壱単位

娼館で暮らすニアナ。 貧乏子爵家の令嬢だった彼女は、幼いころに母と共に父から捨てられた。 困窮する母子の命を救ったのは、下町の娼館の女たち。 彼女たちはニアナにとって実の親以上の…

……ええと。んー、難しいな。 手紙なんて書いたこと、ないもんなあ。 もう明日、出発なのに……まだ三通しか書いてないや。 気の利いたことなんてなんにも思いつかないし。 ええい、もう…

継母の下で不自由な暮らしをしていた地方領主の娘、エーレアンヌ。 だが、母国が戦争に敗れ、敵国に捕えられてしまう。 炎鬼将軍と呼ばれる最強の武人のもとに引き取られた彼女は、炭焼きの…

西暦二百年代初頭の地中海東岸、高原地帯。 二人きりのごろつき隊商、フェイとロン・ロン。 ある日、酒場でいわくありげな女と出会う。 深い紫の瞳、煌めく黄金の髪。 そんな彼女が抱え…

人生ではじめて書く短歌っぽいものたち。

とある高校、放課後の文芸部室。 幼馴染で同じ学年の、文芸部のあの子に呼び出されたのだ。 なんだろうと、首を捻りながら尋ねてみる。 恐る恐る開いた扉の向こうには……。 幼馴染くん…

黒の聖女、サナ。 白の聖女と協力して国を護ってきた彼女はある日、身に覚えのない罪により理不尽な裁きを受ける。 助かりたければ、北の果て、冥宮に棲む冥王を討ち取ってこい……。 わ…

想い出のなかにだけいた彼女。 ずっと忘れようとして、だけど、できなくて。 そんな彼女が、ある日、僕の目の前に戻ってきた。 あの日と同じ、表情で。 だけど、彼女は……。 ＊某SN…

残業をやっと終えて乗り込んだ電車。 うとうとして気がつけば、見知らぬ場所にいた。 地方都市の駅。海が近い。潮のかおり。 そうして、そんな僕に近づいてきたのは……。 ＊ 方言恋…

鍛治屋小路ゆきなさん。 人見知りが悪化して営業部から僕のいる業務部に異動になった。 今日も上司に話しかけられないで固まってる。 そんなとき、僕が内緒で書いてるネット小説のコメ…

列をなす小柄な鳥たちが、溶接の定義をいかめしく囀ります。 さいらあ、さいらあ、と。 ねえ、どちらが柔らかいかな。

リィは山に住んでいたのです。 住んでいたのは、家がないから。 おとうもおかあも、家も、ないから。 だけどリィは、緑の中で毎日、楽しく過ごしていました。 それでも、ある日。 リィ…

地の果てには、竜が棲む。 そう伝えられる世界で、ハルトたちは暮らしている。 魔式と呼ばれる小さな異能を誰もが持ち、その特性に応じて火を灯し、風を呼び、水を操る。 人々の暮らしは…

第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部　応募作になります。

ある日、突然に停止した、ふたりの時間。 彼女はそれでも、訪ねてゆく。 彼の部屋を。 思い出の部屋を。 そうして触れた、日記帳には……。 ＊某公募用の短編となります。

花吹雪。 春先の、膨大な桜の下で。 彼と彼女は再会したのです。 花吹雪。 スクリーンに映し出すのは。 彼と彼女が、描き出すものは。 花吹雪。 あなたを、待っているひとは。 …

レトヴィイヤは、十五歳になりました。 夏が好き。きらきらと輝く海の色が好き。 だから、ある日ひろった橙色の硝子板は、彼女の宝物です。 それをかざすと、いつでも戻ることができたから…

あたしの会社の男性は、ふたつのうちの、いずれか。 おじいさま、あるいは、おじさま。 例外はない。 もうすぐ三十を迎える、あたし。 すべてをあきらめた、あたし。 でも、ある日…

町を抜けて、木立を過ぎて。 しばらく歩けば、見つかります。 その建物には看板はありません。 じゃあ、どうやって見つけるのか、って？ ふふ。 必要であれば、必ず見つかりますよ。…

ふふ、覚えてるかい？ ……うるさいなあ。ね、今日は西ネス地区のお屋敷だろう？ ああ、準備は……できてるね。手際が良くなったじゃないか。 あたぼうよ。舐めてもらっちゃ困るね！ あ…

その家は呪われていた。 うち震え、もだえ、苦しみながら。 家人は、耐えたのだ。 長い年月を。 だが。 その少女は、男の前に立った。 栗色の髪をなびかせ、凛、と。

明治中期。 繁華街を外れた処、いまだ江戸後期の佇まいが残る一角。 ふるい長屋で、男と女は、暮らしている。 蓄えもない、部屋も狭い、冬は冷え、夏は蒸された。 すみよい暮らしではな…

ケイにとってはひさしぶりの訪問者だった。 窮屈な制服に身を包み、脇に書類をたばさんで、丁寧に礼をとる。 ケイの向かい、玄関にたっているのは、ひとくみの若い夫婦。

魔王の襲来。 人類の希望、最強の兵団は消滅した。 残されたのは落ちこぼれの、二人だけのチーム。

にんじん、大事。 ＊松任谷由実さんの「不思議な体験」を聴いて浮かんだイメージを短編にしてみました。

明治中期。 いまだ幕末の昏さを残す、帝都郊外。 瑞香は町外れの、小さな貸本屋のひとり娘。 生まれつき身体が弱い彼女は、店番をしながら少しずつ物語を綴り続けてきた。 あるとき、憧…

海がすべてのこの世界。 ウィスタは、水を操る力、水霊の紋章をもって生まれた。 しかし期待された能力が発現せず、意に沿わない縁談を受ける。 が、夫となるひとは、祝言に向かう船の事…

＊鳥尾巻さま自主企画『【ある朝目覚めたら】書出し固定企画』参加作品です。

ICD分類、厚生労働省基準、f22。 恋とか、愛とか、わかんない。 でも、その花びらは。

まったく、だらしない。 俺くらい仕事も家事もできる男になると、そのアラがよくわかる。 うちのやつは、ほんとうに、家事ができない。ダメだ。 俺が指導してやらないとなにひとつまともに…

えへへ。いいね、この空気。 あれ、あたしの席、ちょっとずれてる。 いまのうちになおしておこう。 黒板も、ちょっと、拭いてみようかな。 もう少しお掃除、がんばればよかったなあ。 …

暮らしのすべてを竜に依存する世界。 トゥトゥは竜の祝縁、すなわちその声を聴くちからを持つ。 ある日、空で、ひとりの男を救った。 セイラン・ウォジェ、堕ちた英雄。 予期しない出会い…

＊拙作「メデューサの失恋」の関連作品となります。

クロノヒョウさまの自主企画、「シチュエーション物語」参加作品です。 お題：「恋人同士の二人が初めてキスをする瞬間まで」。

ねえ、ちがうよ。 お礼をいうのは、わたし。 みんな、ありがとう。 大好きだよ。 ありがとう。 ＊鳥尾巻さま自主企画『瓶の中の手記』参加作品です。

赤茶色の空、安い煙草の煙、巨大な銃。 蒸気生命たちを屠るたびに、青年は嘆息する。 今日も、とどかない。 あの背中に。 ねえ、おじさん。 どうして俺に、見送らせてくれなかったんだ…

ねえ、おかあさん。 わたし、こんなだけど。 ねえ、おかあさん。 あいしてる。 ごめんね。 ありがとう。 あいしてる。

水無月るおん、高校一年生。 茶道と華道をたしなみ、剣道に秀でた、和風美少女。 そんな彼女には、こころを定めたひとりの男子がいた。 超硬派、女嫌いで有名な、美術部長の胡桃崎先輩。 …

深夜の学校。 あかずのとびら。 依頼主の命により、零司は、その前に立つ。 古代の霊刀を携えて。 雨蕗空何さまの自主企画にあてたおはなしです。 同じ文末で物語を〆る企画／お題：「…

港町。突堤。雨。酒。 長い髪、ほほえみ。波間のひかり。 わたしは、恋をしていたのだろうか。 いまでもわからない。 もう、二度と、わかることはない。

黒板にチョークで描かれた、奇妙な図形。 中学二年生の男子、那月は、ずっと望んでいる。 契約を、そのときがくるのを。 ＊クロノヒョウさまの自主企画「シチュエーション物語」参加作品…

長い長い、たたかい。 だがそれも、とうとう終焉を迎えた。 人類が、勝利したのだ。 いまはじまる、新たな歴史……。 ＊クロノヒョウさんの近況ノート企画「フランチャイズだった地球」…

硝煙、拳銃、死闘と、そのさいご。 さくらんぼが、実るころ。

むかしむかし、な。 はまべでかめがいじめられておってな。 それをたすけた、こころの優しい、おとこが。 ＊クロノヒョウさまの第46回「2000文字以内でお題に挑戦！企画参加作品で…

妖とにんげんの、おおいくさ。 その果てに傷つき、捕えられたひとりの武士。 命を落としかけたかれは、妖の屋敷で目を覚ます。 ……くふふ。気がついたようじゃの。 端正なおんなの姿をと…

あたし、こうみえても、きちんとしてるの。 だから先生のおことば、ちゃんと守ったよ。 まだだめだよ、っておっしゃるから。 ちゃんとみてあげてね、って、おっしゃるから。 ああ。でも、…

夏の午後、とある公園。 のどかな風景、ポップコーンの弾ける音。 陽光はあくまで、たおやかに。 おとこは、余興を披露する。 いつものように、慣れた手順で。

他人との接触で性別転換しつつスキルを吸収する訳ありの主人公が、革命真っ只中の世界に放り出されて革命軍と王室の術師たちの間で揺れまくりながら絶対無敵の最強術師になってしまうお話です…

わたしの本名は、青菜（あおな）。 ハンドルネームは、葵（あおい）。 小説投稿サイト「らいりん」でのわたしは、高校生。 みにゃっ、がんばだよ、が決め台詞の、かわいい乙女。 そう、…

妻と娘を奪われた男。 消えなかった火が、最後に映すもの。 クロノヒョウさま、「2000文字以内でお題に挑戦！」企画参加作品です。アンコール企画　第16回～第20回のお題：第16…