その美しき人の美しさとは姿かたちだけでなく、その存在そのものが尊い

サファヴィー朝の創始者イスマーイール一世がオスマン帝国のセリム一世に破れるところから始まるこの物語。
チャルディランの戦いと言えば中東の長篠の合戦としてご存知の方も多いのではありませんでしょうか?(いや、日本国内の戦国時代の話と超大国オスマン帝国の話を並列させるなと思われるかもしれませんが、騎馬戦法が火砲に負けた転換期を示すという点ではやはり類似性を感じざるをえないですよね……)
邪悪なほどの美少年シャー・イスマーイール――しかしこの作品でのイスマーイールはただ容貌が美しいだけではない。その心持。大砲などという卑怯なものには負けない、夜襲などという卑怯な手は使わない――だがその美しさが彼を追い詰めていく。
誇り。気品。志。そして友との絆。
尊い……。うっかりクソ語彙オタクになってしまう。このイスマーイール、サイコーすぎる……。
このイスマーイールが高潔でかっこよすぎて、彼がお父さんだったら息子の方のタフマースブはあんまり苦労しなくて済むのでは!?などと楽観視してしまいますが、それはそれ、これはこれですね!(笑) この優秀そうなスレイマン、大帝の若き日々よ……おいおいこいつに勝てる気がしないぞ……。
封印されたという続編が読んでみたいです。

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