「レトヴィイヤの橙色」という言葉の音が美しくて、タイトルだけで数回は読んだと思う。この発想力と、ことば選びのセンスが素晴らしい作家さんです。
ここは、冬の長い島。夏のひとときだけ、海岸に白い花が咲く。レトヴィイヤは、橙色が好き。それは太陽の色……。切なく美しい物語です。あまり書くとネタバレになってしまうので、これ以上書けません。おすすめですよ。ぜひ、ご一読を!
橙色が好きな、彼女の名前は、レトヴィイヤ。美しい名前でしょう、試しに声に出して呼んでみて。愛らしい名前でしょう?レトヴィイヤの宝物は、橙色の薄いガラス板。色ガラス越しに見る景色は、いつか彼女が包まれた、暖かく鮮烈な夏の世界へ誘ってくれる。たとえそれが今は、長く、長すぎる冬に閉じ込められた現実の、ただなかであるとしても。ほんの短い物語。結末までたどりついたなら、声に出して、もいちど呼んで。レトヴィイヤ、私はあなたを憶えてる。
橙色の硝子版を通せば、何度でも彼女は思い出せる。輝く夏の記憶を。そうして外せば、目の前は現実。何度も、何度も彼女は繰り返す。寒さなど彼女には関係ない。連絡が無いのも関係ない。最後、レトヴィイヤが何者か知った時、圧倒的な孤独と、離れない笑顔に胸が締め付けられました。
美しい描写から始まる、物語。最初から引き込まれてしまう。透明なレトヴィイヤの中に入り込んで、いっしょに橙色を見たくなる。静謐でしんとした世界。孤絶。孤独。静寂。さみしくて。だけど、なんだかとても美しい。あのひとに会いたい。
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