13.何かを仕込む一人称

この界隈で活動されている方にはもはや説明不要だと思いますが、このエッセイはあくまでも僕自身の整理ということなのでご容赦ください。一人称と三人称の話です。


一人称:主人公の視点で物語が進む。

主人公の思考、行動、見た光景で文が構成される。


三人称:(厳密には色々パターンがあるが)登場人物以外の視点で物語が進む。

ある一定の基準のもと、登場人物の行動、背景の描写で文が構成される。思考が描写されることも割と多々ある。


どちらかというと僕は一人称が得意です。というか小説をそんな書いたことがこれまでないので、三人称で書いた経験がほとんどありません。じゃあなんで一人称の経験があるんだ、といえばSNSで日記なり自分語りする習慣が広がってきたからですね。僕もその例に漏れず、Web上で色々と書いていました。(ここではオープンにする予定はありませんが……。)世の中で、比較的軽めの一人称の物語が増えてきたような印象を勝手に持っていますが、これにはそういう背景もあるのかなと思っています。


だからと言って、一人称が低レベルで三人称が高レベルだなんていうわけでもないと思っています。や、三人称でちゃんと書けるとカッコイイというイメージはありますけどね。なので、最近は三人称の練習をしていたりします。ただ、一人称でも仕上げ方次第ではかなり面白いと思っていますし、いろんな方々が整理されていますが、要は使い分けなのかなと。


【一人称でやりやすい】

・強烈な個性、魅力を持つ主人公で攻める。

地の文でも主人公の思考が駄々洩れなので、主人公の個性を存分に発揮できるんじゃないかと思います。コメディタッチな物語は一人称の方がやりやすいんじゃないでしょうか。また、ずっと読み手と主人公が触れるので感情移入も狙いやすいはずです。


・制限された視界、思考で読者の裏をかく。

意図的に主人公に勘違いや見落としを発生させて、後で「こういうことだったのか」と明らかにするやり方は一人称ならではじゃないかと。(信頼できない語り手、ともいうようですね。)これは三人称だとどうしてもアンフェアな印象を与えてしまうので難しい気がしてます。それでも上手くやる人もたくさんいるわけですが、僕にはまだムリ。


【一人称でやりにくい】

・群像劇や複数同時並行的なストーリー

大勢の人が絡むと一人称より三人称の方がやりやすいかな、と思ってます。というかどうしても一人称だと、その場に主人公がいて、物語のキーとなる事象を認識しないといけないので、いろんな場所で物事が起きる話に向いていません。

複数の登場人物で一人称をやっても良いと思いますが、書き分けはけっこう技術が要る気がします。それよかは三人称で一本語り口を統一した方がやりやすいかなと思います。(あくまでもやりやすい、やりにくいの評価です。)

そういう意味ではやっぱり戦記ものはスケールも大きく、複数陣営を平等に書き分けられる三人称なのかな、という感じになりますね。


・そもそも主人公を選ぶ

やっぱり主人公の物差しで表現の幅が決まってくるので、多少の行動力、知性が欲しくはなってきます。そういう意味で主人公の人物像が少し限定されてきます。あとは練習次第かもしれませんが、異性の主人公は書きにくいということ。僕は男なので、やっぱり女性主人公はまだ難しいです。


……ということで、まあいずれにしても一人称では主人公から出来事を隠し、三人称では登場人物の思考を隠す、という特性を上手く使うのが大事かなと思います。こういう『何かを隠す』ことが物語のスパイスかなと思いますので。三人称で最初から全部ベラベラ説明してくれる作品もあるにはあるわけですが、個人的にはそういうのは少々勿体ないかなと思ったりします。


僕の場合、たぶんまだしばらくは一人称の作品が多めになると思います。だけど、それであればその特性、特に『裏をかく』というところは積極的に狙っていきたいと思います。僕が一人称で書き始めたからには、何か仕込んできたな、と思われるくらいには。……まあまだ腕はしっかり磨かないといけないわけですが。


今やってる匿名ロボットバトルのやつは、期間が終わったらショートショートとして公開する予定です。その中に追加していく感じで一人称、三人称どちらも練習していきたいですね。


ではまた。

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