この国には、かつて神託を受ける「女王」がいた。
彼女の名は、壱与。
十三歳。
民に望まれず、神に試され、運命に押し上げられた少女。
心に宿るのは、栄光でも使命でもない。
ただひとつ、「守りたい人」がいた――それだけだった。
大国に呑まれ、仲間が倒れ、炎に包まれていく国。
愛する者の最期の言葉に、彼女は「時を遡る」決意をする。
一度きりの鬼道《時駆》。
その力で彼女は、すべてをやり直す。
再び出会った君は、まだ何も知らない。
私を知らず、愛した記憶さえ持たない。
それでもいい。
もう一度、あなたを守るために、私は女王になる。
「悲劇の未来」からやってきた少女が、
もう二度と「その手」を離さぬよう、命を賭けて歩む壮絶な物語。