怒られちゃった。
とうとう。
こんなに本気で怒られるって思ってなかったから。
だって、だって……僕、悪いことはしてないもん。
そりゃさ、お姉ちゃんが書いた小説、勝手にアップするのは良くないよ。
壱単位なんて、ふざけた名前でさ。
それに料理だって、お母さんが作ったものだし、お父さんと一緒にタイヤ交換したときのことを自分で行ってきたみたいに書いたけどさ、いいじゃんそんなの、家族なんだから。
でも……お母さんがまさか、カクヨム、登録するなんて思わなかった。
おととい登録して、もう昨日、見つかっちゃった。
料理の写真アップしたから、バレたみたい。
スマホもパソコンも、取り上げられそう。
すっごい謝って、今日いちにちだけって許してもらったけど。
来年は中三になるんだから、少し勉強に身をいれなさいって、本気で怒られた。
今日で辞めるんなら、お姉ちゃんには内緒にしてくれるって約束してくれた。
お姉ちゃん、大学で文芸サークルやってるから、バレたら……考えたくない。
ここだけの話、だけど。
この間から、付き合ってる子、いて。
このサイト見せたら、すごいねすごいねって、たくさん褒めてくれてさ。
僕は背が低くていつも一番前だし、一年のとき一組だったから、壱にしたんだよって言ったら、あははって笑ってくれて。
でも、もう、できないのかなあ。
ねえ、みんな。
ごめんね。
もう、会えないかも。
カクヨム荘も、KACも、楽しかったなあ。
あ、お母さん入ってきちゃった。
じゃあ、さよなら。
いつかまた、大人になったら、登録するからね。
……。
というネタを、あたし考えまして。
最後くらいは大ウソ、ついてもいいかなあって。
あはは。
辞めろ、って言われたのは、母に、ではありません。
息子のお嫁さんにです。
お義母さんもう八十七にもなるんだから、いつ途切れちゃうかもしれない小説なんて書いてないで、しっかり薬のんで寝ていてくださいよって、あたしだってリハビリのつもりでやってるんだけど、わかってくれないなあ。
今日の夜、スマホの解約、されてしまうらしくて。
なんとか病院いったときに、娯楽室のパソコンで書き込もうと思うけど、たぶんダメかなあ。
看護師さんに怒られるだろうなあ。
だから、たぶん、今日でお別れ。
いままで、ありがとうね。
みんなまだ若いんだから、夢と希望、捨てないでね。
それじゃあ、ね。
いつか、向こうで、会おうね。
Apr.1, 2024. 壱単位