魔性の姉 1(百合姉)

 顔に、おっぱいが押し付けられている。

 何を言っているか分からないと思うが、おっぱいを押し付けられている。


(ん……?)


 どうやら、誰かに抱きしめられながら顔に押し当てられているようだった。むにむにと気持ちいい柔らかさを堪能していると頭をそっと撫でられ、その胸の持ち主が頭の上から話しかけてくる。


「どう? 柔らかい?」

(あ、百合姉だ……)


 百合姉のおっぱいだと言われたら納得である。そんな大きなものに包まれながら俺は姉さんのことをぎゅっと抱きしめていて、彼女からは甘やかされていて……




 ……目が、覚めた。

 布団の中で目覚めた俺は百合姉の姿を探すが、残念ながら俺は自分の部屋で一人で眠っている。どうやら「そういう夢」を見てしまっていたようだった。しかも相手は百合姉で、普段から無意識のうちにそういう願望を持っていたということなのか。


(朝か……)


 窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。いつも通りに愛理姉が起きているならばあと一時間くらいで朝ご飯と言った時間だろうか。せっかくの朝を二度寝で過ごすのも忍びないので顔でも洗おうかと部屋の外に出る。


 ほどなくして、誰かがこっちに歩いてきた。

 眠い目をこするとそこに百合姉がいるのが分かった。姉さんも顔を洗ってきたばかりなのだろうか、黒いキャミソール姿のままこちらに歩いてきていた。百合姉のおっぱいはキャミソールにはっきり浮かび上がっていて、夢のせいもあってかついそちらに視線が吸い寄せられてしまう。

 夢の中では、あれを顔に押し付けられてたんだっけ……


「あら、おはよう。朝からどうしたの?」

「あ……ちゃんと服着て……」

「何言ってるのよ、この時間ならいつも通りじゃない」

「そうだったっけ……?」


 百合姉は腕を組みながら困り顔になって俺の方をじっと見てきた。

 もしかして呆れられてるのか……うーん、俺の頭がまだ起きてないだけか。


「それとも何? こんな格好してたら私の胸をつい見ちゃうの?」

「なっ――いや、それはっ」


 たぷんっ、とたわわに揺れる百合姉の大きなおっぱい。

 ああっ、あれの中に顔を突っ込みたい……よしよししてもらいたい……


「そんなに見てもダメ。安売りはしないわよ」

「ううっ……」

「さっさと顔を洗って目を覚ましてきなさい。じゃあね」


 すれ違い様、百合姉に肩をポンと叩かれて俺は廊下に一人残される。

 頭の中には百合姉のキャミソールの胸元がはっきりと記憶として残っていた。それを思い出しつつ、でも正直に言ったら何されるか分からない、と肩を落とす。でもあのおっぱいの中に溺れてしまいたい気持ちがずっと心の中で燻っていた。




 あれから顔を洗い、自分の部屋でしばらく作業してからリビングに向かう。ちょうど愛理姉が朝食のオムライスを完成させてくれたところでほどなくして他の姉さんたちも揃って五人での朝ごはんとなる。


「おはよー」

「みんなおはよー、朝ご飯できてるよ!」

「おはよう……」


 食卓に着いて愛理姉のお手製オムライスをスプーンでいただく。ふわとろの卵とチキンライス、ケチャップが大変美味で朝から頬が落ちそうだったのだが、それよりも気になっているものができてしまった。

 そう、百合姉の胸のこと……なんでか分からないけれど今日の俺は特段と彼女の体のことしか考えられない。思春期の中学生に戻ったようだ。


(お願いしたらもしかしたら……うーん)


 紺色のサマーニットは姉さんの身体のラインに沿うようにしてこんもりとした山なりを描いている。そして若干谷間もちらりと伺えるからたちが悪い。こんな服装で平然と近くに座られようものなら頭の中が一瞬で埋め尽くされてしまうだろう。現に今そうなっているし。

 しかし四六時中おっぱいのことを考えているわけにもいかず、とりあえず近日中にやっておきたいことを考えながらオムライスをいただく。うん、やっぱりおっぱいでっかいな……いやいや、待て、他の姉さんたちもいる中でガン見はまずい。


「ごちそうさま」

「あれ、将君食べるの早いね?」

「うん、ちょっとね。それじゃ、また」


 愛理姉や美香姉からよくわからない視線を背中に受けながら自分の部屋に戻る。そうして、とりあえずベッドで横になった。布団をくるんでそれに顔を突っ込み、何の気なしに百合姉のことを考える。

 正直な話、けっこうヤバい。たまにこういう日があるのだが……


(うわぁ、なんでだろう、今日はヤバいぞ……)


 百合姉のことが頭から離れない。

 これはあれだ、一回お願いしてみよう。駄目なら土下座でもして……


「将、ちょっといい?」

「はいっ」


 部屋のノックと共に百合姉の声がして飛び起きる。ドアを開けた百合姉はベッドの上で座っている俺を見て首をかしげた。


「百合姉、なに……?」

「買い物に行くんだけど、人手が欲しいのよ。来てくれない?」

「あー」


 視線が胸の方に吸い寄せられるのを抑え、ぐっと床に叩きつける。

 今この状況で百合姉に着いていったら確実にまずいことがおきてしまう、そう思った俺は姉さんに素直に打ち明けようとしたが――


「ねえ、聞いてるの?」

「ひっ」


 気が付けば百合姉が身を乗り出すようにして俺の顔を覗いている。心臓が口から飛び出そうなくらいにドキドキしていて、姉さんも何かを察したような悪い顔で俺のことをじっと見下ろしていた。

 目の前に、百合姉のサマーニットっぱいが……


「買い物付き合ってくれるなら、今ここで楽にしてあげるわよ」

「え……じゃ、お、お願いしますっ……」


 言ってしまった……

 百合姉は満足そうに微笑むと俺のことを抱き、顔にむにぃっと自分の柔らかいものをしっかり押し付ける。そしてベッドの上で跨るように座った後、膝で俺の身体をぐっと掴まえて離れないようにしてきた。

 あったかくて、やわらかくて……心地よさで身体が勝手にぐらぐら揺れる。


「何? 今日はそういう日なの?」

「うん、そうみたい」

「そう言えば最近ご無沙汰だったわね……」


 姉さんの背中に腕を回し、身体全体の柔らかさや抱き心地もしっかりと味わっていく。百合姉の身体は肉付きが本当に理想的で、一度抱いたらなかなか離れないくらいには抱き枕適性が高い。力も強いから一度抱かれたらこっちもなかなか離れられないわけで……


「でも、これで人手は調達できたわね。お昼からよろしく……」

「ふぁい……」


 朝から自分をずっと支配していた欲望が鳴りを潜めるまで俺はずっと百合姉にお世話になり続けるのだった。その代わりに、昼からの奴隷労働の義務を負うことになったのだが……

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