04.俺の剣の師がこんなに美人なわけがない

 「おんや、お話は一段落ついたんですかい?」

 アールハインの一般常識から微妙にズレた師弟が、ちょっぴり気まずい沈黙を味わっていたところに、折よく救いの主が現れた。

 「まぁ、な。ひととおりの説明は終わった。シュートもおおよその事情は呑み込めただろう」

 「え? そう……ですね。おおむね理解しました」

 とは言え、剣術の先生役であった竜牙兵ガイコツと、目の前でテーブルに茶器を並べている美女が同一人物(?)だとは、シュートとしては理性はともかく感情的には納得し難いモノがあるのだが。


 「! そうだ、この方がユランさんだってのは了解しましたけど、なんで女性の姿にしたんです?」

 軍団長直属の護衛役というなら、普通は逞しい偉丈夫というのが相場ではないだろうか。

 「お前なぁ……それじゃあ聞くが、俺のすぐそばに、俺とおんなじようなマッチョの巨漢が7人常に付き従ってる様子を想像してみろ。華がないのを通り越して、暑苦しさの極みだと思わねぇか?」

 「確かにまぁ……そうですね。って、もしかしてそれが理由なんですか!?」

 それはシュートだって男のハシクレだ。どうせ警護してもらうなら、ムサいオッサンより、見目麗しい美女の方がうれしいという理屈はわからないでもないが……だからと言って、自分の腹心ともいえる者を強制的に女性の姿にするとは。

 「まてマテ待て! そんな春先に道端でサカっている野良犬でも見るような目はやめろ。誤解だ。少なくとも、俺自身は此奴ユランの外見について何か特別な指定をしたつもりはない!」

 さすがに師匠としての沽券に関わると思ったのか、慌ててドムスは弁解する。


 「じゃあ、なんで、ユランさんがこんな姿になってるんですか?」

 「ああ、そりゃ、あっしがそう希望したからじゃないっスかねぇ」

 「「へ!?」」

 傍からあっけらかんと言い放たれたその言葉に、ドムスとシュートは思わず師弟揃って間抜けな表情をさらすハメになった。


 「まさかそんな……いや、確かに、あの中に組み込まれた人化の術式には、対象者自身のイメージをある程度反映するような機能も備わっちゃあいるが……かなり弄ってあるから、そこまで明確な影響力は持たんはずなんだが」

 たとえ戦場や国王の前ですら、飄々とした態度を崩さない彼にしては珍しく、本気で当惑した様子を見せるドムス。

 「そもそも、なんで女性の姿になろうと思ったんですか? もしかして……このあいだ三丁目のスミスさんトコの赤ちゃんあやそうとして泣かれたのが、そんなにショックだったんですか?」

 混乱しているのか、頓珍漢なコトを言い出すシュート。

 それはまぁ、いきなりガイコツに「ベロベロバー」された乳児が泣き出すのも無理はないが──それが嫌で(主に胸と腰に)母性溢れる女性の姿になるというのは、少々……いやかなり短絡的過ぎるだろう。

 「いやぁ、確かにアレはあれで、しばらく凹みやしたがね……」

 シュートの問いに、ポリポリと右手の人差し指で頭をかくユラン。その仕草は確かに竜牙兵だった時の“彼”が困ったときによくやる癖そのものだった。


 「あ~~、まず大前提でやすが、あっし──というか、あっしの元になった牙を生やしてた竜は雌だったんでやんすよ」

 「大将は覚えてらっしゃるざんしょ?」と聞かれて、ドムスは虚空に視線をさ迷わせながら眉を寄せる。

 「そう言われれば、確かにそうだな。あの時、俺たちが討伐したのは雌の若竜ユースドラゴンだった」

 ドムスが冒険者になってから初めて組んだ固定パーティは、幸運なことにメンバー全員がそれなりに優秀かつ向上心にあふれており、さらに能力や役割分担が噛み合ってることもあって、結成から3年近く経つその時までは至極巧く回っていたのだ。

 しかし、その竜討伐を機に殆ど物別れに近い勢いで解散し、メンバーが散り散りになることになったという、彼にとっては若き日の苦い思い出でもあった。


 多くの地球上の創作物と同様、このアールハインに於いてもドラゴンは最強クラスの生き物だ。蜥蜴と似て非なる姿形を持ち、基本的に卵生(一部卵胎生)。孵化直後から100年くらいは「幼竜パピードラゴン」と呼ばれ、知能はおおよそ犬猫並と言われている。

 100年以上生きると一度脱皮して「若竜」へと変化し、おおよそ人に近い知能を持つようになり、種類にもよるが人語を解したり魔法を使うようになったりする。繁殖を行うのもこの時期だ。

 さらに300~400年ほど生きたところで、2度目の脱皮とともに成人…いや、成竜するのだが、この段階で、火・水・風・金・土・光・闇の7つ属性のいずれかを持つ上位の「属性竜エレメンタルドラゴン」と、それ以外の「雑種竜マングレルドラゴン」に明確な差異が生まれる。後者は若竜時の単なるバージョンアップ版だが、前者は上位精霊と同格クラスの力を持つようになり、文字通り生物の頂点に立つ者の威厳と知恵を備えた存在と化す。ごく稀なケースを除いて、人と争うようなことも滅多になくなるため、一部地域で“竜神”、“竜王様”などと崇められているのも、大概は属性竜だ。

 さらに齢1000年を数える頃(ただし個体差が激しい)、生涯3度目の脱皮を経て、「古竜エルダードラゴン」と呼ばれる存在になる。古竜にまで達するのはほとんどが属性竜だが、数は少ないが雑種竜から成長した者も存在する。

 このあたりになってくると、力量的には下級神と大差がなく、人が個人でどうこうでき得る存在ではないのは確実だろう。大国が傾くほどの財を投じて揃えた極上の武具・魔具類を、人類の極限まで鍛えあげた精鋭十数人に装備させ、考え得る限りの策略を巡らせたうえで挑めば、あるいはワンチャンあるかも……というレベルだと思っていただきたい。


 とは言え、想像はつくだろうが、幼竜から古竜にまで成り上がる確率はほぼ0に近い。大半はそこに至る前に寿命その他の理由で亡くなるのだ。もっとも多くの竜が棲息していると言われるグラジオン大陸を見渡しても、人にその存在を知られている古竜は、大陸全土で僅か5体。属性竜ですら、両手両足の指を使えば数えきれるほどの数なのだ。それに比べれば雑種竜はそれなりに多いが、あくまで“それなり”であって、こちらも3桁はいかないと推測されている。

 それに対して、若竜以下の総数は、冒険者ギルドの見積もりでざっと数千。いきなり増えたように思われるかもしれないが、裏を返せば、若竜の段階でそれだけいても、成竜になれるものはその中の1%以下ということだ。

 加えて、冒険者は原則的に成竜以上の竜を狩ることを禁じられているのだ。理由は明らかにされていないが“地域の生物相のバランスを壊さないようにするため”という説が有力だ。

 無論、例外はあって“人里を襲撃した竜”に関しては討伐許可が下りる場合もあるが、それにもギルドの認定が必要だ。出会いがしらに襲われた場合なども自衛と逃走が推奨されている。

 そもそも若竜ですらBランク以上の冒険者にしか討伐許可が下りないし、それさえ“付近の住民に被害が出た、もしくは出る可能性が極めて高い”場合に限られる。当然、それ以外で若竜を狩ればいわゆる“密猟”ということになり、ギルドから重大なペナルティを食らうのだ。

 ただし、幼竜に関しては、それなりに数が多い(若竜の20~30倍と言われている)ため、間引きも兼ねてとくに狩るのに許可は必要とされない。むしろある程度実力のあるパーティには推奨される向きさえある。


 ちなみに、竜とは別に「ナーガ」と呼ばれる者もアールハインには存在する。こちらは純粋な生き物ではなく精霊の範疇で、“ある種の上位精霊が竜に近い姿で実体化したモノ”と認識すれば、おおよそ間違いではなかろう。

 精霊本体は霊的なエネルギー体なので普通の人の目には見えないが、そのままでは人とコンタクトをとるのに不便なので、ウンディーネやシルフなど人に友好的な精霊は、人、それも若い女性の姿をとることが多い。

 龍の場合もそれと似た理由だが、こちらが敢えて畏怖の感情を呼び起こす竜に近い形態をとっているのは、その“力”をふるいやすいようにするためであり──つまり“龍”が実体化するというのは、とりもなおさず臨戦態勢にあると言ってよい。

 実際、戦闘力について比較すると、平均的な龍であってすら、属性竜以上古龍未満の“災害”と言ってよいレベルの代物なのだ。たとえSランク冒険者といえでど気安くケンカを売ってよい存在ではない。

 なお、魔族の有力種族として「龍族ドラゴニュート」が存在するが、この名称は「龍を祖先に持つ」という彼らの自称に由来する。龍族は直立擬人化したドラゴンのような普段の姿とは別に、高レベルの者は確かに龍と見紛う姿に変身できるため、そのルーツはあながちホラではないのかもしれない。また、その一方で、グラジオン大陸南東部にごく少数存在する「竜人サウロイド」──リザードマンの竜版のような亜人の、近縁種では? という説もあるのだが。


 閑話休題。

 ともあれ、そういった事情から、実は一般的に出回る“竜素材”というのは、ほとんどが幼竜のもので、若竜の素材はかなり希少な極上物扱いとなる。成竜に至っては、たとえ雑種竜であっても城を売り買いできるレベルの金銭が王都のオークションで飛び交うのが普通だ。


 「その希少な若竜の素材を、よりによって普通は消耗品扱いの竜牙兵の材料にする時点で、大将も大概頭のネジがぶっとんでやすなぁ」

 それも、それなりの数が採れる“歯”でなく、1頭から合わせて4本しか採れない希少な“牙”を丸々1本使うあたり、魔法学院の研究者あたりが見たら卒倒しやすぜ……と嘆息するユランの言葉に、ドムスは肩を竦めた。

 「あの頃の俺の力量だと、それなりに丈夫な従者を作るには、基幹となる素材の質と量をマシマシにするしか方法がなかったんでな」

 「仲間と別れて自暴自棄気味に荒んでた時期でもあるし」という内心の呟きを口に出さないのは、傍らの弟子の目を意識したからだろうか。

 「えーと、ユランさんが、貴重な竜素材をふんだんに使って作られたってのはわかりましたけど、それと現状の関連性は……」

 シュートが話を本道に戻す。

 「おっと、そうでやすね。コイツぁ、あっしが少々特殊な誕生過程を経た竜牙兵だからこそ気づいたんでやんすが──竜牙兵ってのは実のところ自動人形ゴーレムってぇ言うよりむしろ使い魔みたいな、ある種の人造生命体に近い存在みたいなんスよ」

 「──ほぅ?」

 ピクリと眉を動かすドムス。先ほど、自分も弟子に「ユランに施した魔法が、結果的にホムンクルス創成に近い代物になった」と告げたたばかりなので、この奇妙な符号が気になったようだ。


 「あっしはかなり特殊でやすが、そもそも普通に竜牙兵を作る際は、どれくらいの大きさの竜の歯がいるモンなんでやすか、大将?」

 「そうだな……相応に熟達して魔力もふんだんにある術者なら、掌に収まるくらいの欠片でも十分だろう」

 「そうでやんすよねぇ。で、外来人のシュートさんにお尋ねしやすが、その掌に収まるくらいの物質が、ホネだけとはいえ、人ひとり分の体格を持つ戦士になるなんて、デタラメだとは思いやせんか?」

 真摯な緑色の瞳で見つめられて(相手がユランとわかっていても)シュートは、ちょっとドギマギする。

 「ま、まぁ、質量保存の法則に反してるってのはわかりますけど、そこはそれこそ魔法ですし」

 しかし、彼の言葉に口を挟んだのは、彼の魔法の師自身だった。

 「確かにその通りなんだが、地球アチラの物理科学もコッチでまるっきり意味がないワケじゃないぞ。科学っぽく解釈するなら、触媒にして材料でもある竜の歯をベースに、あとは魔力によって集積・形成された物質が組み込まれて嵩増ししてるというのが正解なんだろう、ユラン?」

 「さっすが大将は話がお早い! シュートさんに分かりやすく説明すると……えーと、元の竜の歯が純金で、それに混ぜ物した14金とか18金が竜牙兵っていやぁ、理解してもらえやすかい?」

 「ああ、うん、なんとか。ん? あ! もしかして、ユランさんが普通の竜牙兵より格段に強いのって、基になる竜成分が多かったからなんですか?」

 シュートの率直な物言いに、ユランは苦笑する。

 「基礎能力という意味では、それも一因ではありやすね。もっとも、剣士としての技量は多数の戦場での経験がフィードバックされてることも関係してるんでやしょうが」

 「そうだな。竜牙兵を自分の護衛に使う魔術師はそれなりにいるが、それだって普通は“敵の接近に対する最後の壁役”として、だ。俺みたく戦場の最前線に引き連れて行って、恒常的に肩を並べて戦うようなのは珍しいから、そこまで戦闘経験の蓄積はされないし、それほど活きないんだろうよ」

 腕を組み、首を捻りつつ推論を述べるドムス。

 「あっしの場合は、大将が組み込んでくださった優秀なインテリジェンスソード用AIの補助もありやすからね」

 「よせやい、おだてたって何も出ねぇぞ。で、竜牙兵=人工生命説の続きは?」

 「あ、はい。それでですね、竜牙兵に組み込まれた竜の因子は微量ながら魔力を生み出しやす。その魔力は通常、竜牙兵自身が動くためのエネルギー源と、傷ついた際の自己修復に使われるんでやんす」

 「ふむ。確かに、改めて分析すると、魔力利用の方式メカニズムは作成型使い魔そのものだな」

 「師匠、作成型じゃない使い魔っているんですか?」

 シュートの素朴な疑問に対して、ドムスは師匠らしく説明してやる。

 「ああ、召喚魔術サモニングを得意とする術者の場合は、既存の生物や魔物を召喚して、契約を結ぶことで使い魔にすることもあるからな。どっちが優れているとか聞くなよ? 一長一短なんだから」

 作成型は、術者の意図するような使い魔を1から生み出せるが、その能力の限界は作成者の技量に依存する。一方、契約型は、必ずしも欲する能力を相手が持っているとは限らないが、状況によっては召喚者以上の戦力を持つ存在を使い魔として従えることも可能だ。


 「──しかし、だんだん話が見えてきたぞ。お前さんの場合は、元から竜成分が多かったから、他の竜牙兵と違って余剰魔力がかなりあって、それを使って自己改良ないし自己進化したんだな?」

 「いやぁ、そこまで大げさなモンじゃないでやんすよ。ただ、身体の構成要素のうちの非竜部分を、【再生リジェネレート】の応用で竜に近い要素を増やして置き換えていっただけで……」

 「「十分魔改造だッ!」」

 師弟揃ってツッコミを入れる。

 ちなみに、先のたとえで言うなら、並の竜牙兵は14金どころか10金、8金以下の代物だ。それに対して、ユランの場合は……。

 「まぁ、昨日の段階で、大体、20金くらいにはなってやしたかね」

 「──マジか?」

 「マジでやんす」

 そこまでいけば、確かに“竜の要素で構成された人工生命”と呼んでもあながち間違いではないのかもしれない。

 「で、ココで話が最初に戻って、お前さんの大部分を構成する竜由来の成分の元が雌なんだから、今のお前さんも女性の姿になって当然……ってワケか」

 「大将のおっしゃる通りでさぁ」

 だいぶ回り道した気がするが、こうやって筋道立てて説明されれば、確かに納得のいく理屈だった。


 「ふむ。お前さんが元々疑似生命体と呼ぶべき状態だったとするなら、確かにあの術式でもある程度は容姿改変は可能だな」

 「そう、なんですか、師匠?」

 「ああ。なにしろ『生なき者よ、生あるが如く振る舞え』という記述の部分にほとんどまりょくを割く必要がなくなるからな。結果的に余った魔力リソースをそっちに回すことができる」

 独自の魔術式を組むことはおろか、既存の魔術の中でもまだ初歩的なものをいくつか使える程度のシュートには、チンプンカンプンな話だったが、この国の魔術研究の第一人者であるドムスが言うのだから、たぶん間違いないのだろう。

 「ご理解いただけだようで恐縮でさぁ」

 恭しく頭を垂れるユラン。以前のガイコツ姿なら、ある種の滑稽感が漂ったであろうその仕草も、今の美女の姿でやられると、一流の侍女メイドばりに恐ろしく様になっていた。


 「ん? しかし、そうなると今調製中のアイツらも……」

 ここでドムスが、とある可能性に気付いたようだ。

 「えぇ、まぁ、多分、大将のお察しの通りじゃないっスかねぇ」

 困ったような、それでいておもしろがるような複雑な微苦笑を、(昨日までガイコツフェイスだったのに器用にも)ユランはその端正な美貌に浮かべている。

 「アイツらって……あ、もしかして、師匠、エルさんたちも!?」

 一歩遅れて、シュートも師の言いたいことを理解したようだ。

 無言で立ち上がり、工房の方へと速足で歩きだすドムスの背中を、成り行き上、ユランとシュートも追うことになる。

 バタンッ! と、やや乱暴に工房のドアを開いた瞬間、既に“手遅れ”であったことをドムスは理解した。

 「あちゃあ……」

 「ちょっと、あるじ様! いくらわたくしどもの生みの親同然の方とは言え、淑女レディの姿を見た最初の感想がソレですの!?」

 豪奢な巻き毛のストロベリーブロンドをなびかせた、17、8歳くらいの少女が、腰に手を当て柳眉を逆立てて怒りの表情を見せる──全裸マッパで。

 「ぶほっ!?」

 ドムスの背後から顔を出して“全裸の美少女”を直視するハメになったシュートは咄嗟に視線をそむけるが、残念(?)ながら視力も記憶力も良い方なので、ユラン以上の巨乳(推定Eカップ)やその頂き、さらには股間の淡い陰りまで、バッチリ目に焼き付けてしまったのは……まぁ、“哀しい男の本能サガ”と寛恕すべき点だろう。

 「この感覚……エルシアか」

 「はい、主様。初めまして──というワケではありませんが、お姉様ともども、改めてこの姿で幾久しくお仕えさせていただきますわ」

 竜牙兵時代は未開地方から来た蛮族の如くカタコトでしかしゃべれなかったエル──エルシアだが、どうやら本来の話し方は今のように上品なお嬢様口調であったらしい。

 とりあえず戸棚から取り出したフリーサイズのガウンをエルに羽織らせてやりながら、ドムスは壁際に設置された直径1メートル、高さ2メートル弱の強化ガラス製の円筒シリンダーを注視する。

 4つのうちひとつが空なのは、エルが入っていたからだが、残る3つには薄いブルーの溶液が満たされ、その中にやはり全裸のハイティーンからローティンくらいの少女がそれぞれひとりずつ目を閉じて浮かんでいる。


 「──そりゃ、あっしの基になった“牙”と同じ竜の“歯”から生み出されてるこの4体も、人化すりゃあ、当然“女”になりやすわな」

 「師匠、良かったじゃないですか。内弟子じゃありませんけど、お望み通り美少女が5人も身近にいてくれますよ」

 ユランとシュートが他人事だと思ってのんきなコトをほざいている。

 昨日までの「ガイコツ軍団を引き連れたマッチョ魔術師」という呼び名もうれしくはないが、明日からは「美少女戦士を侍らせた変態エロメイジ」という不名誉な綽名で呼ばれるのだろうか。

 「どうして……こうなった!」

 ドムスは宙を仰いで深く深く溜息をつくのだった。

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