概要
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ゾンビウィルスの感染は今もまだ続いていた。主人公の佑介は、母がゾンビになったという告知、受容、そして社会からの偏見に苦心しながらも、母と二人暮らしを続けていく。
日本が直面する危機とゾンビを掛け合わせたハードShakai-Fukushi(SF)作品。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ゾンビもので現代社会に切り込んでいくなんて!
タイトルにあるように、こちらの作品はいわゆるゾンビものですけれど、描かれているのは「福祉」の問題なのです。
ゾンビ化が進行していく母を、主人公である息子はどう支えていくのか。そもそも「息子がどう支えていくのか」という問いが正当なのか。
また介護の問題を念頭に描かれているのは承知しつつも、育児に奮闘する自分にもすごく身にしみる言葉がたくさん出てくる物語でした。
じわっと泣けます。じわっと。
堅苦しくなりがちな「福祉」というテーマを、「ゾンビもの」のキャッチーな衣で読者に届けてくれるステキな作品です。
多くの人にこの作品が届きますように! - ★★★ Excellent!!!この物語はリアルである
この物語は紛れもなくリアルである。
……え? 母親がゾンビになるなんてリアルではありえないって?
ふむ、なるほど。では少し考えてほしいのだが、自分の親が認知症やアルツハイマーを患ったとしたらどうなるか。
思考は後退し、食事や排せつも含めて日常生活はままならなくなる。
実の子供だということもわからずに強くあたられることもある。
介護疲れがために痛ましい事件も起きていることも見ないふりはできない昨今だ。
繰り返す。この物語は紛れもなくリアルである。
ゾンビになりゆく母親を支える主人公が思い悩むさま、彼を取り巻く環境や衆人の目、社会的な支援の仕組みなどが忠実に描かれている。
どうだろう。あなた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!仮初の平穏の中、恐怖が静かにじわじわと忍び寄り身に刻まれる
良くあるゾンビ映画はゾンビに襲われるという殺伐とした恐怖と、追い詰められた人々の狂乱、逃げ場のない悲壮感。そこから逃げき合った後の解放感、逃げきれず終幕する終劇、そんなイメージかもしれない。
しかし、これは違う。それだけではない。
どれだけゾンビに身を切り刻まれて苦しむ痛みというよりは心の痛みである。もちろん、ゾンビに襲われる恐怖が無くなったわけでは無い。
これは、適切な表現か分からないかノイローゼになりそうな苦悩と葛藤とどう向き合うか、それをゾンビという題材を使用して描いている様にも感じる。
まだ完結していないので分からないが、この話の先に解放感と言ったものがあるゾンビ話なのか、絶望の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ある意味で、こんなに深刻なゾンビ小説はない
ゾンビ禍と呼ばれる大事件の後、日常を取り戻した世界でゾンビの驚異はなくなった。表面上は。
ゾンビの発生は根絶できていないが、適切な治療によってゾンビ化は防ぐことができる。人類はゾンビとうまく付き合い始めている。
ただし、兆候の早期発見と適切な投薬が重要となる。
怠れば身内を含めた生活が、人生が崩壊していく……
誰しも自分の愛する人が変わってしまうこと、もう元には戻らないことを簡単には受け止められない。その人の考えや生き方も尊重してあげたい。
そうして問題に踏み込めず、先延ばしにしていればやがて取り返しのつかない事態に陥ってしまう。
親族介護が抱える辛さを的確に捉えた描写は、まるで我が身の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ゾンビ×介護という異色の社会派SF!
少子高齢化真っ最中の現代社会において、決して目を背けることができないのが介護問題である。しかし重要な社会問題であっても、普通に書いてしまっては説得力やリアリティの面でノンフィクションに負けてしまう。
どうせ書くならばフィクションならではの一捻りが欲しいものだ。
そして本作で作者が現実を捻るための道具に選んだのが「ゾンビ」だ。
ゾンビ禍によって妻と子を失い、年老いた母親と2人暮らしをするサラリーマンの主人公。しかしある日、医者から母がゾンビになったという宣告を受けてしまう。
ゾンビになった母の面倒を見るという設定は一見ギャグっぽいのだけれど、実際に読んでみるとそんな生易しいものではない。
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