恥ずかしがる姉 1(愛理姉)

「頼む、将。今度昼食代おごってやるから頼む!」

「んなこと言われても……ねぇ」


 休み時間、俺は教室で弁当を食べながら健一に頼み込まれていた。

 普通「友達ならそれくらいいいじゃないか」とか言うが、これは状況が特殊中の特殊。いや、これが普通なはずがない。普通であってたまるか。


「頼むから、愛理さんのパンツを一つでもいいから持ってきてくれ!」

「……」


 健一はそう言うと土下座をし、地面に頭を何度もこすりつけた。いやそんなの出来るわけないでしょ。愛理姉に見つかったらどうするのと。そんな事を考えている俺を察したのか、健一が自分のバッグを漁った。


「ダメかー」

「ダメに決まってるだろ……」

「あーあ、せっかくやってくれたらこれをやろうとしたのに」


 健一が取り出したのは、なんと水着姿の理子姉のポスターだった。正確に言えばポスターは筒状になっていたが俺は見ればわかる。

 それに、あれは理子姉の写真の中でも特級のレア物。ハワイで撮ったとかの写真でインターネットを駆使しても手に入らない特急品だ。む、胸の谷間が、ががが。


「健一、やっとくわ」

「おう、頼んだぞ」


 愛理姉……ごめんよ……




 男という物は女に弱いものである。なんでこんなことを引き受けてしまったのか。

 だが理子姉のあのポスターがもらえるから頑張らねば。いやなにやってんの俺。


「愛理姉、どれくらいかかりそう?」

「一時間くらいかなぁ」

「わかった」


 台所で愛理姉が料理をしていて自身の部屋へ来ないことを確認し、俺はこっそりと愛理姉の部屋に向かった。ドアを静かに開け、中に侵入する。なんだろうこの気分。凄く後ろめたい妙な気分だ。そういうことをしているからなんだけど。


「……あった」


 こっそりとタンスを開く。その底の方に、愛理姉の物らしきパンツがあった。

 真っ白。純白だ。やべぇ鼻血出るぞこれ。こんなの愛理姉はいてたのかよ。持っていこうか。いや俺の部屋に置いておこうか。でも理子姉のポスターが。というより俺何考えてんのさっきから。さっさと健一にもっていかないと。

 いやでも愛理姉のパンツだ。健一に渡すわけにはなぁ……うーん。


「何……やってるの?」


 声に気が付いた俺が振り向くと、少し開いていたドアの向こうには愛理姉がいた。

 つんだ。どうしよう。


「将君って……そんなにいけない子だったんだ……」


 ちょ、待て、愛理姉。背中からどす黒いオーラが、頼むから静まってくれ!

 フライパン危ない! フライパンはただの調理器具だから! 武器じゃないから!


「ちょ、ちょっと待って、ちょっと落ち着いて」


 尻餅をついて後ずさる俺に、愛理姉はゆっくりと近づいてくる。

 笑顔だけどめちゃくちゃ怖い、ここまで怖い笑顔は見たことがない。


「あはは……私のパンツがそんなに欲しかったの? ねえ、将君?」

「ぎゃぁぁぁぁ」


 愛理姉の部屋にあった(´・ω・`)クッションを持って保険を掛ける。

 あぁこいつ可愛いなぁ。いや、そんな暇はない! 俺が死んでしまう。本当に。エロゲーのバッドエンドは嫌ですよそんな。俺は姉さんたちとハーレmいやなんでも。


「将君にはお仕置きが必要だね……」

「ぐ……今のうちだ!」


 愛理姉がフライパンを振り上げた瞬間、俺は愛理姉に抱き着いて押し倒した。

 ベッドに俺と愛理姉は倒れこみ、フライパンを振り下ろす手は止まる。そして、ぴくぴくと動かなくなった愛理姉はしばらくしてから我に返る。


「……ふぇ?」

「も、元に戻った」


 あれ、この顔にむにっと来ている物って(´・ω・`)クッションだったっけ。

 いや、あれなら床に落ちたはずなんだが。……む。


「あ……ああっ、将君のエッチ!」

「ドアが開いてるのに叫ぶな!」

「将君のばか! ばかぁぁぁぁ!」


 泣き出してしまった。何とか早めに泣き止ませないと晩飯の時間が遅れる……!




 とりあえずドアを閉め、何とか愛理姉を落ち着かせる。


「将君のばかぁ……お姉ちゃんのパンツとったり急に抱き着いたりして……」

「いやそれは謝るから。というより事情があったから説明するから」


 ベッドで内またの正座をしながら、愛理姉は俺の方を涙目で見ていた。

 ここまでさせてしまったのは俺のせいだからなんとしないと。


「あのクッションだって大切にしてたのに」

「いや壊してないからそれ。盾にしたのは謝るけど……」

「え、そうなの……本当だ、良かったぁ」


 愛理姉が(´・ω・`)クッションに顔をつっこみ、ベッドの上でもふもふする。

 やっぱり愛理姉って可愛いなぁ。俺ももふもふしたい。何考えてんの。


「それで、どうして私のパンツを持っていこうとしたの?」

「それはだな……」

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