三章
第14話
色鮮やかで美しい草や花々を掻き分けながら一人の少年が歩いていた。
「ちっ、なんだここ、全然メッセージが使えねーじゃねーか」
少年はぶつぶつと愚痴を零しながら一つの大きな宝石がはめ込まれたブレスレットを見つめる。
ブレスレットにはめ込まれた宝石はクリスタルのようで、透明で、朝の日差しに反射してキラキラと輝いていた。
「くそっ!」
しかし少年は腕につけたその宝石が輝くほどに、その煌めきが疎ましく、苛立ちが募った。
そうして一人で悪態を付きながら足任せに花々を踏みつけながら歩き続けていた時、透明なクリスタルが一瞬、チカチカと青く光った。
「!?」
少年は宝石が青く光った確かなポイントをその場から一歩、二歩、と前後に移動しながら「おい、聞こえるか?」と宝石に向かって呟く。
すると、宝石はチカチカと不安定に青く点滅しながら『やっ……きた…そいぞ』と男の声を発した。
(まだ不安定だな)
男の声が途切れ途切れにしか聞こえず、少年はより波長の合うポイントを探そうと歩きだす。
そして最終的に辿り着いたのは、森の奥深くに隠されるようにして建てられた女性の像の前だった。
白い石に彫られた美しい女性の石像の胸元には大きなルビーがはめ込まれている。
「はっ、なんだこれ?呆れて笑えもしないぜ」
少年が女性の石像を見るなり、つい一人で嘲笑の笑みを浮かべていると、青く光る宝石のブレスレットから男の声が再び聞こえてきた。
『やっと繋がった、おい遅いぞ。お前が出発して何日たったと思ってんだ?』
軽薄そうな若い男の声に、少年はひそかに眉を寄せ、顔を背けて男に聞こえないよう舌を打つ。
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