うわわぁー! と、ふわふわした浮遊感も感じるのに、風を切る爽快感もある、そんなあったかく、爽やかなお話です。
主人公のトゥトゥちゃんは、竜の声を聴ける力の持ち主。その竜たち、まぁー! 可愛いです! そして、その竜と戯れているトゥトゥちゃんもまぁー可愛い!
恋のお相手セイランさんは、堕ちた英雄といわれていますが、トゥトゥちゃんと出会い、また竜と飛ぶ喜びを思い出します。私からすれば、全然堕ちてなんかいません! ただ色々と、臆病になっていたんじゃないか、そう感じました。
そんな二人が結ばれるのは必然だった、それぐらいお似合いな二人のお話を、ぜひ!
私がたびたび小説をほめるときに、その世界の実在感、質量感というものを取り上げるのですが。
この作品もまた、そういう部類のものです。
この作品の世界が、肌感覚として伝わる。リアルに存在するように感じる。
竜に乗り、風を切る感覚。早朝の澄んだ空気を、深呼吸する感覚。
文章のリズムが、言葉選びがそうさせるのか。そこにあるものとして、確かに感じられる。
世界に酔いながら、澄み渡っていく。
そしてその世界を生きる人々は、地に足をつけ(空を飛ぶ人々にこの表現が適するかはさておき)、力強く心を持っている。
主人公のトゥトゥをはじめ、登場人物の一人一人、心折れた人も含め、確かな芯というものを感じます。
そこに生きているのだと、感じます。
あとすごく不思議なんですが、固有名詞の言語の選び方がちょっとマネできないバランス感覚なんですよね。
長さの単位が「モル」と独自単位なのに対し、地名なんかは「黒玻璃城」だったり。
統一感がないようでいて、全体としてしっくりきていて、絶対に現実世界ではないけどどこかに存在してそうな文化体系を感じるというか。
これがキチッと成立してるバランス、ものすごく深いことをしているような気がします。
こういうのができる人、尊敬します。
冒頭だけで鳥肌が立ちました。すごいです。
表紙を捲って小説を読み始めたはずなのに、異世界にいたんです。まるで、扉を開いてくぐり抜けたみたいに。
世界が、登場する人々が、竜が、風や草木が。すべてが生きています。こんなにも命が輝き、種種の愛情に満ち、感謝や祝福に溢れた世界があるなんて。
そして、自分もその一員になれる喜びを知りました。
私が特に好きなのは、竜の飛翔シーンです。竜の背からの視点、少し離れたところからの視点……と自由自在に切り替わりながら、竜と飛ぶ・竜が飛ぶとはどういうことなのか、わかります。映像や感覚がリンクします。竜とはなんて力強く、愛らしく、美しいのでしょう。
もうひとつ特に好きなのは、「おはなし」するシーンです。慈愛や無邪気、神秘的であたたかい感覚が肌に染み込んでくるようでした。すべてが愛おしいのです。
これは「読書」というより「体験」。
この世界にまだまだ立っていたい。そう思います。
幸せなのだなあ。
とっても良いのだなあ。
主人公、トゥトゥは、竜の心がわかる、「祝縁」を持って生まれ、白薄荷の宮で、竜のお世話をして暮らしています。(天職!)
黒玻璃城の次男に見初められ、思わぬ玉の輿、となるのですが、夫は、「堕ちた英雄」の後ろ指に苦しみ、
「自分のところに、本当に嫁に来るとは思わなかったよ。」
なんだかウジウジ言ってます。
そんなセイランに、トゥトゥはたまらず、「私は竜のお世話をしに、ここに来たのですっ!」と言い放ってしまいます。
さあ、この二人、どうなるでしょう?
物語はスッキリしていて、竜が空を飛ぶ疾走感が心地よく、セイランが、妻のおかげで前を向いていけるさまが爽やかに描かれています。
深い愛。
巡る生命。
癒やされる傷。
トゥトゥが大好きな、黒瑠璃城の竜たちが、とっても可愛い!
読了後、とってもハッピーな気分になれる、素敵な物語です。ぜひ、ご一読を!
第1話で、こころを持っていかれました。
風を、つよい風が吹くのを感じたからです。
これまで読んだお話の中で、これほどの風圧をかんじたのは初めてでした。
圧倒的な世界観。
世界の広さというよりは、その深度、解像度の高さに驚かされました。
まるでほんとうに、歴史上にこの世界が存在していたかのような、「本物の世界」が描かれているのです。
色も、においも、風も、音も、ひとびとの暮らしも、生き物たちも、すべてが本物のようなのです。
しかしそれ以上に素晴らしいのが、トゥトゥとセイランの人となり、そしてふたりの関係性。
竜の背に立つヒロイン・トゥトゥ。
トゥトゥが竜と語らい、自然と語らうさまはうつくしく、その魅力が最大限に伝わってくる。
堕ちた英雄・セイラン。
トゥトゥと対局の存在としてありながら、しかし彼の想いや行動原理を知れば知るほど、背中を押したくなる。
このふたりの在り方こそ、この物語の最大の魅力だと思います。
ひとは、なにかしら足りないもの。自分以外の者の考えを理解することは、容易ではない。
トゥトゥの生きかたは、セイランのこころをどのように動かしていくのか。
それがこの物語のいちばんの見どころだと、私は感じました。
筆者はきっと、竜と、世界と、いのちあるものたちと、話ができるのだと思います。
筆者はきっと、この世界を「見てきた」のだと思います。
そうでなければ、この世界は描けないと思う。それほどにクリアな世界に没入させてもらいました。
この物語を紡いでくれて、本当にありがとうございます。
少し大げさなタイトルを書いてしまいました。でもね、実際そうなのです。
この物語から僕は強く「いのち」を感じました。
言葉から、文章から、そう物語全てから、僕はこの世界が現実に存在し、人々が生活をし、お互いを慈しんで、ささやかに幸福を育む、そんな世界の偽らざる「いのち」を感じるのです。
壱単位さんがやらかしました。
敢えて筆者様と呼ばず彼女と呼ばせて頂きます(ファンの方ごめんんさい)。
カクヨムの同級生である彼女の素晴らしい才能は、日を追うごとにその様々な輝きを僕に見せてくれます。現在の僕が最も影響を受けている人です。
その彼女がこの物語において、最早「書いて」いるのではなく、楽しそうに踊っています。くるくるとふわふわと、時に猛然と、時に穏やかに。彼女は喜びのままにこの世界で飛び回り、楽しそうに竜達と飛んでいるのです。
僕は物語を書くことは出来る。でもまだ決して踊る事は出来ない。
だけど、そんな事を悩んだりする事もなく、僕はとても楽しくてわくわくして、子供みたいにこの世界に夢中になっている。
以前違う物語のコメントで彼女に伝えたみたいに。
僕はどこかの小さな本屋さんの「読み聞かせ」の場に行って、楽しそうに本を読んでくれる彼女の紡ぐ物語に、無邪気な子供達と一緒になって目を輝かせ夢中になって、時に声をあげ、時に笑い、そして言葉を失う程感動して、その世界に飛び込んでいるのです。
ありがとう、壱さん。
またとても素敵な物語を見せてもらいました。
これをお読みの皆様、是非この物語に飛び込んでみて下さい。
とても美しく、とても素晴らしく、とてもワクワクし、とても感動し、たまに笑い、そしてあらゆる感情を越えて、必ず自覚出来る事があります。
「この物語が大好きだぁぁああああああああ!」
ってね( ;∀;)
宜しくお願い致します。
壱単位さんの物語は、どのお話を読んでも、脳内で映像展開されます。
そういう、文章力のある方です。
いろがあって、音があって。動きがあって。
今回は風も感じるのです。
少しずつ読んでいるのですが、ぜひ一気読みして映画鑑賞したい。
そんなふうに思っています。
わたしが好きなシーンはやっぱり、竜が飛ぶところかなあ。
なんだかとてもきれいで、涙が出そうなの。
トゥトゥとセイランがこころが通じ合うシーンもとても好き。
「あなたがいい」という台詞に胸を貫かれて、レビューを書いています。
ああ、もう、なんていいんだろう!
とっても素敵な世界です。