第6話(part1)「実験を始めよう」「私汚れてしまったわ」

 夕暮れ時、日が暮れ始めると同時にいつも二人はリビングに集まるというのが日課になっているというのに、今日は珍しくリクが一人でポツンと座っていた。


 そしてリクは何かを迷っているのか、あごに手をのせながら一人でうんうんと唸る仕草を繰り返していた。


「……言ってみるか」

 アンがこの時間に現れないということは特に気にしていなかったが、リクは一つのことが気になっていた。


 いつも深夜にアンの部屋から聞こえてくる重低音のモーター音が、今部屋から聞こえてきていたのだ。

 リクは前からこのモーター音の正体がなんなのか気にはなっていたが、アンに追及することはなかった。


 リクは意を決したように立ち上がると、真剣な表情で真向かいにあるアンの部屋の前まで物音をたてないように、ゆっくりと歩いていった。


 リクが悩んでいた間も、部屋の前に立った今も相変わらずモーター音はアンの部屋から響いて聞こえていた。


「お隣さんには聞こえてないよな……?」


 リクが一番気にしているのはそこかもしれなかった。自分自身はうるさいのはなんてことはないのだが、この重低音がお隣さんにまで響いているとなると話は別だった。

 あんなにやさしくしてくれているお隣さんに迷惑がかかるというのは、何より避けたいこととなっていたのだ。


 まあそれはアンも一緒なのかもしれないが。


 たまにあるどうでもいい思考に持っていかれそうになる意識を無理やり、目の前の部屋のことに集中させると、大きく息を吸い込み吐き出しながら、アンの部屋をノックをした。 

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