決まり切った役割を果たすだけの、そんな暮らしが、「生きること」なのか?

遠い未来、月面の社会では、女性は必ず死病に罹患する。
15歳までに死亡する可能性が80%をいくらか超える程で、
20歳まで生きられる者はごく僅か。そんなディストピア。

すべてが管理され監視された月面に生きる3人の男女が、
それぞれの価値観を持ち、悩みながら、現実を物語る。
規範に従って結婚し、子を為して育て、別れを迎える。

社会は、閉ざされた中で小さな生態系を完結させた水槽。
そんな中で平凡な幸せと別れとその後を経験する第1章。
第2章、第3章では水槽への疑いと抵抗が提示されていく。

しんどい。私はサーシャだ。
ラルフのような知恵も技術もなく。
ただ、どうしても受け入れられず。

彼らには牙を剥いてほしいと思った。
私自身も牙がほしいと思った。
目を背けたり流されたり潰されたりしたくないと思った。

読者の社会的立場次第で受け止め方が異なる作品だろう。

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