概要
*マグネット!で区切りを少々変更して掲載中。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!言葉はモザイクとなる
あっちのモザイクじゃないですよ?
(いきなり台無しにしてくスタンス)
インドあたりの経典にも感じることですが、イスラームについてもつくづく思うのは、言葉そのものが一つの文様であり、レリーフとなっている、と言うこと。そしてこれはまた、この小説でも強く実感したのです。言葉が持つ含意ではなく、ただその響きが一つのモザイクとして胸に届く。
オスマンの近くにハプスブルクがいたあたりとか、そのあたりの歴史に疎い自分にしてもなんやねんそのゴジラ対ビオランテ感があります。どっちがゴジラでどっちがビオランテかなんて、この場では些細な話です。ここで言いたいのは頂上決戦を傍観する「目線」と言う奴が大変な好物…続きを読む - ★★★ Excellent!!!威厳と自信に満ちた王イスマーイールは、チャルディラーンの地で何を見たか
16世紀西アジアの二大大国であるオスマン帝国とサファヴィー朝イランが衝突した「チャルディラーンの戦い」。この敗戦は、強烈なカリスマと人望で勝利を重ね自信に満ち溢れたイランの王イスマーイール一世にとって、衝撃的な事件でした。その後、イスマーイールは政治への関心を失くし宮殿に籠るようになるのです。
過度に堅くなりがちな歴史モノを、カジュアルだが軽薄にはならない絶妙な文章でテンポよく書き綴られています。
ちょっと勉強の息抜きに……、と思っていたはずが、知らぬ間にページを次々とめくってしまい、なんと読み終わっていました。あらまあ。
ですが、スラスラ読めるといっても、中身がないわけではありません…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歴史知識ゼロでも夢中になれる、短編なのに歴史大河小説
さすがにオスマン帝国という言葉くらいは聞いたことあるけど、それ以外はまったく知りません。
が、史実に則った歴史小説みたいです。とにかく地理も地名も人名もまったく分からないぼくが読んでも、引き込まれてしまう物語世界。
正直地名と人名がごっちゃになって、訳分からない部分もあるのですが、そこはノリでカバーしました。
短編小説であり、すぐに読めてしまう割には、壮大な歴史の流れと人の運命の妙を存分に楽しめます。創作に頼らず、きちんと史実を見据えた上で小説に出来るのは凄い。安心してみ読めます。
短い時間ではありますが、ぼくの心は確実に時空を超えました。
そして、題名にもなっている羅針…続きを読む - ★★★ Excellent!!!高潔な精神に惹かれ合う若者達の、心を揺さぶられる人間ドラマ
羅針盤――本作ににおいてこの言葉は、実際のコンパスではなく、人の心の、そして、“北”は、物語の主人公であるサファヴィー朝の建国者、イスマーイール1世の暗喩に用いられている。
イスマーイールの美しく高潔な容姿とその精神に、周囲の人間はまるで羅針盤が北を示すかのように跪いてきた。
しかし、オスマン軍との決戦において、オスマン軍の羅針盤は“北”を示さなかった。
その挫折の一戦とその後の彼の転落を描いた短編だが、戦記物かという先入観は数話読み進めるうちに払拭され、崇高で濃密な人間ドラマであることに気づく。
敗戦が濃厚となった場面で交わされる、親友タフマースブとのやり取り。
命を賭す戦場でのやりと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その王は美しいがゆえに敗北する
十六世紀初頭、現在のイランの王《シャー》であったイスマーイール1世。救世主を自称する彼は、邪悪なほど美しい王だった。父の死のためにわずか十歳で王となった彼は、無敗を誇っていた。オスマン朝最高の軍事的手腕を持つとも讃えられる一方で、その冷酷さを恐れられたスルタン・セリム1世とチャルディラーンで見えるまでは。
容貌のみならず心も並外れて高潔で美しい王イスマーイール。救世主に相応しい美を己に律したがために敗北した彼と、その腹心の部下であり友人である騎士タフマースブ。そしてタフマースブの妹であり、イスマーイールの妃であるタジルー。そして「敵」であるオスマンの王子スレイマン(後の大帝です!)……。そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!我が名を刻み、親愛なる友へ。美しく貴きふたりの男と、抗いがたい磁力と。
万人を統べる王たるもの、常に美しく正しくあらねばならない。
否、美しく正しき者にこそ万人は従い、彼を王と讃えるだろう。
若き王たるイスマーイールはその美しさと正しさによって、
おのずと兵民に選ばれ、救世主と崇められて歩んできた。
であればこそ、敵国との戦に当たっても厳正たらんとする。
それが彼にとって生涯最初で最大の負け戦となるのだった。
高校世界史の資料集で一際エキゾチックな魅力を放っていた
中東およびイスラーム世界を舞台とする、繊細な歴史物語。
羅針盤は北を指すものだ。指すこと能わざるならば、何故。
羅針盤とは一体何の比喩なのか。彼は王か、はたまた罪人か。
勇壮な戦装束に身を包…続きを読む