第2話(part2)「大切に育てられました」「解体されまくってたな」

天気も良くちょうどサラリーマンの昼休憩ということもあってか、二人が歩く遊歩道は人通りが多かった。


しかし、二人を気にする者は誰もいない。 それもそうだ、2人ははたから見れば人にしか見えないし、もしアンドロイドだとわかっても騒ぎ立てる人はいないだろう。


アンは向かいからくる人を避けながら、履いているロングスカートをひらひらとさせていた。

その様子はどこか楽しんでいるようにも見えた。


「君はずいぶんと女性らしい格好をするんだな」

「それはどういう意味ですか?」

「いや、俺のなかではスーツとか軽く着れるジーパンとかで、あまり着飾ってるイメージはなかったからな」

「私も服にこだわりはなかったですが、母親に女の子らしくしなさいと言われたので」

アンは少し遠い目をしながらそう話した。


「母親? パピーウォーカーのことか?」

「はい、私自身パピーウォーカーのことを母親、父親とは言うのはおかしいとわかっていますが、習慣づいてしまったので」

「そうか、大切にされてたんだな」

「そうですね。先輩はどうだったんですか?」


「俺は……解体されまくってたな」

「解体? 破壊欲求の対象にされてたということですか?」

「いや、そうじゃない。俺にも姉さんと呼ぶ人がいるんだ。その人がいたずら好きでよく体を分解やら、いろいろされたものだ」

「大変だったんですね」

「まあ、そのおかげで今では自分のパーツの分解、組み立てはお手の物だよ」


リクは腕をブンブンと振りながらアンにそれをアピールしていた。

アンはその様子をただ微笑みながら眺めていた。


「じゃあメンテナンスもすべて個人でやってるんですか?」

「そうだな、機械に頼ったことはない」

「それはすごいですね。私にはとてもできません」

「そうか? 君も得意なこと、ひとつはあるだろう」

「……花を育てることですかね」

「いいじゃないか。女性らしい」

「そうですか?」


アンは首をかしげながらもその表情は少し柔らかく嬉しそうにも見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る