剣と魔法的テンプレを踏まえつつもジェットコースターのように目まぐるしい展開の連続で飽きさせない上質な成長物語&戦記物。
こうくるか!という展開の連続だが粗っぽいストーリー展開かというとそうではなく、あくまでとても丁寧に展開していく。
戦闘描写や心理描写はとても細かく、特に剣を使った戦闘シーンは非常に熱を持って描かれており、手に汗握る攻防の情景が目に浮かぶようだった。
また、多彩な剣の流派が実際に存在するかのように説得力のある描写で描かれておりその点も読み応えがある。
この作品の核には「愛」というテーマがある。
主人公の鬱屈している内面やヒロインの嫉妬描写がこれでもかというくらい何度も繰り返し描かれているのでその点については好き嫌いが分かれるかも知れないが、読んで損することはないはずだ。
主人公は、魔法や治癒魔法というチート能力を持っている。しかし安易な主人公最強設定とはかけ離れたストーリー展開で、劣悪な環境やとてつもない強敵が、次々と登場する。仲間や味方のキャラクターだけでなく、敵方のキャラクターも精細に描かれており、非常に魅力的な群像劇になっている。異世界ファンタジーが陥りがちな、魔法等によるご都合主義が、この作品には感じられない。戦闘シーンに、剣術の精緻な表現や心理の駆け引きを描くことで、魔法を一種の戦闘技術にすぎないものとして現実感を持たせている。この戦闘の細かい描写が、スリル感を増大し、大きな魅力になっている。これから主人公が、この過酷な環境でどのように成長していくのか、更新が待ち遠しい。
異世界転生とは第二の人生だろうか?本作の主人公はそれを否定する。これは延長戦。渇望に焼かれる男が旅の果てに得る物は破滅か救済か?続きが気になって仕方ない作品だ。ストーリーやテーマもさることながら、心情、情景、戦闘、人間関係、文化、どの描写も卓越している。登場人物はどれも生き生きと描かれているし、危険な戦闘からは冒険のスリルと興奮を感じられ、文化や情景の変化は主人公の旅に空間的広がりを与えてくれる。これ程の作品がWeb小説のまま儚く忘れ去られて終わるというのは極めて惜しい。
都合の良い「人生やり直し」を否定してるだけあって、スキルもチートも無いリアル路線の作品です。主人公とヒロイン達は様々な経験を経てゆっくりと、だが時に花開くような成長や変化を見せてくれる。まずはここに注目して読んで欲しい。すると、主人公達が見せる祈りにも似た切実な想いをより深く味わえると思います。
また、剣と魔法の力関係や敵キャラと主人公陣営の実力はとても良いバランスとなっています。生々しい命のやり取りを感じさせてくれる戦闘描写は、主人公陣営の勝利を予想している読者にも手に汗握らせてくれること間違いなしです。
読者が主人公と共に旅をできる作品であり、読めば読む程に引き込まれる仕上がり。この小説と出会えた人間は幸福に違いない。君も紅迷ならぬ獣迷になろう!
骨太なテーマと鮮烈なキャラクターが魅力的な今作だが、その辺りについては既に諸兄姉のレビューに詳しいので、ここでは割愛したい。
個人的に他に注目しているのは「魔法剣士」というロマンあふれるモチーフに果敢に挑んでいる点だ。
ファンタジー世界を舞台にしているのであれば、アクションに魔法を登場させたくなるのが人情というものだが、一方で剣劇というのも捨てがたい魅力をもった要素である。だが、それを両立させながら主人公を描いていくのが大変な作業であることは想像に難くないし、実際に見事に魔法剣士ヒーローを描ききった作品には中々お目にかかれない。時代小説とファンタジー小説を愛読し、黎明期からネット小説を乱読してきた身からしても、成功例と思えた作品は片手で数えられるほどだ。
この作品の活劇シーンはどれも息を飲むほどの迫力で描かれているが、その中で魔法と剣の二要素がバランスよく配置されている。(ただし、あくまでも主眼に置かれているのは今のところ剣であり、魔法は副の色合いが濃い)
技の解説や説明はクドくなくテンポのいいもので、それでいて描写の凄みは些かも衰えていない。また、剣と魔法を扱える主人公が強大な存在となりすぎて陳腐化する展開にもなっておらず、かといって遅々として成長や活躍をしない退屈な筋書きでもない。総じて、しっかりと練られたアクション場面が続く。
今作は連載中であり、これから主人公がどういった足跡を辿っていくのかはまだ分からないが、現時点で既に読み応えのある「魔法剣士」モノとなっており自信をもって推薦できる。もしも、あなたが剣技や魔法が飛び交う重厚なアクションファンタジーを読みたいと考えているならば、是非この作品を手にとってみて欲しい。