概要
月面都市に蔓延る、女だけの病。二十歳まで生きる女は、ほとんどいない。
二百年前に発生し、瞬く間に月面都市を席巻したウイルス――女性だけが罹る、遺伝子異常をもたらす病気。罹患率、百パーセント。十五歳までの致死率、八十何とかパーセント。二十歳まで生きられる女性は、ほとんどいない。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!決まり切った役割を果たすだけの、そんな暮らしが、「生きること」なのか?
遠い未来、月面の社会では、女性は必ず死病に罹患する。
15歳までに死亡する可能性が80%をいくらか超える程で、
20歳まで生きられる者はごく僅か。そんなディストピア。
すべてが管理され監視された月面に生きる3人の男女が、
それぞれの価値観を持ち、悩みながら、現実を物語る。
規範に従って結婚し、子を為して育て、別れを迎える。
社会は、閉ざされた中で小さな生態系を完結させた水槽。
そんな中で平凡な幸せと別れとその後を経験する第1章。
第2章、第3章では水槽への疑いと抵抗が提示されていく。
しんどい。私はサーシャだ。
ラルフのような知恵も技術もなく。
ただ、どうしても受け入れられず。
彼ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人はきっと飽き足りないのだ、ただ命の種を繋ぐだけでは
QOLという言葉がある。
quolity of life、生命の質。医療の分野においては、患者の身体的苦痛を取り除くだけでなく、精神的、社会的な満足度を重視する、そんな意味合いで用いられる。
このお話を読み終わって、真っ先に思い浮かんだのがこの言葉でした。
罹患率百パーセント、二十歳まで生きられる者はほとんどいないという恐ろしい病。
これに感染するのが「産む性」である女性のみだということが、この物語の核になっているように思います。
月面に生きる人類の種を絶やさぬよう、徹底管理される生殖。
貴重な女性はクローンで数を増やし、「結婚」の年齢である十五歳まで、どうにか種を維持していけるだけの人数…続きを読む