一章:破節【クレス編】 第三十七話 約束


軍団長リンド

「え....これ 私がやるんです?」


そう言われると溜まりたまっているであろう書類が山積みになっていた。


イリアスはドア付近に佇む。

「うん! ちなみに役職は軍団長だけど、内政官もしてもらうからそのつもりで」


えっと振りかえるとドアは"閉められていた"。


イリアス

「いやーラッキーラッキー まさかカストル国の将官をやっていたなんてとんだラッキーだ」


その状況を見つめていたハクとフレデリカ。


フレデリカ

「ルンルンではしゃいでるけど、仕事丸投げよね あれ」


ハク

「そうですね」


遠目で見ているとイリアスに近づく執事が居た。

執事

「坊っちゃま お客様がいらっしゃいました」


イリアス

「僕に?」


はいと答えた執事に頷き、そのまま応接間へと向かうイリアス。

フレデリカとハクはなんとなく付いていった。


イリアスは応接間に入る。

「お待たせしました わたくしロンドール家当主 イリアス・ロンドールと言います」


そう顔を上げると、美しい女の子が居た。

やわらかくしなるストレートな茶髪、どこか遠く見つめるような冷たい青い目。


「はじめまして ロンドール伯

わたし テトラ商会会長ティリシー・テトラの娘 エルシー・テトラと言います。


父にあなた様を補佐するよう言いつけられました。」


「..........」


「いかがなさいました? ロンドール伯」


目を奪われたのか気を取り戻したイリアス。

「」っああいえ、

ティリシーさんからそういった連絡をもらっていなくて驚きまして


そう話をつづけた。


「そうでしたか」


フレデリカとハクは後ろからその状況を見ていた。

フレデリカ

「とても美しい方ですわ ロンドール伯が目を奪われるお気持ちわかります。」


ハク

「フレデリカ様も美しさなら負けないんですけどね それはそれとしてイリアスに恋が芽吹く感じですか?wktk」


フレデリカは「そうかも」と嬉しそうにハクと見つめ合う。


たまたまの通り道にフレデリカとハクが応接間を覗きこむ姿が見えたクレス。


「いかがなさいました お二人」


フレデリカ

「クレス様 クレス様!! イリアス様にお会いしたいと言っていた方がとても美しい方だったのです。」


ふーんと("昨日の件"かな?)と思い出しつつ、覗き込んでた隙間から見るクレス。


エルシー

「そうでしたか

ロンドール伯もお父君が亡くなったあとだというのに、立派にお勤めを果たしているとお聞きしています。

わたしはそのお姿に尊敬します。」


ロンドール伯

「はいキリッ 父の務めは重くツライものですが、それが当主たるさだめです。

民のために務めを果たすのが亡き父の思いも報われると信じています。」


ハク、フレデリカ

((さっき仕事を丸投げていたような...))


クレス

(は? ティリシーさんの娘綺麗すぎないか? 遺伝子どこに残してきた? 残ってるのあれ?)


覗きこんでた一同驚きを隠せなかった。


エルシー

「ロンドール伯を補佐せよと父に言いつけられましたが、ロンドール伯が素晴らしい方だとは思わずはたしてそのお役目果たせるかどうか...」


ロンドール伯

「いえッ エルシーさんが居るだけでも私は十分にお役に立てると考えています。

エルシーさんは為せるものから為してゆけばいいと思いますよキリッ」


エルシー

「ロンドール伯.....」


ロンドール伯

「わたしのことはイリアスとお呼びくださいニチャ」


そうしっかりとした顔でエルシーを見つめているイリアス。


クレス

(にしても腹立つなぁ 何がキリッだよ)


ハク

「真実を知ってしまったら、さぞ落胆するんでしょうね」


少し動き出そうとするハク。

フレデリカはハクの肩を掴み、止める。


フレデリカ

「ダメよ ハク 人の恋路を邪魔したら

そんなことをしてしまったら、わたしたちの恋路もうまくいかなくなるわ」


ハクはハッと諭され、「そうですね...」とその足を止めた。


そんな話をしていると、後ろから人は近づいてくる。


リンド

「みなさん....って王女さまもいらっしゃるし」


リンドは頭を掻くしかなかった。

先日ロンドール伯の屋敷に案内されたあと、すぐにこの国の第三王女との謁見があった。


勧誘から謁見などの事態が絡まりすぎて慣れなかったリンド。


クレス

「どうしたんですか?」


やれやれという顔でリンドは伝える。

「ロンドール様が仕事全部押し付けた上で、どこか行ったんですよ」


クレス

「そ....そうなんだ」(なにやってんの)


リンド

「で、問題なのがわたしは南方のカストル出身のために、エルテ語が読めないんです。

だからいくら書類仕事に関わってたとしても判を押せないので探そうとしてる。」


クレス

「あー...うん それならイリアスなら目の前の応接間に居ますよ」


と指をさす。


「さいですか」と適当に返事すると、そのまま応接間入る。


フレデリカ、ハク、クレス

「「あっ」」


リンド

「イリアス様 すみませんが仕事押し付けられても、文字読めないんでその〜.....」


そう目の前を見ると、イリアスはエルシーの手を掴み、向かい合っていた様子だった。


「お邪魔でしたね....」


そう踵を返そうとした。

イリアスは狼狽えた声で聞く。

「リンド!?せ、せめてノックをしてから入るのが普通じゃないか.....クレス?ハク?フレデリカ様?」


クレス

(しまった)

ハク

「バッチリ見てましたススス」

フレデリカ

「わたくしはなにも見ていませんわ」


一様に状況から目をそらそうとする一行。


イリアスはただ黙って赤面をしていた。


この状況に首をかしげるエルシー。

「あの...イリアス様 この方々は?」


イリアス

「あ、ああ彼らはリンド、クレス、ハク、フレデリカ 先代ロンドール亡きあと、私の手伝いをしてもらっている方々なんだ。」


エルシーは落ち着いた声でそうなのですねと言った。


イリアス

「リンド なんの用だ? てか鍵閉めたはずだけど」


リンド

あんなのピンキング子供でもできますよ

そうではなく、ロンドール様

勧誘し、私の部下、家族たちを保護してくれたこと感謝いたします。


が、肝心の書類のエルテ語が読めず、判をおせない状況でして、その相談をしようとしていました。

あと仕事全部押し付けないでください」


イリアス

「.....分かった リンド 私が読むからその補佐をして....」


ハッと気付く後ろを向くイリアス。


エルシー

「え? リンドさんという方に仕事を押し付けていたのですか? ロンドール伯というお役目も?」


そんな疑問をイリアスに突き刺す。


イリアス

「い、いやこれは訳あって」


ハク

「あんなウッキウキに部屋から出てたのに?」


背後からヤジが飛ぶ。


エルシー

「なるほど 今代のイリアス・ロンドール伯はサボり癖があるということなんですね」


そう顔を俯く。


クレスはあーあという顔になり、フレデリカは「ああ恋路がー」とハクを揺さぶっていた。

イリアスはただ狼狽えるしかなかった。


目に力が入った姿でエルシーはイリアスに近づく。

「父がおしゃったように、この不甲斐ないイリアス様を補佐する役目 十分に理解いたしました!」


そう言うと、イリアスの手を取り、リンドの元へ向かいます。


エルシー

「リンド様ですね?」


落ち着いた声なのにどこか情熱的な行動に少し困惑隠せないリンドは頷く。


「リンド様はエルテ語読めないとお聞きしました。 そちらの補佐もしますので、イリアス様の監視お手伝いください!」


「イリアス様! 執務室はどこでしょうか!?」


リンドは「あ、ああ分かった」と適当な返事をしつつ、イリアスを執務室へ連れて行くエルシーだった。


クレス

「もう2日、3日で色々起きまくってるな」

ただそう思ったことを呟いた。


ハク

「自業自得ってやつですねー」


フレデリカ

「....意外にも行動派なのですね わたくしもクレス様の手を引っ張れるようにしないと...」


となんとも濃い時間を過ごしていた一行。

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