言葉はモザイクとなる

あっちのモザイクじゃないですよ?
(いきなり台無しにしてくスタンス)

インドあたりの経典にも感じることですが、イスラームについてもつくづく思うのは、言葉そのものが一つの文様であり、レリーフとなっている、と言うこと。そしてこれはまた、この小説でも強く実感したのです。言葉が持つ含意ではなく、ただその響きが一つのモザイクとして胸に届く。

 オスマンの近くにハプスブルクがいたあたりとか、そのあたりの歴史に疎い自分にしてもなんやねんそのゴジラ対ビオランテ感があります。どっちがゴジラでどっちがビオランテかなんて、この場では些細な話です。ここで言いたいのは頂上決戦を傍観する「目線」と言う奴が大変な好物であり、見事に潮流から取り残されたものの安堵と空虚と後悔と達観のないまぜとなるラストがご褒美でした、ということなのです。くっそう、サマになるよなぁ、イスラームの奴ら……!

 シルキーな肌触りの文藻と、敗者の尽きせぬ想いと。大変美味しゅうございました。このあたりの歴史を学んだ上で、再訪したいものです。

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