第5話(part1)「隣に引っ越してきたアンドロイドです」「しんちゃん、大変よ!」
長い昼が終わり、太陽がその顔を隠そうとしている夕刻時、リビングに二人が机を挟んで座っている光景は、もはや日常的な風景に変わりつつあった。
「先輩、私大事なことを思い出したわ」
「どうしたんだ、急に」
「まだお隣さんにあいさつに行ってないわ」
「言われてみれば」
引っ越しの定番といえば、お隣さんへのあいさつもその一つである。その情報は二人とも頭にはあったものの、いつの間にかタイミングを逃していてまだ行くことができていなかった。
「そもそもこの部屋にはお隣さんが存在するのか?」
「あら、情報不足ね。右隣にはまだ誰も住んでいないけれど、左隣には若夫婦が住んでいるわよ」
「それはいいな」
「……どういうこと?」
「変な意味ではなくて、研究内容を考えるのにはいい対象になりそうだなという意味だ」
「ああ、そういうことね。てっきり先輩が急に脳内でよからぬ想像でも始めたのかと思ったわ」
「どうしてそういう発想になるんだ」
「あら、男の人って大体そういう思考回路をしているんでしょう?」
そんなとんでもないことを言いながらも微笑みを絶やさないアンを見て、リクは渋い表情を見せながら頭を掻いた。
「まあ、お隣さんがいるということならばさっそくあいさつに行こうじゃないか」
「そうね」
そうして二人は同時に立ち上がると、座っていたために少ししわになっていた服を整え、玄関へと歩き始めた。
「あなたは少し着替えたほうがいいんじゃない?」
「そうか?」
アンは家にいるとき、リビングにいるときはそれなりにしっかりとした私服を着ているため、そのまま外に出ても問題がないものの、リクはそのまま眠れるようなスウェットにTシャツという完全な、寝巻姿で、外に出ようとしていた。
「そのままだとさすがにお隣さんに失礼だし、その隣に立つことになる私が恥ずかしいわ」
「……それもそうか」
リクは少々渋る様子を見せたが、特に反論することもなく部屋に戻った。
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