一章:序説 第二十四話 罵倒
「これでようやく殺し合いが出来る!!」
公堂中にリミカルドの声が響く。
自身の手で携えた光の縄を付けた手斧を振り回す。
巧みに肘に、肩に絡ませ、手首を捻らせ、その凶刃をイリアスに向ける。
イリアスはそれを弾き飛ばすが、リミカルドを内に引っ張り落とす。その刃をイリアスに引っ掛けるよう差し向ける。
ハクはその凶刃を向けないようにリミカルドに近づくが、もう片方の手斧で振り回し、ハクは距離を取らざるおえなかった。
だがハクへと意識を背かせたため、その隙をうかがい、イリアスは剣を光の縄へ絡ませ、その攻撃を防ぐ。
がその勢いは消えず、一瞬イリアスをかすめる。
イリアス
「くっ」
リミカルド
「ちっ」
クレスは走る。イリアスたちの元へと。
イリアス
「クソッ なんでそんなに楽しそうなんだよ」
不気味に笑うリミカルドに不満を述べる他がなかった。
リミカルドは片方の斧をイリアスに絡め取らているために、もう片方の斧を手に持ち、ハクとの応戦をする。
ハクはリミカルドの一振りを避けるが、持ちてを替え、柄を体に引っ掛ける。
それだけではハクは微塵も倒れるわけではなかったが、重心が柄のほうへとよりかかってしまう。
その瞬間にリミカルドはハクの足をかけ、こけさせる。
ハク
「きゃ」
そのままこけると、斧の刃は内側へと向けていたため、自身の体重とともに突き刺さる可能性があった。
ハクは何がなんでも、リミカルドの腕を掴み、のしかかる。
リミカルドはそれを読んでいたのか、笑い、ハクをあえて突き飛ばす。
地面にぶつかった衝撃で一瞬身動きができなかった。
「
リミカルドは構え、その一閃をハクに差し向ける。
クレスは走る最中に、
「イリアス!! 剣を引っ張れ!」
イリアス
「ああっ!」
リミカルドの斧に流れる魔素が集約していたが、引っ張られたことにより逸れる。
リミカルド
(まだ
リミカルドはまだ追いついていないクレスのほうへと足を向ける。
クレス
「!?」
リミカルド
(この集団のなかで、ダントツでヤバいのがこのクレスだ。
"クレスの前でイリアスの殺害"の理由はよく分かった。
イリアス殺害の一番の障壁がこいつだからだ
"
リミカルドは走る最中に、その勢いを殺そうとイリアスは絡めた縄を引っ張ろうとするが、逆に引っ張り返される。
イリアス
「あ、」
リミカルド
(あいつはうちで2番手だった。
その2番手を殺されちゃ、こいつを真っ先に無力しないとイリアスを殺すことはできない。
.....どうやってダントルを殺した?
魔法...だろうな
戦闘中の聞き耳でユビキタスと言っていたな 古エーゲ語で"遍在"を意味する。
ダントルはそれを避けた。
結果、
ならクレスに近付かずに無力し、イリアスを殺害するという選択肢になる。)
だが、というように思考を巡らし、目を巡らし、周囲をみやるリミカルド。
その後を追っていたハクに追いついかれるが、ハクの蹴りを手斧の柄で防ぐ。
(この白いクソガキは威力は立派だが、動きが粗雑。 素直だわかりやすい 戦闘経験がすくねぇ
だからどうにとでも対処できる。)
引っ張られたイリアスを勢いよくハクにぶつける。
ハク、イリアス
「「くぅっ」」
そうしてクレスの前へと対峙する。
クレスは一切微動だにもせずに、素手で構える。
(剣が折れたか
本当に殺されたんだなダントル
さぁどうする? ここはお前の魔法の射程距離だぞ?)
そこはダントルが避けたであろう距離よりももう2歩詰めた位置にいたリミカルド。
クレス
「ユビキ...」
そう口を開いた瞬間、リミカルドは一瞬にして上半身を大きく反らし、手斧をあらぬ方向へ投げた。
クレス
「しまっ!?」
気付くのは遅く、その斧が降り立つ場所にはとある少女2人がヘタリ込んでいた場所だ。
サリィ、エスメはひぃっと互いに両手を絡めませ、天命を待つのみだった。
クレスは嗤う。
リミカルドはその仕草が横目から見えたがそのまま飛んでいく姿を見守っていると、2mの高さで飛び、その斧に飛び込みわざと刺さるイリアス。
イリアスは痛みで苦悶するが、その勢いある斧を抑えていた。
リミカルドは思う。
そのための十字の斧にしていた理由だ。
斧は薄めの横線は肉に引っ掛け、抜けにくくするための釣り針のような仕組みにしている。
リミカルドは戦闘を優位にするための特殊な仕組みに作り上げていた。
そしてこの手縄で.....
(いや 待てよ....)
そもそもガキが2m以上高く飛べやしねぇっと
そして斧の速さに追いつくにも、尋常じゃない力が必要となる。
この白いクソガキがそれに見合う可能性があるが、消去法としてガキとイリアスを
そしてハクが居るはずの場所に目を配ると、そこにはイリアスとハクが一緒に倒れ込んでいた。
なおも諦めず立ち上がる姿を見えると一瞬でクレスのほうへと顔を向ける。
「このガキッ!?」
クレスは不敵に嗤う。
「
リミカルドはバッと自身のローブで身を固める。
(火?)
それはぼうぼうと燃え盛り、火が広がっていく姿を見て、一瞬で脱ぐ。
大きく距離を取る。
ローブは火により、煙も立たせず消え去った。
リミカルドは思いつく限りの対処を取る。
手で鼻と口をふさぐ。
(幻覚系 か? 毒物に関する知識ならある程度あるが、なら実際に斧はどこへ?)
自身の投げたであろう斧と繋がっている縄引っ張ると自身が飛び込んで後ろ方向に感覚があった。
その先には公堂の地面に斧が突き刺されていた。
(なるほど)
クレス
「どうしたんですか? 急に距離を取って、トイレにでも行きたくなったんですか?」
(ほざけ)
このクレスが扱ったもの、つまりダントルを殺したのは"幻覚にまつわる魔法、この火の魔法だ"。
だが魔法の発言がなかった。
なるほど、やっかいだ。
それと性質が俺と同じ魔法だな。
類似点も含め、
幻覚にまつわる魔法について、
射程距離があり、おそらく毒物などが持つ胞子や煙と同じような物が周囲に漂っている。
なら口と手で塞げば、すむ問題だ。
「だがクレス お前武器を壊したんだろ?
聞けば、犬は柵に囲まれているほどよく吠えると聞くぞ?」
「今 その犬と同じ柵なので、あなたも同類ですね」
「ははは 俺は調教師だ 煮るも焼くも俺の
「まぁ水を注げばよく回る水車とはこういうことを言うのでしょうね
調教師? 笑わせないでください
戦い方で右往左往している様で?
あなたは迷える子羊でしょ?」
両者は互いに笑う、嗤う、哂う。
イリアス
「もう どうして も聞かない なんで も聞かない
リミカルド これだけは答えてほしい」
リミカルド
「なんだ?」
イリアス
「僕は..."愛されていたの"...?」
リミカルドはその問に黙り、考え、
リミカルド
「今もだ」
イリアスはただ顔をうつむかせ、そっか....としか言わなかった。
クレス
「........
リミカルド
「何がだ?」
クレス
「それは
リミカルドはこみかみに力が入る。
「何が言いたい?」
クレスの目には冷たさがあった。
「子供が嫌いな理由ってただ単に羨ましかっただけでしょ?」
リミカルドはその言の葉に驚く。
「自分の子供時代がただ辛かったから、
だから羨ましかった。
そして何もしらないイリアスの幸せ顔を見ているとイラついて、殴りたくなったことが何度あったか」
イリアス
「く、クレス?」
リミカルドの口角をぴくりと上がる。
「お前 ふざけてるのか?」
クレス
「ふざけてるのはお前だろ?
だから暗殺依頼が来たとき、心底驚いてたじゃねぇか
やった 殺せる と
なんで
イリアス殺したあと、依頼主殺す を複雑に織り交ぜてたよな?
イリアス殺したあちに依頼主殺すって....
ぷっくあはアハハハ
どんだけ愛憎入り混じってるんだよ」
リミカルド
「お前が何を言っているか分からない」
イリアス
「く、クレス? り、リミカルドがそんなこt」
クレス
「イリアス こいつ壊れてんだよ
愛情が壊れて、壊れて、壊れて、
伝えられる愛情表現が"殺す"しか伝えられないんだよ しかも
だから『今もだ』なんだよ
気付くとリミカルドはクレスの前立っていた。
蹴り飛ばされる。
「ガキィ 適当ほざいてると蹴り潰すぞ」
クレス
「ガハッもう蹴り潰されてるって」
クレスは自身の腕を犠牲に自身の体を守る。
「それで? もう終わり?」
そのわらいに怒りが込み上がるが、全身が呼吸困難へといたり、膝をついてしまう。
(しまった くそむせる)
ガハッかはぁと咳と全身の痛み、そして右腕から焼き上がる苦痛が伝わってくる。
クレス
「ハク!!」
ハク
「はい!!」
そう自身で掴んでいた光の縄で、リミカルドを縛る。
リミカルドは
自身の崩れた腕を持ち上げ、リミカルドのほうへと近づく。
イリアスはクレスの方へと走る。
「さっきのはどういう?」
クレスは少し切なさそうな顔で言う。
「大丈夫だ"みんなちゃんと愛してたよお前を"」
イリアスは閉口してしまった。
そのままクレスは立ち止まるイリアスを無視し、そのままリミカルドのほうへと向かう。
「......まんまと乗せられたな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます