筆者はこの世界を、「見てきた」のだ。

  • ★★★ Excellent!!!

第1話で、こころを持っていかれました。
風を、つよい風が吹くのを感じたからです。
これまで読んだお話の中で、これほどの風圧をかんじたのは初めてでした。

圧倒的な世界観。
世界の広さというよりは、その深度、解像度の高さに驚かされました。
まるでほんとうに、歴史上にこの世界が存在していたかのような、「本物の世界」が描かれているのです。
色も、においも、風も、音も、ひとびとの暮らしも、生き物たちも、すべてが本物のようなのです。

しかしそれ以上に素晴らしいのが、トゥトゥとセイランの人となり、そしてふたりの関係性。
竜の背に立つヒロイン・トゥトゥ。
トゥトゥが竜と語らい、自然と語らうさまはうつくしく、その魅力が最大限に伝わってくる。
堕ちた英雄・セイラン。
トゥトゥと対局の存在としてありながら、しかし彼の想いや行動原理を知れば知るほど、背中を押したくなる。

このふたりの在り方こそ、この物語の最大の魅力だと思います。
ひとは、なにかしら足りないもの。自分以外の者の考えを理解することは、容易ではない。
トゥトゥの生きかたは、セイランのこころをどのように動かしていくのか。
それがこの物語のいちばんの見どころだと、私は感じました。

筆者はきっと、竜と、世界と、いのちあるものたちと、話ができるのだと思います。
筆者はきっと、この世界を「見てきた」のだと思います。
そうでなければ、この世界は描けないと思う。それほどにクリアな世界に没入させてもらいました。
この物語を紡いでくれて、本当にありがとうございます。

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