第23話

「!?フリージア!!」



身体中から血を流して倒れている少女の体に触れ、そっと顔を自分の方へと向させると、少女はその瞼を震わせながらも薄く目を開けた。




「フリージア!聞こえる!?」



「…おね、ちゃん…が…」



「カリン!?カリンがなに!?」



「連れてかれて…たす…けて…」



フリージアは掠れた声を絞り出し、激痛に襲われながらも、血で真っ赤に染まったその小さな手で、少年の腕を掴んだ。



「は、や、く…おねがい…おねがいします…」



自分の体を震える腕で支える少年に、フリージアは必死に懇願の言葉を繰り返し、今精一杯の力をその手に込める。



しかし少年のルビーの瞳には今までに見たことも無い程の戸惑いと、迷いで揺れていた。




異常な事態が起こっている。



それは少年にも理解出来た。



そしてフリージアと他の子供達同様、カリンも危機に瀕しているであろうことも。



しかし、ここで自分がカリンのもとへと向かってしまったら、フリージアは確実に死んでしまう。



そう予測がついてしまうほど、フリージアは出血をしていた。



少年の心は今すぐにでもカリンへと向かいたかったが、頭には変に冷静な自分が居て、




『だからと言ってフリージアを見捨てていいものか?』



『カリンを救えたとして、フリージアが死んでしまっては、それこそカリンが悲しむのでは?』




と無表情で問いかけてくるのだった。

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