第1話(part2)「実験を始めよう」「手始めに一緒に暮らそうか」

 研究室に充満する様々な薬品の匂い、せわしなく稼働し続ける機械の音、その合間から聞こえてくる研究員の怒鳴り声、それらを背にしながら二人はアフロでありえないほどカラフルな色をした髪を携えた白衣の人物の後ろを歩いていた。

「ここらへんでいいか」


 けだるそうにそうしゃべった目の前の人物は研究室の中にポツンと、普段はまったく使われていなさそうな小さな部屋に入っていった。

 二人はそれについていくしかない。


「まあ適当なところにかけてくれ」

「いったい今日は何の用だというんですか」


 研究室に入って女性の方がようやく言葉を口に出す。

 しかしそれに反応することなく、振り返ったアフロの人物は、一つだけ高価そうな背もたれ椅子に腰かけ、そのだらしない口の口角をあげながらニマニマと笑い始めた。


「君なら何事か分かっているのではないかね?」

「全くもって見当もつきません」


 アフロは偉そうに男性の方に指をさしながらそう言うが、指をさされた男性の表情は一切変化しない。


「まあ、今から話すからとりあえずかけてくれ。僕だけ座っていたらまるで僕が偉い人みたいじゃないか」

「分かりました」


 二人の声が重なり、同時に後ろにあったパイプ椅子に腰かける。


「おー、息がぴったりだね。これは今からの研究にもいい成果が期待できそうだ」

「研究? また何か始めるおつもりですか」


 男の隣に座った女のほうがアフロに問いかける。


「その通りだよ。まずは君たちにはこれを見てほしいんだ」


 そういって目の前の人物が取り出したのは二つの資料だった。

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