第9話
「獣人て……捕まったって…」
「獣人なんてどこにも…」
黒髪の少年の言葉に混乱する子供達に、黒髪の少年はフリージアの足をせっせと手当する白髪の少年を指差す。
「アイツだよ」
『えぇ!?』
「で、でも確かに…角が生えてるし…」
「じ、じゃあ!俺達をここに連れて来たのも食べる為か!?」
「ああ…、しかもアイツは迷路に仕掛けられた魔力攻撃を吸収していた。きっとアイツが仕掛けたものだからだ」
黒髪の少年の発言は、その他の子供達に大きな衝撃を与えた。
そしてそれと同時に何故か説得力を持っていた。
生贄としてこの洞窟に放り込まれた子供達にとって、目の前の牛の角を持った少年は余りにも都合が良過ぎた。
「じ、じゃあ…なんで私達をここへ?」
焦茶の髪のおさげの少女が声を震わせる。
そんなこと、少年を見つめる子供達全員が既に察している。
怪我の手当をされている、一番幼いフリージア以外は。
「あの迷路で俺達が全員死んだりしたら、アイツの食う食料がなくなっちまうだろ?…既に何人か死んでるみたいだしな」
「あ……」
「そう言われてみれば、あの子達が焼け焦げた後に来た…」
「やっぱりそうか…じゃあこれで確定したな。アイツが獣人で、俺達はまんまとアイツに誘導されて逃げられない最奥まで連れて来られたんだ」
おさげの少女は、自分の妹をここまで運び、怪我の手当までしてくれているこの少年が、黒髪の少年の言うような利己的な人物には思えなかった。
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