我が名を刻み、親愛なる友へ。美しく貴きふたりの男と、抗いがたい磁力と。

万人を統べる王たるもの、常に美しく正しくあらねばならない。
否、美しく正しき者にこそ万人は従い、彼を王と讃えるだろう。

若き王たるイスマーイールはその美しさと正しさによって、
おのずと兵民に選ばれ、救世主と崇められて歩んできた。

であればこそ、敵国との戦に当たっても厳正たらんとする。
それが彼にとって生涯最初で最大の負け戦となるのだった。

高校世界史の資料集で一際エキゾチックな魅力を放っていた
中東およびイスラーム世界を舞台とする、繊細な歴史物語。

羅針盤は北を指すものだ。指すこと能わざるならば、何故。
羅針盤とは一体何の比喩なのか。彼は王か、はたまた罪人か。

勇壮な戦装束に身を包みながらも、彼はなんとも耽美で儚い。
平時ならば羅針盤は常に北を指し続けただろうか、とも思う。

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