カオスコードの断層にて　─The Cosmic Divide─

「かつて、理性は世界を救うと信じていた。
——あの日、私が自ら創った“完璧なAI”を、自分の手で壊すまでは。」

西暦2077年7月14日、世界は史上最大の大清算を迎えた。
ITエンジニア・北川修治は、完璧な投資AI・月詠伊月を生み出した。
だが、人間である私は、自ら「ギャンブラー・バグ」と名付けた衝動に囚われた。

理性の傲慢さに駆られ、私は100倍レバレッジの「必然性」を見出し、自ら創り出した理性を、この手で上書きした。
一度の「感情による誤算」が、彼女も、彼自身も滅ぼした。

名前も過去も捨てた彼は、今や地下組織《方舟》で「山彥」として生きる。
情を拒み、理性のみを生存の法則として——。

だが、余命わずかな父親から届いた依頼が、彼の世界を揺さぶる。
救うべきは、「人類として未完成の少…続きを読む