これまで妃同士がタイマンで勝負する後宮小説があっただろうか。いや、ない。
この小説は、斬新な設定ながらも読者が世界観に入っていきやすい筆力があり、後宮ものの魅力である華やかさや素敵な妃の登場もあります。
願い読みの華能を持つ主人公・妃の中でも序列最下位の玲は、ひょんなことから皇帝に興味を持たれてしまい、序列一位の妃・豹胡さまに目を付けられて……? という話。
メインキャラ以外にも、何やらツワモノな予感がする老婆や、勇気ある玲のお付き侍女・阿紗など、魅力的なキャラクターが盛りだくさんです。一人ひとりが個性を強く持っています。
世界観、設定、文章、キャラクター、全てに引き込まれます。まだまだ続きが読みたい。
「薬屋のひとりごと」から、中華風後宮ファンタジーというジャンルが増えました。
他所でも語りましたが、この流れは1990年代アニメ『雲のように風のように』の原作、 酒見賢一氏による第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品『後宮小説』から連なる文脈かと思います。近年増えた中華風後宮ファンタジー、人気がありますね。
さて、本作です。
概要蘭に書かれた範囲でお話すると「武闘・華泰萬《はなたいまん》」とあります。
失礼ながら私はツッコみました。「タイマンかーい!(笑)」。
つまり後宮の美しい華妃達が正妃を目指し、優雅に歌舞音曲を競い、さらには腹黒さを出して権謀術数を駆使する上で、最後にはどつきあいの「バトル」まで行うという世界です。
ヒロインは序列最下位、別称『圏外妃』(ここはツッコまない、笑)、敗戦国の貢ぎ物として帝国後宮に入った玲となります。
これだけ読むとコメディ色の強い小説の様ですが、全く違います。
恐ろしいくらいの静謐なる文体と、抒情的かつ繊細、時に苛烈な心理描写が醸し出す空気は、一瞬壮大な長編小説を思わせる堂々たる仕上がりです。
お勧め致します。
愉快なツッコみ所満載です(笑)。ですが、その高度な筆力を存分に使い、遊び心と譲らない信念が生み出す異端・中華風後宮ファンタジー小説です。
そうそう、いつも不思議なのですが、文芸的で上質な文体ながらさらりと読めます。これは特筆すべきポイントです。平易にならずに読み易いって凄いです。
そして、最後には「すげぇえええ!」ってなる事間違いなしです。
皆様、是非、是非、心からお楽しみ下さい。
宜しくお願い致します( ;∀;)