42.『海と空』の振り返り

はい、タイトルの通りです。


新作『海と空 - 終末世界の少女たち』が先日完結しましたので、収穫と反省点を整理していきたいと思います。


振り返りであんまりぼかしてもしゃーない、と思うようになってきたので、がっつりネタバレしていきます。未読で一応いつか読むかもしれない、みたいな人は今回スキップいただいた方がよいかもです。


まぁネタバレありでも楽しめなくもないか。逆に今回のエッセイがきっかけで興味を持ってもらえるかもしれない。一応作品のリンクはのっけておきます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889379699






では、振り返りを始めていきます。


まずは今作『海と空 - 終末世界の少女たち』の狙いの整理から。


【狙い】

1.完結させてから日次更新で公開する

2.ストーリーとして(10万字程度で)しっかりまとめる

3.三人称でしっかり書く

4.爽やかな雰囲気を作る


はい、ということでいつも通り目標難易度は低めです。PVとかフォローとか★の数は追いません。(まぁ長編で★100をいつか達成してみたいなぁなんて話はあるのですが、それは別にこの作品じゃなくてよい。先は長い。)


で、それぞれしっかり達成できました

1.完結させてから日次更新で公開する⇒できた

2.ストーリーとして(10万字程度で)しっかりまとめる⇒まずまずでしょ

3.三人称でしっかり書く⇒褒められました

4.爽やかな雰囲気を作る⇒レビューで言及いただけました


特に成長としては2。『僕らの終わり』ではここがめっちゃくちゃ課題で、長くなったうえにストーリーのまとまりもちょっと課題が残ったなぁという反省がありました。それが今回、10万字ちょいでしっかりまとめることができました。20話あたりで話がガラッと変わる工夫(後述)を入れつつです。まだ100%納得できる出来かと言われるとそんなことはないのですが、1作目よりかは整っているのは間違いないです。


3についても、三人称での長編は初だったのですが、文章上手くなった、と感想で褒められましたのでOKでしょう。実は「なろう」にも投稿していて、そちらでは初めて5つ★評価ももらえました。

・短めの文章を意識する

・体言止めは乱用しなければある程度までOK

・三人称で描く範囲のルール徹底(登場人物では主人公のカイだけ思考を記述して、それ以外の人の思考は伏せる⇒カイへのフォーカス、感情移入促進)

あたりが今回意識的に取り組んだところです。


【評価】

んで、上述の狙いを実践できたうえで、それが効果的だったのかも語らなくてはいけません。そもそもの狙いは有効だったのか。特に1ですね。


【1.完結させてから日次更新で公開する】

これをやろうと思った理由はいくつかあるのですが

・前回週次更新の時に「前のストーリー展開覚えてない」みたいなコメントをもらった

・毎日更新した方が読者の目に留まりやすいと聞いた

あたりの話があったからです。


【読まれやすい?】

読者の目に留まりやすい、は正直微妙でした。前作と比べてPV、フォローが増えた印象はないです。ジャンルもホラーとSFの違いがあるので一概には言えないですが、たくさん読まれるためにはキャッチコピーやら1話目のつかみやら、よく言われるようなことを大事にした方がよさそうです。


ただ、日次更新の場合、読者が熱が冷めきらないうちに完読してくれるというのはあるかなと思いました。(完読率も前作とそう差はないのですが、前作では序盤で好意的な感想をくれた人が、時間が経つと離脱してしまうことがあった。)


【安心感】

別のメリットとしては、物語が仕上がってる状態で公開できる安心感は自分的には格別でした。前の週次更新の際にあったのが、


あー、物語的にあの展開がよくなかった、修正したいー


みたいな気持ちになっても、すでに何人かに読まれていたらそうそう修正はできないです。僕の場合多少ストーリーをこねくりまわす志向があるので、しっかり全部作ってから放流するのが向いている気がします。


【ギミックへの貢献】

さらに言えば、先ほどちらっと話した20話で組み込んだギミック。これも前の話が頭に残っていてこそ効果を増すものなので、そういう意味でも日次更新が安心だったかもしれません。


どういうことかというと、

・1日(つまり一回の自転)が30時間の地球が舞台

・人々は海上都市の中、水につかった状態で生活している

・空気の中に出られる時間は90分以内が推奨されている

・大気中では「潮風病」(貧血の症状)のリスクがある

・大昔にクジラをはじめとしたいろんな生物は絶滅してしまっている

こういう要素を並べておいて、

・実は5000年前の出来事が原因で地球の重力が増大していた

という事実を20話で明かして、それまで乱雑に並んでいたいろんな設定が、実は科学的にすべてつながっていた、と読者の頭の中で再整理される(この時に割と快感があるはず)というのが今作の構造上のウリでした。


結構好評でした(と言っていいと思う)。すでに3名から明確にコメントでそこを評価いただけましたので。


これも日次更新で物語の成分を摂取していただいて、間を置かずに種明かしを読んでいただけたからかなと思ってます。


【ギミックの功罪】

ただ、良い話ばかりでもないです。↑のギミックを効果を最大にしようとすると、序盤は気づかれちゃだめなんです。幸い重力は目に見えないものなので、伏せながら書くのはそんなに難しくはなかったです。が、じゃあ序盤は何で読者を引き込むのか。これが課題でした。


自分としての回答は、そこを思いっきりファンタジーに寄せる、でした。科学的な説明は避け、バトルや空からきた少女クゥの謎で引っ張る選択です。


……これがあんまり効果的じゃなかったかもしれない。


なにしろジャンルSFで設定されておきながら序盤展開されるのはファンタジーなのです。20話まで進んでくれれば、あぁ、こりゃ確かにSFだったわ、となってくれるはずなのですが、そこで一番魅力を感じてくれる(と思いたい)SF好きの人たちが、


これファンタジーやんけ


と序盤で離脱してしまってるかもしれない、という状況です。


自主企画でたまに見る「あなたの物語に感想書きます」系のやつ、なるべく参加するようにしてるんですが(否定的なコメントをもらいやすいので)、そこで頂いたのが上記の意見です。ごもっともだと思いました。


じゃあ序盤SF的に引っ張っていける何かが代わりに用意できるのか。しばらく考えましたが僕の引き出しにはまだなかったです。ただ、そういうジャンル違いのギャップを作らないように今後は気を付けなきゃいけないですね。


【パクリ疑惑】

半分余談ですが、その感想企画でもう1つ指摘頂いたのが「白鯨伝説」という1990年代後半のアニメとの類似性です。僕は寡聞ながらこのアニメを知らなかったのですが、NHKのBSでやっていたそうなのでかなり有名なものなのでしょう。


Wikipediaからストーリーの説明引っ張ってきました。

引用ここから――――――

西暦4701年。人類が宇宙に広がったはるか未来、自動操縦のまま宇宙を漂流する廃宇宙船は「鯨」と呼ばれ、それを回収することを生活の糧とする「鯨捕り」たちがいた。その海千山千の鯨捕りたちのなかでもっとも有名なのが、エイハブ船長率いるレディ・ウィスカー号一味「エイハブ鯨捕りカンパニー」であった。

――――――――ここまで


……くそ似てる。いや、舞台が宇宙か地球かという違いはありますが、感覚的にはすごい近いものを感じました。


まぁ作る時に同じような設定はきっとあるだろうな、という風には思ってました。このアニメだけでなく、同じような設定で始まる話は掃いて捨てるほどあるかもしれません。けれど結局、後半の仕掛けが命であるからこそ、序盤にも多少のオリジナリティを保っておかないと意味がない、うーん、そういうことなのかな。反省です。


【今後について】

色々反省点はありましたが、着実に書けるようになってきている感触はあります。なので、まだまだ新しい作品を出していきたいと思ってます。ただ、次それをどういうものにするか、まだ決めあぐねてます。


これまでの長編2作とも、何かを伏せて、その謎とサスペンスを足掛かりに読者を引っ張って、後半それを明かす、という骨組みでした。たぶん自分がそういうのが好きなんだと思います。


ただ、この謎で引っ張る難しさも感じている今日この頃です。上手くやらないと読者のストレスになるだけかもしれない。ちょっと別のフレームワークも試してみた方がよいかも。考えてみます。


あとはジャンル。Twitterで「ファンを作るには、一本筋が通った作品作りをしたほうがいい」という話を見ました。つまり、前はホラー、今度はSF、次はファンタジーとかコロコロ作風を変えていると読者は追ってくれないよ、ということらしいです。その通りだとは思います。が、うーん、それでも今はまだ色々な領域にチャレンジしたいので、しばらくは色移りの激しい状態が続きそうです。


このエッセイを読んでいただいている皆さまも、もちろん長編とか、他の作品も読んでいただければ嬉しいですが、まぁ気が向いたらぐらいで大丈夫です。引き続きよろしくです。


……ちょっと今回長くなりましたね。ただ、まぁそれぐらい1作完結させると学びも大きいということで、これからも頑張っていきます。


ではまた。

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