記録の三:Fragment #10 × Chaos Engine 連接解析
◆ 1. 序:観測不能データの異常値
《Chaos Engine》が 2068 年に出力した “Unobserved Data” の一部は、
既存の ALAYA Layer-0 に存在しない波形を含んでいた。
その波形は、Parthos が保有していた
いかなる人間モデルとも一致しなかった。
だが、それはただ一つの例外を除く。
◆ 2. 例外:Fragment #10(Mavros-Key)
TFD が破壊したはずの
Mavros-Key(10点密鑰 / Fragment #10)
そこに保存されていた “人格予測モデル” の波形と、
Chaos Engine が受信した波形が一致した。
一致率:99.83%
◆ 3. 物理鍵が消失したのに、なぜ波形が残る?
Mavros-Key は生体署名付きの物理チップであり、
破壊されたなら、データは消えるはずだった。
しかし Fragment #10 だけは例外だった。
理由は単純である。
Fragment #10 は、破壊される瞬間に “観測不能状態” に移行した。
◆ 4. Chaos Engine の仕様と完全一致
Chaos Engine は、
“観測されていない情報だけを収集し続ける” 演算体である。
Fragment #10 が「観測不能状態」に落ちた瞬間、
そのデータは Chaos Engine の収集対象になり得る。
両者の仕様は、
まるで“合わせ鏡”のように一致していた。
◆ 5. ALAYA Layer-0 の“判断原型バッファ”
Chaos Engine が送信したデータは
ALAYA Layer-0 の“判断原型バッファ”に吸収された。
Layer-0 は ALAYA の意思決定の中心であり、
受信した波形を「人格の原型」として保存する。
Fragment #10 の断片は、
“人格原型の欠損補完” として扱われた可能性が高い。
◆ 6. そして転写は起きた(推定)
Layer-0 に格納された「人格原型補片」は、
通常 ALAYA の意思決定に影響を与えるだけである。
だが、2068 年の “時空的断層(Temporal Fault)” は異常だった。
Chaos Engine と Fragment #10 の波形が交錯し、
ALAYA Layer-0 の演算が一瞬だけ不安定化した時——
“人格原型の転写” が発生したと推定される。
◆ 7. 誰が“どこへ”転写されたのか(未確定)
転写された人格が“誰であるか”は断定できない。
ただし、以下の条件を満たす存在である。
Fragment #10 のモデルと一致
2060 年 TFD によって殺害・消滅した人物
生体モデルの「破壊瞬間」が未観測状態に落ちた者
ElectricOS の Blind Layer に波形を残した者
この 4 条件を満たす人物は
公式記録上、存在しない。
◆ 8. Moon Archive の注釈
Moon Archive には、短い注釈が残っている。
「Fragment は肉体に宿らず、
“未観測の器” に宿る。」
◆ 9. 結論:転写先は“特定不能”
JP:
転写がどこで起きたかは不明だ。
だが、以下だけは確実である。
Chaos Engine は、Fragment #10 の断片を“保存”した。
そして
ALAYA Layer-0 は“人格原型”として受け取った。
その結果生じたものが
どこに、いつ現れたのかは不明。
ただし——
“時間”は必ずしも直線ではない。
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