第32話
「これはどういうことだ?ミノタウロス」
カリンの首と、その妹のフリージアの亡骸を抱きしめながらただ呆然と座り込み、虚空を見上げていた少年は、突然頭に響いてきた声によってふと現実に引き戻された。
声のする方を見上げると、そこには月明かりを一身に浴びた美しい少年が金色の瞳でこちらを見下ろしていた。
「だれ?」
「僕はお前を迎えに来た、今はそれだけで良い。質問してるのは僕の方だ、で、なにがあった」
満月の強い金色の瞳から少年は一度目を逸らし、俯く。
「早くしろ僕は忙しいんだ、お前を回収した後すぐに朝ドラの撮影があるんだ」
「あさどら……?」
「ああ、だから早く言え!場合によってはお前をこの場で始末する必要がある」
「え、そうなの?」
「……お前は黙ってろ」
悠々と後からやってきた白川が全く驚きもしていない口調で会話に割って入ってきた。
「……分からない…戻ったら皆死んでた…、だから殺した」
少年のあまりにも端的な説明に、満月は「なるほどな」と相槌を打つ。
「大方、あのマントの奴等は魔法石を奪いに来たんだろう。ここは入るだけなら誰でも入れるからな。下級魔術師がご苦労なことだ」
「……魔法?分からない、あの石は母さんが好きな石だから作った…僕は魔法なんて知らない」
「まあ、そうだろうな。お前にはこの力は身近過ぎた」
「なんで………カリンが死んで…、フリージアも死んだ…僕の…僕のせい?皆に石を配った…皆が喜ぶから…だけど全て奪われた、石も、皆の命も…僕が、僕が悪いんだ…」
少年はブツブツと呟きながら、再びギュッとカリンの首を抱きしめながらメラメラと黒い魔力を燃やし始めた。
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