィー朝の創設者・イスマーイール1世とオスマン帝国の絶頂期に君臨したスレイマン1世––を持つ、タフマースブ1世とバヤズィット王子が主人公。どうやら年の差10歳でありながら家族のような兄弟のような、それでいてそうでもないような、面白い心の絆が、少しずつ出来上がっていきます。
 お互いの心に秘めたもの、特に、父がなぜああなったのか自分のルーツを突き詰めて考えていった先に、「あること」をしてしまったタフマースブの寂寥と、幼いバヤズィットの従姉に対する失恋の仕方には、個人的にあまりに悲しいものがありました。
二人が話している中でそう言ったことが吐き出されて行き、少しずつ浄化されて行くのかと思いきや……。

 この二人の後ろには、スレイマン1世との取引で、オスマン帝国とサファヴィー朝が停戦する代わりに、「罪人」であるバヤズィットをタフマースブが処刑しろという、残酷な予定が横たわっています。
つまり、バヤズィットはもう、残された命の時間が決まっています。そして、その命を一瞬にして奪うことを予定されたタフマースブ。

 ゆえに出て来る、「生きていること」に対する葛藤、神に対する様々な葛藤。
 全く世俗的な意味での救いがないのですが、妙に清らかな気分になるのは、死ぬという事を、バヤズィットが最後はきちんと受け入れ、そこに悲劇をけっして入れない、という強い決意を感じるからだと思います。神学的な清浄さ……というか、美しさを感じます。

あとご飯が美味しそうです!

★★★ Excellent!!!

自身が起こしてもいない謀反により、国を追われた王子・バヤズィット。

彼が身を寄せたのは、敵国・タフマースブ1世の宮殿。

生まれた時から処刑される運命を背負った王子と、敵国の王。

この二人の会話が中心となって、物語が進みます。


考え方もこれまでの人生も、あまりに違う二人が交わす会話に、魅せられ、画面をスクロールする手が止まりません!


まだ物語は途中なのですが、この二人が、今後、どんな言葉を交わすのか、そして、最期をどんな想いで迎えるのか。

心震わせながら、最後まで読ませていただきます……っ!