第5話(part4)「隣に引っ越してきたアンドロイドです」「しんちゃん、大変よ!」
背中を向いているため二人の表情や様子はわからなかったが、間違いなく首筋に刻まれている製品番号に視線が向けられているという感覚はあった。
「ああ、そういうことだったのね」
「これはまた珍しいな」
二人の声のトーンが落ちていることに気づかないほど二人は鈍感ではなかった。
アンドロイドに対して定めらている数少ない法律の中に『アンドロイドは人に対してその正体を隠してはいけない』といったような法律が存在する。
その法律が原因で、多くのアンドロイドが差別の対象、破壊の対象になったりしたこともあったが、最近はアンドロイドの存在が認知されてきたためか、それも少なってきていた。
それでも人々のアンドロイドに対する不信感、危機感は消え去ることはなかった。それはやはりどこか人間とは違うところを感じるからだろうか。
アンとリクは髪の毛に添えていた手を戻すと、二人に向き直す。何をされても反応しない覚悟を決めていた二人だったが、夫婦の反応は予想外のものだった。
二人ともにこにこと笑っているままだったのだ。
「えっと、あの……私たちアンドロイドなんです」
「そうみたいね。私こんな間近で見たの初めてだからびっくりしちゃった」
「そうだよな。この人たちがお隣さんだなんて俺たち自慢できるんじゃないか?」
「しんちゃん。それはお隣さんに迷惑だからやっちゃだめよ」
「分かってるよ」
頬を膨らます凜に対して、その頬をつまむ慎吾。そこにはアンドロイドだと明かす前と何ら変わらない甘ったるい二人の空間が流れていた。
「別に私たちはあなた達がアンドロイドだろうが、どんな人だろうが気にしないし、仲良くなれればどっちでもいいから気にしないわよ」
「そうだな。これからお隣さん同士仲良くできたらそれが一番だ」
凜は頬をつままれながら、それでも笑顔でそう話す。慎吾の方もその顔には笑みが広がっていた。
「ありがとうございます」
そんな二人の反応に、アンとリクは素直に喜びを表現しながら深々と頭を下げた。
「そんな硬くならないでいいのよ。ともかくこれからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、私はそろそろ晩御飯のしたくしなくちゃ。しんちゃん何食べたい?」
「りっちゃんが作るカレー久しぶりに食べたいな」
「じゃあそれで決定!」
凜はアンとリクにニコニコと笑いながら手を振りながら扉に手をかけた。
それにたいして二人は軽く頭を下げる。それを見た凜はゆっくりと扉を閉めた。
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