第16話

(ここに一体なにを隠している?)



少年が石像を見上げ、一人で深い思考へと浸っていると、宝石から男の声が少年へと呼びかけた。



『おい、ところで今居る場所にはなにがある?』



「は?」



男の声にハッと我に返った少年は、思わず男の言葉を聞き返した。



少年には、男の声は聞こえていたものの、肝心の"言葉"が聞こえなかったのだ。




『…だからそこにはなにがあるんだ?』



宝石の青い瞬きに急かされ、少年は自分の正面に建っている石像を見上げる。



「石像がある。女の石像だ、胸に大きなルビーがはめられてる」



『女の石像…?ルビー…?』



「ああ、迷路から抜け出してすぐに、倒壊した神殿もあった」



『神殿ね…まぁいいさ、なにがあるにしても俺達は全て奪うだけだ。もっと詳しく状況を教えろ』



「分かった」



少年は男の予想通りの言葉に、歪んだ笑みを浮かべながら石像の足元へと腰を下ろし、宝石に向かって話し出した。

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