クローズド・アクアリウム

作者 朝陽遥

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17人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

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設定、文章、構成、いずれも高レベルにまとまっています。
作品は登場人物3人の、それぞれの視点が順番に語られます。彼らの物語はそれぞれに独立した内容ですが、悲しみを帯びつつもやや明るいトーンで世界に引き込まれるところから始まり、一転して悲嘆に満ちた世界を見せつけられ、わずかに希望を覗かせて終わります。
読者の感情を見事に揺さぶる上質の作品でした。

★★★ Excellent!!!

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QOLという言葉がある。
quolity of life、生命の質。医療の分野においては、患者の身体的苦痛を取り除くだけでなく、精神的、社会的な満足度を重視する、そんな意味合いで用いられる。
このお話を読み終わって、真っ先に思い浮かんだのがこの言葉でした。

罹患率百パーセント、二十歳まで生きられる者はほとんどいないという恐ろしい病。
これに感染するのが「産む性」である女性のみだということが、この物語の核になっているように思います。
月面に生きる人類の種を絶やさぬよう、徹底管理される生殖。
貴重な女性はクローンで数を増やし、「結婚」の年齢である十五歳まで、どうにか種を維持していけるだけの人数を確保する。
生と、そして死が、自らの存在意義に直結している。生々しい、そのままの意味での命の重みを、感じずにはいられませんでした。

しかし人間は、ただ生きるため、命を繋ぐためだけに生きることはできません。
制限された生の営みの中で、人々は歌い、絵を描き、本を読み、そして——人を愛し、愛を求める。
それらの行為は、生死の生々しさの中で、より純粋で尊いものに感じました。
予め決められた伴侶と共にすることを義務付けられた「家族の時間」に、ヒトが人間たらんとする希望が込められているようにも思いました。

整然とした一人称で紡がれる物語の主人公たちは、みな確かな血の通った人間であり、彼らの感じた迷いや怒りや哀しみ、そして喜びを、胸に響くような生の感情として捉えることができました。
それぞれの登場人物の生き様が、とてもリアルでした。
個人的には、委員長ことラルフが非常に理知的で大変いい男でときめきました。彼がサーシャの伴侶で本当に良かった。

これ本当にただで読んでしまって良いのでしょうか。素晴らしい物語をありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

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月面都市、蔓延る病によって、二十歳まで生きられる女性はごく僅か。
限られた命と、残された時間。出会うべくして出会った少年少女が、社会に翻弄され、葛藤し、戸惑い、泣いて、それでも毎日を懸命に生きていく姿に何度も胸を打たれました。
見出された希望の鮮やかさが、切なくも美しい物語でした。

★★★ Excellent!!!

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女性だけが罹る病。発症すれば致死率100パーセント。二十歳まで生きられる女性はほとんどいない——。

閉ざされた月面の世界で語られる物語は、ある種の絶望感を漂わせている。どれほどその人を想い愛そうとも、確実に別れはやってくる。
閉ざされた水槽のように、いずれ皆、死に絶えるのかもしれない。だがそれでも、人は誰かを愛さずにはいられないのだ。

「希望を持って死んでいける」——その言葉が、強く胸を刺す。
出口のない水槽のようなディストピアは、一見すると美しいもののように映る。だが、そこに描かれたそれぞれの生き様や家族に向けられた想いは、ただの作り物というには痛々しく、あまりにも切ない。

いつか、誰かが閉ざされた水槽を壊すこと。
それが唯一、絶望的な世界にもたらされた希望。たとえどれほど時間がかかろうとも、いつか希望を現実にと願い続ける。

この作品に、ご都合主義的な『幸せ』は訪れない。
だからこそ、積み重ねられた一瞬が愛おしくなる。鮮やかな痛みと悲しいまでも切なさ、そして限りない愛情を感じさせてくれる作品だった。

★★★ Excellent!!!

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この世界において男と女が生活を共にすることはほとんどない。親が子の成長を見届けることも。子どもは大人の思惑を知らず、異性の存在を身近に感じることもない。それでも短い間に伴侶との愛を深め、子を慈しむ。こんな世界でも人は誰かを愛さずにはいられないということが、ひどく切ない。