第6話(part4)「実験を始めよう」「私汚れてしまったわ」
「研究長、申し訳ないんですけども……」
「ああ、君のメンテナンス道具だね。持ってくるさ。君の部屋にあるのかな?」
「そうです、本当にすいません」
リクは頭だけを研究長に向けて、頭を下げた。
「気にすることはないさ」
研究長は片手だけポケットから出すと、けだるそうにその手を振りながら部屋に向かった。
「あ、研究長そっちは!」
リクの静止を聞くことなく研究長はそのまま耳をほじりながらその部屋に入っていった。
そして一瞬の沈黙の後、研究長はその腹に小さな機械を盛大に受けながら吹っ飛ぶようにリビングに戻ってきた。
「そっちはアンの部屋です」
「……もっと早くいってほしかったな」
研究長は腹をさすりながら、頭を掻くと今度こそ本当にリクの部屋の中へと入っていった。
「この小さな小包に入っているやつかね?」
「そうです」
研究長は少し青ざめた顔をしながらリクの部屋から出てきた。その右手にはリクが唯一使っているメンテナンス道具が入った小包が握られていた。
「大丈夫ですか?」
「アン君は僕をアンドロイドかなにかと勘違いしているんじゃないのかな」
研究長はため息をつきながらリクのほうに小包を投げ渡すと、そのままいつも案が座っているリクの真向かいの席にだるそうにあぐらをかいた。
「ありがとうございます」
リクは片手で小包を開け、中からバールのような形をした細い器具を取り出すと腕をそれを口にくわえて、器用に外れた腕を付け直し始めた。
「本当に君は修理に関しては僕よりもうまいな」
「さすがにそんなことはないですよ。でもまあ、慣れてますから」
リクは器具を加えたまま研究長と会話をし続けながらも、腕はどんどん肩につながっていっていた。
「それでどうしてこんな状況になっているのかな?」
リクはあっという間に腕を付け直し終えると、外れていた腕の動作確認を軽く行い、口にくわえていた器具を足元に落とした。
「実は……」
リクは研究長にさっき会ったことを説明すると同時に、小包から違う器具を取り出し背中の修理を始めた。
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