猫と預言者

作者 崩紫サロメ

60

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★★★ Excellent!!!

BSでやってたスレイマン1世が出てくるドラマが面白かったので、同じ時代を扱った小説も探して読んでみました。
人間味のある性格の二人の王様と、彼らを淡々と観察する宰相の心理描写が興味深い短編です。聖典の話と人間関係の話が見事に溶け合ってあっていて、短くても読み応えがありました。
BLというよりは、やおい?って感じの雰囲気です。

★★★ Excellent!!!

大いなる物語のプロローグは、概して穏やかなものである。約束されたエピローグに向けて、イブラヒム・パシャの「ひとカラ」はクライマックスを迎える。

フランソワ一世。イブラヒムをしてスレイマン一世を彷彿とさせる、とまで言わしめる。それは何も性分だけの話ではないだろう。人は人を知る。スレイマンとの友誼は、なにも人品にのみ由来するものでもあるまい。

かれの主君に対する合わせ鏡のごとき「名君」を前にし、否応なしにイブラヒムの「ひとカラ」は盛り上がる。それはもう、絶好調というべきである。そこから導き出される結末は、どうしようもないくらいの破滅、あるいは破綻である。

ある「偉大なる」人間の実態は、世間の評価から甚だしく乖離する傾向にある。これはもう、世の中が「わかりやすい物語」を、まるでわかりやすくない現実に対して求める以上、どうしようもない。

イブラヒムは、フランソワより提示される「わかりやすい物語」を前に、内心では反駁をする。だが、あえてそれを表面化はさせていない。根拠は政治的判断、とすべきだろう。「そう認識してもらえたほうが便利」なのだ。

この物語は、読者に問いかけをもたらしている。イブラヒムにもたらされる「あの結末」が、果たして彼の意に沿うものなのか、どうか。

異論は尽きないだろう。だが、あえて自分はこう言明したい。

「そこに evet はあったのだ」と。

★★ Very Good!!

主従の愛といえば、近いのは織田信長と森蘭丸。あるいは定子と清少納言。

互いを理解していたかはさておき、客観的に眺めると歴史の浪漫が感じられます。

本作の主人公もまた、主人に対する愛が深すぎるようです。

悲劇的な最期を迎えることが明示されているからこそ余計に愛おしく感じのかもしれません。

★★★ Excellent!!!


……という一節で、「ありがとうございましたー!!」といいながら布団にダイブしました。ありがとうございました、美味しかったです。ごはんおかわり。


16世紀オスマン帝国の大宰相であったイブラヒム・パシャが、彼が文字通り身命を捧げて仕えたスレイマン1世について語った歴史小説作品です。
16世紀のヨーロッパは私の好きな時代の一つです。そして16世紀のヨーロッパを脅かし続けたのが、現在のトルコを拠点に大帝国を築いたオスマン帝国であり、そのオスマン帝国の最盛期を築いたのがスレイマン1世です。しかし、スレイマン1世の治世は、最盛期の壮麗なる華やかさを持つが故に、闇の濃さに戸惑う時があります。
特に、イブラヒム・パシャという人の存在は、情緒を不安定にさせます。彼の聡明すぎるほどの聡明さ、主君からの盲目的な信任により、大幅な権力を持ちすぎてしまったが故の増長、最愛の主君とすれ違い、不可解な死を迎える最後といったものは、筆舌に尽くし難いものを感じ、「やめて!やめて!」とその悲劇に容易に発狂したくなるものがあります。

そのイブラヒムを、ここまで妖艶かつ聡明に描いていて、なるほどそういう解釈があったか、と脱帽しています。
ですよね、そのくらいじゃないとオスマン帝国の最盛期の大宰相は務まらないですよね……。
イブラヒムがまるで「年上の聡明な愛妾」のように、強い自立心を持ち、スレイマンから独立した思考を有し、なおかつスレイマンに対する母性に近い強い愛情をもっているので、それが後の悲劇、スレイマン1世の大きな挫折に繋がったのかと考えると、むしろ非常に納得するものがあります。

そして、自分の愛情が主君に対して良くない愛情であり、この愛情を断ち切るには死を賜るしかないということもイブラヒム自身きちんと理解しているのがツボです。
単にイブラヒムが自分たちの関係性を忘れて増長する、という苦い話ではな… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

日本では最近ようやく注目され始めたばかりでまだあまり情報は多くないと思われるオスマン帝国の話ですが(舞台はたまたまフランスですが、主人公で語り手のイブラヒムはオスマン帝国の宰相です) そういう歴史ものとしての硬さはなく、あえてライトなノリで言ってしまうと、可愛い可愛い私のご主人さまスキスキ❤な従者(作品の雰囲気をぶち壊してしまっていたらすみません……)の語りです。
確かに歴史の描写は多く、この頃のフランスの状況やスレイマニエ・モスクについて知っていた方が面白いと感じられそうですが、絶対知っていなければならないなんてことはなく、歴史なんて自信がないよーと思われる方ほど「ああ……この人本当にスレイマンという皇帝が大好きなんだな……」と思いながら読んでいただきたいと思います。
オスマン帝国はイスラーム国家なので例示にはムハンマドが用いられますが、使われたエピソードも、ツイッターを席巻する猫画像よろしくムハンマド猫大好きエピソードで、イメージしやすいものではないでしょうか。
そうかー、イブラヒムにとってはスレイマンはネコなのか~。(大いに誤解を招く表現)
スレイマンを思うイブラヒムの気持ちは頼もしくもあり、可愛らしくもあり、どこか危なっかしいです。
でも、その気持ちを貫いてほしいと思います。
だって、固いきずなで結ばれた主従が世界を変える物語だなんて、ロマンしかないじゃないですか。
フランス王に見せつけてやれ!