一章:序説 第二十五話 わたしは何のために!!


クラカルに吹き飛ばされる2人。


「相手の動揺を誘い、選択肢を増やし、狭め、考える時間を増やす これが戦闘における判断力を鈍らせる手段となる。」


ミエラは素早く動けたが、その行動も読まれていたのか至近距離で弓を構えられる。


一発をわざと・・・かすらせる。


ミエラはその弓の2射目を避ける仕草をするが、その勢いを利用しミエラの首を弓で抑える。


「相手の行動を予想するというのは、大層難しく聞こえるが実際は簡単だ。


右側に道が空いてなかったら、右に行くだろ?」


そのまま後ろへと回り、ミエラを抑える。

その動きを見たグラディウスを槍をもう一度持つが、ミエラを盾として構えられる。


「行動を誘導したらあとは人はみな単純な動きをする」


ミエラを突き放す意外性にグラディウスはミエラを支えてしまう。

クラカルは後ろへと回り込み、2人を抱きかかえ抑える。


グラディウス、ミエラ

「「あ、くっ」」


クラカル

「大事なのは

一般常識を持つこと、

一般常識に従うこと、

そして一般常識から逆らうことさ 

これが卑しさに繋がる


おまえらを愛してる〜」


グラディウス、ミエラ

「「え!? キモ」」


クラカル

「これで思考は一瞬戸惑う」


グラディウス、ミエラ

「「ハッ 離して! 離せ! あ、ぐう」」


頑張って振りほどこうとするが、尋常じゃない力で押し込まれる。


「な? 簡単だろ? これが卑しいって言われるんだぜ? 悲しいだろ?」


グラディウス

「今回は誰かを殺しに来たのか!?」


クラカル

「そうだ」


ミエラ

「アディス第一王女の暗殺ですか?」


クラカル

「あでぃ...ああ、サリィ王女か いや

イリアス・ロンドールの暗殺だ」


ミエラ

(え?)


アディス第一王女が暗殺....対象じゃないの?。

ちょっと待って、え?

思考が回り、動きが鈍くなった。


グラディウス

「おまえ 自分の主の子供の暗殺依頼をどうとでも思わないのか!?」


クラカル

「どうも? 今回その親公認だ

世界中、ガキはくびられ、刺され、犬に食われ、騙される

そんな世の中だ 親に期待外れになる

周囲から疎まれ、殺される そんなの当たり前じゃないか?」


グラディウス

「だからこの学園を作ったんだ

おまえは俺が死んで悲しいとは思わないのか?」


クラカル

「哲学者じみたことを言うじゃないか

悲しいな だがが生きている

"いつか"仇はとってやるよ グラディウス

ああ、だがおまえは"追っている最中に"殺していいリストに載っているから殺す。」


グラディウスは「ああ、そうか!」と言うと、一瞬弛んだ両手から抜けた右腕で隠し持っていたナイフでクラカルを刺そうとする。


おっとっととクラカルは2人から手を離す。


グラディウス

「とことん自分勝手だ」


クラカル

「好きに言え、 どこの貴族も同じようなもんだ」


ミエラは解放されるが、考えることが多く、立ち止まってしまう。


ミエラは考える。

なんで? そもそもの話 どうして3年生で起こるイベントが起きているのか。


情報はなきに等しい中での考察。

思い出せる限りのイベント内容の会話を思い出すがそれの一切が"繋がる"要素がなかった。


だけど、....


ミエラ

「わたしたちを殺すのですか?」


クラカル

「....."グラディウスは"」


ミエラはすっと深呼吸をする。

(推しは死んでほしくない それが私の....)

「勝たないといけないね グラディウスさま」


グラディウス

「ミエラ....ああ、そうだな」


「合わせられるか?」


ミエラ

「アドリブでいいなら」


グラディウス

「なら合わせよう」


両者は目を凄ませる。

クラカルは少し目元を微笑ませる。


「うし ヤルか」


そう構えるクラカル。

グラディウスは槍を叩くように横に薙ぐ。


クラカルはその槍を掴もうとするが、方向転換させる。

クラカルは驚く隙を、ミエラは素早く駆け込む。

一瞬ミエラに目を向けるのと同時に槍を落とし叩く。

肩にぶつかる衝撃が来ることで一瞬怯んでしまうクラカル。


ミエラ

「こういうことなんですね 意表を突くということは」


クラカルはわらう。

「正解」


「だが 威力が弱い」


そういうと自身にぶつけられた槍をグラディウスごと持ち上げる。

ミエラは追撃を駆けようとするが、持ち上げられたグラディウスごと薙ぎ払われる。


クラカル

「気に入った だが直感だけで人を誘導していると相手は誘導されていると気付く。

そのあとの対処も必要だ。」


(団長たちが戻ってこない クレスという不明点を考えても、もう頃合い・・・だが)


グラディウスは立ち上がる。

「くそっ ミエラ大丈夫か?」


そっと添えられた手に掴み立ち上がるミエラ。

ミエラ

「はい すみません」


クラカル

「おう 元気にしてたか?」


グラディウス

「ペッ 謝るよりもまずはこっちを先にしないと」


ミエラ

「そう....ですね.....」


(こんなに全力で走って【】いるのになんでなんで.....)


―、古いお話。

私は小さい頃からヤンチャだった。


かわいいものを侮辱ぶじょくされると無性むしょうに腹が立った。

みんな同じモノ・・・・が好きなのに、どうしてお互いにののしり、さげすむのかが分からなかった。


だから殴った。 許せなかったから


身勝手な正義感だと思う。

私も "あのとき" わかってた。

だけど殴らないと分からないと思った。


『人を殴ってはいけません』


私はどうしてもそれ・・が理解できなかった。


だって人って宥めても反省しないし、殴っても反省しないんだよ?

プ◯キュアの悪役だってそうじゃん!

アメコミの敵役もそうじゃん!


アニメの悪役も主人公も正義の味方だって、

自分の正義を振り回してるじゃん


なのに人を殴ってはいけません?

"あなた"も人を殴る癖に?


だから戦争なくならないんだよ!!


子供ながら身勝手な考えだ。


てか子供の頃にこんなこと考えている私まさかのテロリスト系!? こっわ


いやうん 一旦お話戻します。


結局"そんなこと"をしていたから、

助けた子からも、いじめていた子からも嫌われた。

別に感謝しろとは思わなかった。

ただの自己満だった。

笑顔のない自己満だった。


.......結局私はなにがしたかったんだろう


そう自宅での謹慎処分を貰った。

家族にはこってり叱られた。


家族には本当に申し訳ないと思ってる。

私は家族のことは大好きだった。

笑顔で話している姿に私は満足していた。


その2人からよくセンパイという人のお話が出てきた。

恋愛相談に乗ってもらった話。

結婚相談も両者にしてもらっていたらしい。


そして、―


『はぁ 今日は先輩が来てるから大人しくゲームでもしていなさい』


「」え? ゲーム買ってくれたの?


『家に居てもすることないだろ? 勉強はすぐ終わっちゃうし、人を殴る以外優等生なんだから 本当に困ったけど仕方ない』


「ごめんなさい」


そっと頭に手を添えられる。


『それができるなら次はちゃんと殴った子たちに謝っときなさい』


「もう謝った」


『1回だけでしょ? そうじゃなくて態度にも未来の行動にも謝ったと思わせるようなことしなさい』


「?」


『反省しなさいってこと

あ、先輩にも失礼働いたら、私と一緒に学校に行って1-6年生全員に謝りに行くわよ』


「え!? 殴ってない人も居るのに!?」


『お母さん恥ずかしいからやりたくないけど、

人に迷惑をかけるってことはその周りにいる人たちにも苦しむってことを覚えさせないといけないからね〜』


「お母さん プレハラ プレハラ〜」


『なにそれw? プレッシャーハラスメント?

どこで覚えたのよ

ちゃんと反省しなさい』


「」。いやー


すごすごとテレビへと向かうと、確かにゲーム機があった。


タイトルは【アルテメリア学園 〜白色の革命〜】


絵が描いてあるパッケージ含めて、全然知らなかったが「なにこれクソゲー?」

子供ながらに思う。

私がやりたかったのはインクをぶつけ合ったり、家族で一緒にサイコロ振り回すゲームをやりたかったんだけど。


しかもCERO Cだし、私7歳なんだけど

....まさかお母さん、お父さん

ゲーム知らない系?....


いやお父さん バイ◯ハザードして....あれ?

プレステ1か....ないんだっけ?


まぁいいや ホラー耐性あるし、やろー


かちゃりかちゃりとゲーム機を起動し、ディスクを入れる。


すると後ろから人の声が聞こえる。


「それなんだ!?ワクテカ」


好奇心に満ちた声が聞こえる。


私の開口一番は、「あ?」


振り返るとそこにはひどく疲れて、深い目元のクマと無精髭で汚いと思った。


だが目を輝かせ、テレビの光景に引き込まれていた。


私はどこか.....いや


「今ゲームをしようとしてる」


「ゲームってなんだ!?」


「はぁ? おっさん知らないの?

ゲームはみんなで楽しむものだよ」


「いや そういうのは触ったことはないんだ」


なんとなくの好奇心で、ゲームのOPが始まるついでにゲームについての話していた。


おっさんはその話を一生懸命に聞いていた。

楽しそうに、ほんとうに楽しそうに、


........どこかそれが煌めいてみえた。


「そうか ゲームってそういうのなのか」


不思議と笑う。私はテレビモニターに指を差す。

「おじさん 一緒にゲームやろ?」


その人はどこか嬉しそうに、目をうるわせる。

だけど


着信音がなる。

おじさんはすぐさまに電話に出る。


「はいはい またですか? わかりました

今すぐ向かいます」


「」あれ? 先輩 もうですか?


「ああ、 ごめんね またいつか」


「あ...うん 楽しみにしてる」


そういうとその人はすぐさまに外へと出ていった。


「何時だと思ってんだよあの会社 23時に電話かけるって....」


どこかお父さんはやるせなさそうな顔をするが、私を見ると元気そうな顔で言った。


「お前〜 なにか失礼なことをしたか?」


そう冗談をかけるように笑顔で言う。


「ううん 全然!!」


―そこからおじさんと仲良くなった。

一緒にゲームをできるわけじゃなかったが、色々な所へと出かけた。


私はおじさんが好きになった。

別に恋とかではない。


ただ人として好きになった。


私は気付いた。

どうして人を殴っていたのか...


ほんとうにしょうもない理由だった。


みんなに笑顔になってほしかった。


ただそれだけ だからそれに和を乱す人が嫌い...だったんだと思う。

だけどその"思い"のぶつけ方が分からなかった。だから殴った。


......自分でも恥じたいほどの内容。


だけど....長い時間ときも経たずにおじさんは死んだ。


葬式に呼ばれたとき、

葬式に人は居なかった少なかった

お父さんはやるせなさそうな顔をしていた。


『あんなに、あんなに 先輩に頼って言う言葉もやることもそれかよ.....』


そう私を掴んでいた手ではないほうの拳に力が入った。


私も"おじさんの死"はもう分かっていた。

ゲーム・・・で学んだから、

どれだけ苦しいことか、どれだけつらいことか

私はないてしまった。


まだおじさんとはゲームを一緒にしていない


ただそんな後悔が胸に残る。


そこからだ。

私は笑顔で生きることした。


みんなを笑顔ですることが私の楽しみになった。


あんな後悔・・・・・を二度としたくなかった。


だからだと思う。

アルテメリア学園が好きになった理由も、


"死んでほしくなかった"


だから一生懸命に喪女でも夢女でも、

彼ら・・をどれだけ笑顔に出来るかせいいっぱい考えた。


せいいっぱいだ。


―――――


ミエラ

「これだけじゃもう倒せない 私は走っても【】追いつけない。

"私はなんのために" なら....」

(考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ)


グラディウス

「やりますね だがもう.... ミエラ?」


ブツブツとなにかを囁いていたミエラ。


クラカルはただじっと見つめる。


ミエラの肺からすべての息が吐き出される。

全身に力が入る。

奥歯が噛み砕けそうな痛みと共に、ミエラはクラカルを睨みつける。

白い息がミエラの周辺から漂う。


「ㇵぁ.......テラスアギト◯◉▲▣


一瞬でその場に居た全員に鳥肌が立つ。

なにかに飲まれる瞬間だった。


パリンっとなにかが割れる音が空に轟く。


クラカルは結界が破れたことに気付く。


「おっともう時間だ」


そう言われた瞬間、ミエラの意識が戻る。

ミエラ

「あれ? 私....」


グラディウス

「.........」


クラカルは戻って来るはずであろう団長たちが来る方向を見つめる。

グラディウスもその方向に釣られる。


ミエラも釣られる。

(え? なに? チ◯ドの霊圧でも消えた?)


だが来なかった。


クラカル

「それじゃグラディウス 楽しかったぜ」


そう去ろうとする。


グラディウス

「待て そのままで生きていけると思ってるのか?」


クラカル

「舐めるな小僧 俺は卑しきクラカル

好きに生きるからこそ、人から疎まれた男だ 生き方もうまいってことよ」


グラディウスはどこか疲れたように俯くが、ただほんの少し笑った。


「ああ、グラディ 今回の依頼には顔の絵が描かれたリストがあった。

その対象は"追っている最中"に殺していいリストと呼ばれている。

そのリストにはお前も載っていた。」


グラディウス

「な!?」


「そしてものの見事にお前が"この場"に居た。 本命はイリアスだが、やっこさん中々に用意周到じゃないか 気をつけろよ」


「なら依頼主だけは吐いてくれ!!」


「残念だがそれは言えない」


「なぜだ!!」


「"会っていないからさ"

依頼場所にあったのは俺たちの魔法の呼び方とイリアスの居場所のみだった。」


グラディウスは驚く。


「まぁそういうことだ 達者でな」


「ま、待て!!」


そういうとクラカルは学園の外へと向かうように走り出す。


グラディウス

「ミエラ おうぞ.....大丈夫か?」


そうミエラに目を向けると、


ミエラ

「え?....」


口からポタポタとなにかがたれる。

視界が赤くなり、鼻はなにかがたれ、耳の中からなにかが入ったような感覚が伝わる。


下を見ると、"赤かった"。


グラディウス

「ミエラ!! ミエラ!!!」


私は目を閉じた。

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