商人の姉 3(終)

 朝、気が付くと俺は百合姉の腕枕で横になっていた。そのおかげかすぐそこに姉乳がぼんと置いてあったから起きて早々緊張してしまう。でもすぐさま百合姉の囁き声でリラックスさせられた。


「起きたのね」

「おはよう、百合姉……」


 まだ声が起きてない様子からして百合姉も目が覚めたばかりだったのだろう。お互いに目覚めたばかりの冷たい身体を動かしながら身を寄せ合って暖を取る。僅かに昨日の残り香がした。


「昨日、私が寝てる時に何をしていたの?」

「あ……」

「そんなに気持ち良かった?」


 本調子ではないにしても百合姉はいつものようにからかってくる。昨夜のことを思い出した俺は気まずそうに視線を逸らした。


「……うん」

「別にいいのよ。貴方は私の弟なんだから」


 挨拶代わりにフレンチキスを済ませると百合姉は俺の肩を叩いて少し下がるように言った。それに従うと丁度いい高さで百合姉の胸が顔をもにゅりと覆う。ぼうっとしているうちに腰に手を当てられた俺は柔肉に顔を突っ伏す体勢で甘やかされる。

 百合姉は朝起きたばかりで下着をつけていない。おっぱいの感触がそのまま……


「んむぅ……」

「起きた?」

「起きるのが嫌になった……」

「そう……それじゃあ、もう少し横になっていようかしらね」


 少し顔を動かしただけでもちもちと跳ね返ってくるのがたまらない。その間にも百合姉が頭の後ろを撫でてくれるから無意識のうちに甘えん坊になってしまっていた。一生百合姉のヒモになっておっぱいもにゅもにゅしていたい……


「もう、本当に仕方ない子」

「ごめんね……ん……」

「いいのよ、こういう時は沢山甘えなさい。何をしても良いから」

「やったぁ」


 何をしても良い、と言われたので服の裾をめくってその中に頭を突っ込む。暗くて視界はよく分からないけどおかげさまで百合姉の素肌と匂いにありつけた。お腹の辺りにすりすりしながら登って行ってついに例のやわらかポイントに辿り着いた。


「ん……そんなことしたら服が伸びちゃうわよ」

「好き……」


 困惑したような百合姉だったがそれでも受け入れてくれた。もしかしたら結構無茶しているのでは、と思うことが無い訳では無いけど、百合姉が甘やかしてくれる時は本当に何やっても許してくれるから嬉しくて嬉しくて。


「百合姉、なんでおっぱいこんなに大きいの?」

「急にどうしたの?」

「だって、こんなにおっきくて、やわらかいし……」

「そうね」


 僅かに考えてから百合姉はくすくすと笑う。


「大好きな誰かさんを夢中にさせる為に大きくなっちゃったのかしらね」

「んむっ……」

「困ったわねぇ。その子、気を抜いたら他の人のおっぱいに行っちゃうから……」

「わっ、ごめんなさいっ」


 贖罪の意味も込めて顔をむにゅむにゅと押し込んだ。

 百合姉は頭を撫でて許してくれる。うれしい。


「んーっ……」

「大丈夫? 起きられそう?」

「まだ無理……」

「困ったわねぇ、これじゃあ仕事に遅れちゃうかも……」


 もしかしたら百合姉が強引に立ち上がったりして離されるかと思ったが、むしろその逆となり、姉さんは抱き締める力を強くしてベッドから出ようとしなかった。近くに置いてあったスマートフォンを取ると眠い目を擦りながらどこかへ電話を掛ける。


「……希? ごめんなさい、今日ちょっと午前に用事入っちゃったから昼まで一人で頑張ってくれないかしら……んっ、いつも通りならその時間はあまり人来ないし、後でその分埋め合わせはしてあげるから」

《あ、はい……うん、わかりました……》

「聞き分けのいい子は好きよ。それじゃ、っ、またね」

「……今のは?」

「仕事の電話よ。あと、変なことしないの」


 服の中から出された俺は百合姉に後ろから抱き締められてしまう。

 背中には例のありがたいやわらかさがのしかかって来ていて、とっても幸せ……


「あーあ、我が儘な弟のせいでずる休み取っちゃったじゃない」

「それは……ごめん……」

「なあに? そうやって謝る為にわざわざお休み取らせたのかしら」

「え?」


 百合姉は後ろから顔を出すと舌を伸ばして頬を舐め上げる。慣れない感覚で身体中が心地よく痺れて全身から力が抜けて行った。時間を置くこともなく百合姉は耳元で甘い声になって囁き始める。


「私のこと、好き?」

「好き……」

「もう少しだけ寝ましょ」

「うん……」


 朝日はもう既に高くなってきつつある。二人で体勢を変える為に転がると、今度は百合姉が俺の上に重なるようにして乗ってきた。姉さんの重みで程よく身体が潰されているのが朝の怠い身体にはとてもいい。


「んん、重い……」

「駄目よ、そんなこと言っちゃ」

「んんんっ……」


 ずしん。ぐにぐに、ぐにぐに……

 百合姉との今の力関係がそのまま重みになっているようで、姉さんに体重を掛けられることがなんだか幸せに思えてしまう。実際のところぎゅっと身体を潰される度に心地よさが絞り出されるように身体中で溢れてくる。


「ふぁぁ」

「いい声ね。もっと聞かせてくれる?」

「あぁぁぁぁ……」

「ふふ、とっても気持ちよさそう」


 痛みでも苦しみでもない丁度いい負荷を掛けられて鳴かされる。

 ただのしかかってるだけじゃない。百合姉も体重を掛けたり緩めたり調整しながら俺のことを見てくれていた。本当にいい所で調整してくれるのは流石百合姉と言いたいけど、言葉が出て来なくなっちゃうくらいにこれが気持ちいい……


「いい……」

「ねえ、次は私にしてくれないかしら」

「え?」


 身体がほぐれた所で百合姉は隣で同じようにうつぶせになって視線を向けてきた。姉さんのように出来るかは分からないけど言われたからにはやるしかない。


「えっと、じゃあ、こう……?」

「んっ……」


 とりあえず太ももの上あたりに跨るように座ってそのまま上体を倒してのしかかる。肘をベッドに付けながら体重を調整し、下に敷かれている百合姉の反応を伺いながら重みをかけていった。少し力を入れると気が抜けたような声が聞こえてくる。


「百合姉?」

「いい感じよ。もう少し強く出来る?」

「あ、うん」


 肘に欠けていた力を抜き、膝以外ほとんど乗りかかるようにして押し付けると長いため息が漏れるのが聞こえてきた。僅かに赤くなった顔で振り向くのが素敵過ぎて変な気持ちになってくる……


「こら、今はそういう雰囲気じゃないわよ」

「えっ?」

「全く……自分で気づかないの?」


 百合姉に指摘され、少し経った所でなんか押し付けてしまっていたことに気付く。

 そう言えば百合姉と密着していたんだ、こうなっちゃうのも無理はない……!


「ああっ、ごめんなさいっ」

「別に貴方だけがそうなるんだったら私も怒らないのよ」

「……え?」

「あのね」


 突然投げかけられる意味深な言葉に戸惑っていると、百合姉は体勢を起こしてからこちらに熱い眼差しを向けてきた。ベッドの上で尻もちをついていた俺は気が付く間に彼女に距離を縮められる。少し緩くなったシャツの襟元からは肌色が覗く。


「私ね、『そういうこと』を必死に我慢している姿が好きなの」

「え……」

「だから、将が私にバレないように色々している事に気付くとちょっと嬉しいのよ。それくらい私のことが好きなのよね。貴方の身体は時と場所を選べないんだから」


 頭の中の葛藤を見通され、焦りを通り越して諦めの気持ちになっていた。

 もう駄目だ、このまま百合姉にいいようにされてしまう……


「それで……嬉しくて、それに応えたくなっちゃうの」

「それって」

「なかなか鈍いじゃない」

「え」


 次の瞬間、何故か俺は天井を向くように張り倒されていて――


「午前の仕事を潰してるんだから、それくらいには満足させてくれるんでしょうね」

「あ、その、えっと、ちょっと待って」

「駄目。もう待てないわよ……眠っている間、散々好き放題してくれた癖に――」


 すっかりその気になった姉さんから視線を逸らしながら、この先のことをちょっとだけ憂うのだった。軽い気持ちであんな事するんじゃなかった……

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