四章

第19話

「これ」



翌朝、日が昇り始めたばかりの頃、少年は黒髪の少年によって叩き起され、西の森へとやってきていた。



「"これ"じゃ分かんねーだろ!?証拠見せろよ!証拠!」



「しょうこ…」



無表情で真横にカクっと首を傾げる少年に、黒髪の少年は更に大声をあげる。



「だ、か、ら!その花が本当に魔法石を作れる花なのか、作って証明してみろって言ってんだよ!」



「……なにを怒ってる?」



「はあ?」



「……昨日からずっと怒ってる。なぜ?」



「うるせー!俺のことはどーでも良いんだよ!とっととやれ!」



「……分かった」



少年は黒髪の少年に言われるがまま、花の前にスっと座り込むと、すぐに花が作り出した宝石を拾い上げ、黒髪の少年へと手渡した。



「これ」



「ふんっ」



黒髪の少年は、差し出された宝石を乱暴に奪い、そしてブレスレットへとかざす。



すると透明な宝石の付いたブレスレットは、黒髪の少年がかざした宝石へと呼応するように青く輝いた。



「まぁ…本物みたいだな」



黒髪の少年はボソリとそう呟くと、懐に宝石をしまい込み、花に手を伸ばした。



「ダメ」



「あ?」



黒髪の少年は、自分の腕を突然掴んだ少年をキッと睨みつける。



「この花は摘んじゃダメ。手折ったら、石、作れない」



「はぁ?ふざけんなよ、摘まねーと持って帰れねーだろ」



「持って帰る?」



「そうだよ、こんな所早く抜け出してこの花で荒稼ぎするんだよ!この花がありゃあ、もう魔術師なんかにしっぽ降らなくても生きていけるしな!」



「………ここでしか作れない」



「今度はまたなんだよ?」



「石、ここでしか作れない。ここを出る、不可能。花は、ここでしか生きれない。ここの星の光で、魔力を得てる。魔力のこもった土、星空、そして花。持ち出すなら全てを持っていくしかない」



少年の途切れ途切れに不自然な口調に、黒髪の少年はイライラと苛立ちを隠そうともせず、明らかに眉を歪ませ、「うるせー!お前の言うことなんて最初から信じる気ねーんだよ!このバケモンがっ!」と怒声と共に花を乱暴に引きちぎってしまった。

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