一章:第九話 友達
風が室内に
そこらに散りばめられた紙が
薄い金髪が風で揺れ、肌が少し涼しさを感じた。
そして
「ゲームってなんだ?」
ふと思ったことを口に出した。
(人生で一度でもゲームというのをしたことはない だから
少し顎に手を当てる。
そして親指が少し頬を押し込み、押し込まれた力で首傾げる。
目元はどこか虚空を覗き込むかのように、右上を覗き込んだ。
(実際ここの入学だってたまたまアルテメリア学園という
要は異世界にいる=並行世界にいるなら、たまたま名前が似通ったゲームがあったから惹かれた。
だけど、ゲームの名前に似ているからと言って、ここが
だがその説を否定するには十分な
(ゲームってのは英:game 訳 試合、競技、勝負事、遊びって意味だ
ならこの
けど遊びやら勝負事なら戦争も...)
分からないが分からないというのが頭に浮かび上がる。
ハク
「そんなに難しく考えることですか?」
そうクレスの後ろに立つ竜。
クレス
「ハク...いやゲームというのがよくわからなくてな 何がゲームなんだろうなって」
ハク
「え?んー そういえばカルエ村では、革をナメて縫い合わせた球がありましたよ?
皆さんたしかそちらで遊んでいました」
クレス
「え?そうなの どうやって遊ぶの?」
ハク
「皆さん投げたり、蹴ったりして遊んでいました」
クレス
(ゲームが遊びなら、これゲームに入るのか ますます分からない)
ハク
「マスターはどうして他の子たちと遊ばなかったのですか?」
クレス
「え?」
少し考える。
クレス
「なんでだろう 気にしたことはなかった」
どこかため息を吐くように鼻息を出すハク。
ハク
「エリザ様も他の方々と遊んでいらっしゃったのにどうしてうちのマスターは...」
クレス
「マスターと言いながら、口悪いなぁ」
ハク
「それは仕方ないかと思います。
難しく考える必要もないのです。
ゲームはゲーム ただ遊べばいいと思いますよ」
クレス
「遊べばいい?」
その言葉がどこか心に届く。
ハク
「私はヒトが考えていることは分からない
だけどその...マスターがそのゲームとやらはどうしたいのですか?」
クレス
「どう...したい....」
(『せめて ゲームだけは触ってみたかった』)
クレス
「ゲームを触ってみたい」
ハクは少しその物言いに驚く。
「触ってみたい? したいではなく?」
クレス
「分からない ただそう思っただけだ」
ハク
「分からないですか...」
クレス
「だけど...そうだね ハクの言う通り遊んでみようと思う」
ハク
「そうですか それならいいです」
クレス
「そういえばハクはなんで人の姿になってるんだ? なんか急に人になったのだけは覚えている」
ハクの見た目は、髪が白く整った容姿の角と羽がついた少女。
ハク
「え? 今聞くんですか? いつ聞くのかヒヤヒヤして楽しみに待っていたのに マスター全然来ないもの」
クレス
「おい竜のくせに 口が悪いぞ」
ハク
「これは....」
クレス
「無視かよ」
ハク
「魔法ですよ マスター」
クレス
「魔法? ああけど、『体は一つでも、多くの部分から成り』からの引用かい?」
ハク
「いえ、聖典からの引用ではなく創作ですよ マスター」
クレス
「創作....?」
ハク
「かの魔術理論では『想像は創造』です。
でしたら、変身魔法を扱えるのも道理かなと」
その物言いは少しわかりにくいと感じたクレス。
クレス
「待て...魔法だとしても、ハクは独自に魔法を作ったってこと?」
ハク
「そうですね」
そうウキウキとした顔で言葉を紡ぐ。
「私は以前マスターとともに熊との対峙際に、回復魔法を扱いました。」
「そうらしいね」
「実際には、マスターとの契約魔法で身体の同調で体を治る仕組みを把握したんです」
ほうと少し天井を見るクレス。
「そこから魔法を編み出して、マスターに掛けたんですね」
ほむと別のほうこうの天井を見つめる。
「なのでその仕組みを把握して、体の組織を」
クレス
「」ちょちょっとまて
ハク
「はい?」
クレス
「えーと 体が治る仕組みってのは?」
ハク
「あ、はい すみません 体の治る仕組みっていうより傷が癒える感覚を把握して、あとはマスターの知識を拝借して」
クレス
「てことは変身は細胞一つ一つ変えているのか?」
ハク
「はい そうですね」
驚きで目が高速になって、ほぼ閉じているように見えた。
クレス
「ほぼ 自殺行為なんじゃ」
ハク
「はい そうですね ヒトなら木っ端微塵かと」
....思考が止まった。
「簡単に言いますとね」
彼女は笑顔でスラスラと言葉を続けた。
「変身魔法という観点において、
変わる身ということで、身体的特徴ではなくその性質に特徴があると考えています。
マスターの記憶では、細胞や核膜など様々な特徴があるそうですが本のおかげでその
そこから細胞の変形をすることで、変質し人になったんです。」
クレス
「お前...どっからその知識を手に入れた?」
ハク
「うん? マスターから」
(同調すると言っても、そこまでの知識は私には
「ああ、そうですね...マスターって記憶力?でしたっけ? 結構いいんですね」
まるで自分の意を介さないように話を続ける。
「記憶力にも形ってあるんですよね
マスターって映像?、画像?、体感?まぁヒトが名付けたことはどうでもいいんですが の! 記憶力が高くって私 マスターの
(は!? ちょっと待て? 記憶?
確かに本を
小さい頃に母の言葉を守ろうとし、
本がいっぱいある所へと向かったことがる。
だが
簡単だ。幼かったからな。
だけど、図書館があればもっと違ったかな?
ロートリウス
「ここには世界から集めた知恵がある。」
....そういえば近くに
今度そこに行ってみるか。
(だけどその記憶からを読み取ったのか
言えば画像にある文字を読んだ。
よくあるネットストーカーにある発想だ。)
ハク
「ふふん 実はですね この変身魔法って使い所次第では結構痛いんですよね!」
クレス
(そんな笑顔で言うことなのか?)
「というと?」
ハク
「細胞を変質させるということは、形が変わるんですよね 変わる過程を含めて、
すると全身に通っている神経に近い細胞を始点にすると開幕から激痛を受けながら変身するんですよ!」
クレス
「そう....なのか ハクしんどい思いしながら、変身していたのか」
はて?と人差し指を頬に当てるハク。
ハク
「何か勘違いしてませんか?」
クレス
「うん?」
ハク
「痛い! 怖い! って思い、動きが反射的に硬直したり、退いたりするのは、動物特有の本能です 私 ドラゴンですよ?
生き物の頂点が "恐怖" を持ち得たりしませんよ?」
その笑顔はどこか脅迫めいた怖さがあった。
クレス
「けどそれじゃ熊には負けなかったんじゃない?」
意にも介さないクレス。
むっと口を膨らませるハク。
「あれは仕方なかったんですぅ 意識がなかったもんですから いや考える力がなかったってだけかも?」
クレス
「まぁハクが痛みは感じているのか...痛みに意にも介さないのが
手の仕草がうるさく演説をするハク。
ハク
「まだ分かっていないんですが、心臓や脳あたりから始めると恐らく拒絶反応やらが起こって死んでしまいそうなんですよね」
クレス
「心臓の形が変わるってことか?」
ハク
「はい!」
要はこうだ 心臓は血液のポンプ、体中の血液は
変質してる際に、心臓の位置が逆転か...反転かそれとも変質による
恐らく脳の場合は....神経か電気信号における電圧かなにかが動けなくなるからか...
「まぁ変身魔法一回経験したらあとは感覚分かったし早く済めばいいやって思って最速でやってますね あああと神経が少ない所がおすすめです」
クレス
(やらない)
「人に化けるなら幻覚とかを使ったらよかったのではないか?」
ハク
「幻覚...知識としてはわかるのですが、経験したことが...何かいい幻覚作用のものないですか?」
そう何かもらえないかと手を差し出すハク。
クレス
「...ケシの実とかを渡すのはどうかと思うぞ」
ハク
「ああ
輸入して戦争ふっかけられたっていうあれですか?」
クレス
「物騒な例えで言うな」
ハク
「あれはダメです
しかもあれかなりの数を常用しないと中毒性ないし、意味ありません
ゴミです! まだタバコのほうが中毒性強いですからね」
クレス
「人類が長く扱ってきた鎮痛剤をゴミと...」
ハク
「だってドラゴンが鎮痛剤使っても意味ナイナイ
だって使っても、全然効かないから幻覚来る前に飽きちゃいます」
クレス
「だから中毒性で飽きないようにするのか...」
(こいつ....実は頭おかしい系か)
「はぁ...ケシの実使ったっぽいが結局一体どれくらい必要だったんだ?」
なんとなく疑問だった。
それを聞いたハクは、指を数える。
ハク
「ふーむざっと10
クレス
「全人口の致死量だろその量 それは使い切る前に飽きるな」
ハク
「あとその量は現実的じゃないのと多分10tじゃようやく
軽い話のつもりだろうが、中々パンチが効きまくった話をしていたハク。
クレスは話を掘り下げても、ろくな話が出てこないと感じたのか話を逸らそうとする。
クレス
「.....とりあえずゲームを探さないといけないな」
ハクはその話にも噛みついた。
「ゲームならイベントが大事ですよね!」
なんか面倒くさく感じたが乾いた反応をするクレス。
「イベント? 催しとかのやつか?」
「チッチッチ 違いますマスター
ゲームのイベントというのは、
「出来事....」
「マスターはただ画像や映像、文字を見てもやらないと分からなかったんですよね?」
少し嫌な顔をするクレス。
「悪かったな ハクは俺の記憶でゲームが分かったのか?」
ハク
「いえ 全く!」
がくりとなる。
「ならなんでイベントなんだ」
ハクは人差し指を上げ、楽しそうに話そうとする。
「ゲームにはシナリオ、イベントなど様々あります。
そしてマスターは理解出来なかった理由はそこにあります」
クレス
「?」
ハク
「要はですね マスターはサイト内にあったシナリオを.....」
と映像を 画像を スクロールするように人差し指を回すハク。
「あーうん そうですね マスターは細かい部分を見過ぎなんです。
もっと大枠を観なければゲームそのものを理解出来ないかもしれないんです」
クレス
「細かい所というと?」
ハク
「例えばまかろにソサエティでの出来事で主人公がーヒロインたちがー」
――
「つまりはゲーム内ストーリーを赤裸々と書かれても、マスターが求めるゲームというものは理解出来ないですってこと」
クレス
「ふむ」
ハク
「なので頭の悪いマスターにわかりやすく言うなら」
クレスは手を出して、会話を静止させる。
「ちょ、ちょっとまてハク お前の口の悪さはどこで育った?」
ハク
「へ? 老とデリウスとの口論からですね」
頭をかかえるように手をかざすクレス。
「あの人たちはいつも喧嘩しているのか...
てか老ってなんだ?」
ハク
「喧嘩じゃないですね 口論ですね
ロートリウスと老人を掛けた感じです」
クレス
(ほんっとうに失礼だな)
「昔のお前のほうが可愛かったよ」
ハク
「今も可愛いですよ?
とまぁ話を戻しますね」
態勢を整える尻尾と翼と角が生えた少女。
「プログラミング?ですか?
そこから説明しますね!
変数というのがあります
みんな難しい感じますが要はa+b=cのaとbとcが変数ですね」
クレス
「知ってる」
ハク
「まぁまぁ a+b=cで当てはまるものは?
数字ですね そしてこの
クレス
「int型って数字は大きいが」
ハク
「たとえですよ
つまりはこう書かれるわけです。
int a という箱の中は空っぽ、そこに数字を当てはめるわけです。
a+b=c はそのままだと答えはエラーです。
なぜなら中身がないからですね
int a = 1 と定義すると
a+b = c は 1 になります。
この箱と中身のことを変数と呼ぶんです。
一応わかりやすくするため、
式を出しますね。
int a= 1、int b= 1
ちなみに cも定義出来まして、cの中身を3にすると
ほそく~
クレス
「一体誰に話しているのか分からないし、人に失礼だぞ
初歩中の初歩を教えられても、これのどこに関係あるんだ?」
ハク
「大有りです マスターはミクロに考える
ならマクロに当てはめる考え方を作り上げてるのです。」
クレス
「.....はぁそうか 続けろ」
ハク
「では次にメソッドについて!
メソッドというのは えーと確か記憶ではPCの命令書とかあるけど、簡単に
出来事ですね!
要は 父 という
母 というクラスがありました
2人は出会います。
そして子どもというクラスが産まれました!!」
クレス
「..............」
(あれ? とんでもない話している?)
ハク
「だけど 父は誰かも分かりません
母も誰かも分かりません
そして産まれた子どもも誰か分かりません
当たり前ですね
そのため、父 の中身はカーター
母 の中身はイルナ
子どもの中身はクレスになります
そのため、メソッドはこうなります。
このメソッドはまだ名前がないんで、子作り.メソッドにしましょう!」
クレス
(やばかった話だったな)
「それのどこが関係あるんだ」
ハク
「このメソッドのことをイベントと呼びます。
マスターはですね 今までどんな人生を受けましたか?」
そう投げかけるハク。
クレス
「唐突だな...まぁ高校を出て、教団にプログラミングの会社に紹介を貰って就職してそのままかな」
ハク
「そうでしたね!
ではこういうことですね
マスタークラス{←箱の枠組み
母 = ◯◯、父 = ◯◯、子ども=マスター
子作り.メソッド()
子育て.メソッド(中身は母と父が子どもを育てる)
就職.メソッド(ここでは新しいクラス 教団と就職先を用意して、そこにマスターが就職したという中身になる)
そして死亡.メソッド
新しいメソッドが生まれて、
異世界転生メソッド が生成される。
}←箱の枠組み
これがマスターの
クレス
「まぁ大枠は間違っていない」
と少し上の空を見る。
ハク
「まぁ難しくなっちゃっいましたが、
要はゲームの中身はマスターの
そしてゲームはクラスから抜き取ったメソッドの名前を指すんですよ
つまりは ゲーム.メソッドになる。
そこにある
そしてゲーム.メソッドの中にあるイベント.メソッドがあるって形ですね。
マトリョーシカみたいな感じですね。
もちろん エリザクラスも老クラスも同じような
そう胸に手を添えるハク。
「ゲームとはこの
クレス
「問題提起は? 安全プログラムは? ちゃんと運営出来るのか?」
ハク
「知りませんよ そんなこと あくまでもマスターの記憶を読み取っただけなのですから
問題提起は 人生とか哲学とか
安全プログラムは 条件反射で
運営はマスターが歩んできた生き方で決まるんじゃないですか?(適当)」
なんだかとんちんかんな答えが返ってきた。
クレス
「ふっ....ちょっとふざけてみた
それで? 何を俺にさせたいんだ?」
ハク
「つまりは まだマスターの異世界転生.メソッドの中にある、学園生活.メソッドには
クレス
「つまりは私のこの学校での生活にイベントを作れ と?」
ハク
「そうです! マスターには新しい出会いが必要です!」
「マスター 私 賭けをしませんか?」
ハクは優しい瞳にじっとクレスを見つめる。
クレス
「賭け?」
ハク
「はい 恐らくはゲームをするには、ある程度の中身がなければ、ゲームとは呼べない
そうであるのでしたら、中身のあるゲームを探すために出会いをして、どちらがゲームを見つけられるかって勝負です!」
クレス
「友達自慢をゲームにするのか...最低ではないのか?」
はははと笑うハク。
「ゲームは楽しむものですよ マスター」
「」っささ!! 行きましょう
クレス
「あ、ちょ!?」
そう言うと、すぐさまにその場へと消えてしまったハク。
(角やら生えたままで人と出会えるのか?って思ったが...まぁいいか あの頭の
はぁとため息を出す。
――
出会いか... あまり考えたことはなかったが、エリザや師匠、そしてハクに出会えたこと。
それが
なんだかそれで十分だと思ってしまった。
『せめて ゲームだけは触ってみたかった』
果たして、今私が
そう思えてしまった自分がそこに居た。
―
ものは試しだ。
確か師匠はミミングと呼ばれていると聞いた。
ミミングとはなんだろう?
何か知恵と関係あるのだろうか?
まぁいいか...と考える思考とは違い、出会いイベントとやらにどこか期待があるのか足早に歩いていた。
かつかつかつと歩くその軽快なさまに気が付かないクレス。
―
話は進む。
ここが....円形図書館
圧巻という言葉が湧いてきた。
本に、
幼稚な考え。幼かった頃の自分にはなかった知恵の実。それが目の前にあれば、噛んでしまうのもわかってしまう。
周囲を見渡し、どこか懐しい雰囲気を感じた。円形の屋根は丁寧に施された絵画がプラネタリウムだと感じ、窓から透き通る光は確かに部屋中を明るくし、本には当たらないように輝いた。
師匠の言っていたとおりだ。
ここが出来上がる過程はよく聞いた。
かなり難儀していたらしいと。
天井を描いた画家同士、円形図書館を建てた建築家同士の争いは絶えず、それを見た権力者たちはまるで
名は確か....「完成したシナルの塔」と
絵画を見た教会はそれを見て、喜んでいた。
「これで我々の教えは広まる
権力者たちはほくそ笑んでいた。
「神の落雷なき塔は完成したと」
はぁなんともバッチバチ、だが師匠曰く「両者ともに喜んでいるから良いではないか」とガハハと笑っていた。
シナルの塔は恐らく...まぁバベルの塔なんだろうな。
それは置いとき、その絵画であろう代物があった。
私の人生に様々な潤いが入ってきたが、これは恐怖 いや荘厳さがあった。
絵画というのは人生の一つも見たことはなかった。いやブラウザで見たことがあるがそも大きさを知らなかった。
だがそれは 巨大だった。
眼前を覆う
描かれたそれは大きく描かれた石積の塔とそれを背景に話し合う様々な肌を持った豪奢な服を着た人たち。
その人たちは梨の実みたいなのを持ち、それを齧る者、嫌がる者、首を傾げた者が居た。
そして隅に描かれた木に枝葉に絡まった蛇がいた。
それを見て、驚く人の右手はまるでフレミングの法則みたく人差し指が額に、親指が胸に、中指が左肩に向いていた。
それは教会でいう十字を切る仕草だった。
私にはわかる。これだな比喩をしたものはとそう理解せざるおえなかった。
この絵画は 美しい と言いたいが、こんなにも意味が込められているとなんだか辟易と感じた。
もう一度絵画を見たが、恐らくは他にも複数の意味があるが読み取れなかった。
師匠は言っていたな。
「我々は絵画を手紙として伝えている。」
「手紙...ですか?」
「そうだ 手紙だ 我々はどう考え、どう生き、どう伝えるか 考えぬかれたのが絵画だ。
歴史は脈々と壁画から絵画となり、
「シンボル...」
「我々は伝えたいものはしっかりと伝わるようにそのメッセージを描くのだ。」
そうかと納得した。
この
私はゆっくり目を閉じる。
(わかりにくい けど面白い)
そんな言葉が瞼の裏で書き上げられる。
だけど悲しいかな、この話し合ったという出来事は本などには書かないのだろうな。
なんだかそれを口伝でもいいから誰かに伝えたくなった。
そんな衝動は子どもじみた何かだとも感じた。幼さが考えをゆるくなったのか、これもどこか出会いイベントに必要なのだと考えあってゆえなのか
すーと近くにあった棚板をなぞるよう指で撫でる。
「メッセージか...」
なにかを思うように、ただ今日は円形図書館を周ろうと考えた。
―
ん? そこには本棚に手を伸ばそうとする少女が居た。
幼い少女には届かない距離、よく見ると指先に合った本は【エルテメール帝国史】と書かれていた革の本があった。
なんとなく私はその本を取り、彼女と話をしようとした。
あれ?彼女はどこかで見たことあるような...
―――――ミカエラとの邂逅。
中々に面白かった。
彼女はしっかりとした考えを持ち、意外にも会話にのってくれた。
楽しんでくれた....そう考えてもよいのだろう。
全く...いいことをしたような清々しい気分になった。
しかしあの言葉、
「え、女性なのにどうして文字が読めるのかおっしゃらないのですか?」
なんだかそれを驚いていた様子だったが、どこか驚く必要があったのだろうかとも考える。
師匠は文字が読めることはよくないことだと言っていた。
"女性なのに"という言葉。
これはもっとよくないのだろうな。
あまり歴史には詳しくはないがそういった考えを持った人たちが多い時代なのだろうか?そう考える他なかった。
...あの
回廊を歩いていると人にぶつかる。
―――――アリスとの邂逅。
そういえば魔法はあんまり使ってはいけないんだっけか...
奇跡か....これはそんなにも隠さないといけないものなのか?
もっとこうみんなが楽しめれる
お礼はいらないんだけど、まあどこかで出会うことはないだろうなと目を閉じるクレス。
「は!?そういえば ハクとの勝負忘れていた!!」
(出会いイベントといってもどういうものかは分からない 一体どう果たせば出会いになるんだ?)
イベントという定義がわからず、少し考えるクレス。
だがそんな定義は今だ決められずにいた。
「そうだ 友達自慢なら友達になる人と出会うことが正解なのでは?」
と考える。
生来 友達 と呼べる人がいなかった自分でも、友達を作るということ。
中々にそのイベントは難しいのでは?とも感じたが、勝負事は初めてなので負けたくはなく、精一杯回廊を走り、友達になれるだろう人を探した。
「こら! 廊下を走るな!」
「あ、すみません」
と足を止め、頭に手をあて、謝る仕草をするクレス。
「まったく人にぶつかったら、大事な資料が汚れるだろ!」
そうフンッと手にもつ書簡を大事そうに歩いていく教授。
心が焦ったのか、気持ちが、心拍が、未だに鳴り止まず意外にも自分が負けず嫌いなのだろうとも感じた。
ハクには負けたくない。
そんな気持ちがどこか楽しんでいるのだろうか頬を緩んでいたようだった。
ふとハクの姿を思い出したが、
傲慢なほど態度も口も悪く、見目は麗しくても硬質な角、鱗を持った尻尾と翼を持った白き少女が「友達になってくれ」と言う姿がどこか面白おかしく感じた。
(いや無理だろ 悪魔みたいな見た目の女の子に友達になろうとする奇特な子が居たら逆に心配してしまう。)
理性なのか、理屈なのか 不思議と冷静になり、負けたくないのは
「あ」
「くっ...」
考えすぎたのかまた不意にと人にぶつかってしまったようだった。
肩と肩がぶつかり、ぶつかってしまった少年は態勢を崩し倒れてしまった。
「すまない」と倒れた少年に手を差し出す。
「いえ、大丈夫です...」と手を差し出したクレスから目をそらし、自分で立ち上がる。
私は少年の姿がよく見えた。
彼は濡れ鴉の髪、光を吸い付く茶色の瞳、色白の肌、ただその顔はどこか怯えがあるように見えた。
「日本人....?」
ふとそんな風に感じた。
実際似たような顔はこの世界でも居る。どちらかというと西洋向きの顔だが、ただなんとなく同郷のように見えた。
「に...ほんじん?」
「ああ、すまない ただ少し知っている人たちに似ていたのでつい」
その言葉を聞いた少年はクレスに近づく。
「ぼくの顔をよく知っているのですか!?」
「え?」
その真意は分からないが、何かを驚いていた様子だった。
「いやただ 少しだけだよ? しかも友達でもないんでもない」
少年は「そうですか」と少し落ち込んだ顔でこちらを見つめる。
(聞けってことなのかな?)
「何か知りたいことでもあるのか?」
「いえ、大したことはないのです。」
と少年は質問の答えをそっけなく返した。
少し考えるクレスはこう言った。
「ん〜君の疑問に答えられるか分からない
だけど、君の知りたいことを知れる何かのきっかけになるかもしれないんだ。
他人にとっては大したことはなくても、
君にとっては大したことなのだろう?
言ってくれなければ答えられる話も一生分からない日が来る。
ぜひ教えてくれないか?」
なぜか親身になったような言い方。
初対面、数分の会話、ただ昔の自分となぜか重なってしまった。
「ずいぶんとズカズカと人の心に入るのですね」
それは『拒絶』という言葉だった。
「ぼくは大したことはないと言ったら、大したことはないのです。
(めんどくさい 先ほどの顔に希望の顔をし、人の心と言っている時点で聞いてほしそうな顔をしていたじゃないか)
「そうか
「何が言いたいのですか?」
「
それは吐き捨てるように言う。
「あまの...じゃく」
「聞きたい言葉も聞けずに否定するねじれた人に表す言葉だ」
「........」
黙った。図星だったのだろう。沈黙は肯定を意味すると聞くが、これもその一つになるのかと思う。
「なら...」
「なんで....」
何か言葉繋がっていくのか、動揺した瞳は徐々に真っ直ぐになっていく。
「だから ぼくはみんなに嫌われているのですか!?」
脈絡がない。思考が追いつかない。先ほどの会話より新しい要素が現れた。
だが
「君が嫌われている...のかは知らないが、言ってくれなきゃ分からないことがある。」
少年の前に手を差し出す。
「どうする?」
「....」
「いい...その...ああ...お願いします」
そう小さく呟く言葉をはっきりと鼓膜に届いたクレス。
「そうか 教えてくれ 君のことを」
沈黙が続く。
(さすがに
「....ああ、....そ....まず俺は嫌われていない」
(.............)
「いやその僕は....ああうん俺はこの黒さがあまりの注目ぶりに人気が高いんだよ」
(うん)
「俺はだが噂の的になるのは中々に大変でな いつも気になって仕方がない
だが、俺の髪の黒さは珍しいらしく
家族に聞いてもちっとも答えてくれやしない! こりゃ大変だ!!ってなるわけよ」
「要点は?」
「は?要点?」
「うん 要点 何を聞きたいんだ」
じっと少年を見つめるクレス。
「うぐっ....そのお前はぼ...俺に似た人を見たことがあるらしいな ぜひ教えてくれ」
「教えてくださいだろ?」
「え...」
「人に頼む態度かそれ?」
「あの...そのごめんなさい」
「謝られても困る どうして欲しいの?」
「え...あ...」
「その....教えてください」
「なにを?」
「僕に似た人を」
「僕に似た人をどこで見たか教えてください」
必死の声になる。
.....沈黙が続く。いいよ!と言うのが当たり前なのだろうか...だが中々に....いい性格をしている。
「わかった」
まずは話を整理しよう。
恐らくは彼は天邪鬼だ。
天邪鬼の形にもそれぞれだが、2面性を持った喋り方をしている。
僕が "本心" 、俺は "建前?逆転?"
だろうと定義した。
つまりは、黒髪は周囲から嫌われているか奇妙な目で見られている。
特徴的な印象なのだろう。
確かにこの学園でも見当たらない髪色の珍しさだ。
そしてもう一つ、「家族に聞いても」と言っていた。
つまりは家族は彼を"嫌っている"。
突然変異型、いわゆる逆アルビノというモノがある。
彼がその可能性があるが NO
アルビノは色素欠乏症であり、
逆に言えば逆アルビノ色素豊富?症になる。
色素が多かったら少なからず、肌にも影響があるが少年の肌が色白のため、遺伝的性質になる。
つまりは母親か父親が黒髪に近かった可能性がある。あるいは茶髪か
だが彼は...家族と言っており、父と母を言わなかった。
齢13にしては精神的支柱にある両親の話を言わなかった。言わない子も居るため、確証は低い。
ちょっとハクの
少年 の
黒髪、茶色の瞳、
僕=YES、 俺=反転YES、NO?
出生.メソッド 遺伝か、突然か
嫌われている.メソッド bool
//追加要素あり?
と行こうか。
さて、
「まず 君と似たような人は見たことがあるが遠い地域に居る。
だからそんな簡単に会えないよ」
「そう...ですか」
「黒髪...は確かに珍しいが、君の両親から受け継いだものなのかい?」
「それは...わからないんです」
「わからない?」
「はい、父は金のように輝く髪で、母は会ったことがないんです。」
つまりこの少年の出生.メソッドは
遺伝性か、突然変異かは わからない つまりNULL
だけど母親の遺伝性が高いかもしれないということか。
「お父さんは? 何も教えてくれないのか?」
「はい...その黒髪のせいで、政略結婚できないじゃないかと仰っていました。」
なるほど。
追加要素 父クラス 金髪、クズ、貴族
なのね。
そして嫌わている.メソッドの
ああうん最悪の
「それで母親がどこの人かしてたら君はどうしたいんだ?」
「え?」
「ただ知りました〜 だけじゃ何も変わらないよ」
言っていることはわかっている。
そんな顔をしていた少年。
しかし言葉が思いつかないのかあるいは少年に言葉が作り出せないのか未だに静けさが来ていた。
風が揺らぐ。
「俺は...俺は知らないといけないと思う」
「どうして?」
「わからない だけど知らずに後ろ髪を引かれるより、知って後悔をしたほうがいいと思う。」
「哲学的だ」
「なんだっていい 俺は俺なりに考えてきたんだ」
そう握りこぶしを持った。
(だから その
クレスは少年の過去を知らない。
わかるのは
よっぽど
ここでは、
(わかった)
「なら俺と友達になろう」
「は?」
「君が面白いと思ってな。 この先のイベントを知りたくなった」
「いべ...んと? いや待て 脈絡がなさすぎる なぜ友達に?」
「君がお母さんのことで大変なように、今私も困っていてね」
「困っている?」
「うん なんだか知り合いが友達自慢勝負という謎な勝負をふっかけられてな
これをどう解決するか悩んでいた所なんだ」
なんだそれはという顔で警戒心のむき出しの少年。
「それで俺を友達として紹介するのか?」
「ああ」
「ただここで話し合っただけで友達なのか?」
「友達なんて互いに勝手に呼び合っているだけだろ」
「ふっなんだそれ」
「とにかく君 私と友達になってくれ」
「いやだと言ったら?」
まぁそうかと顎をさするクレス。
「では君の母を調べる でいいか?」
それは友達になる条件を差し出した。
「.....友達なのに 取引が必要なのか?」
クレスは軽快な笑いをする。
「すまない 私は友達がいないもので友達のなり方がわからないんだ!」
「二度も言うよ なんだそれはw」
はぁっと落胆なのか、ただため息を出しただけなのかゆっくりと肩を落とす少年。
少年はこの目の前にいる少年の考えがまったく読めない。
意味がわからないと言えば、全くそうだった。だけどそれは自分もそうだ。
自分のおかしさは十二分に感じている。
ただこの子は僕に...怒らなかった。
何も気にせず、ただ僕の悩みをただただ聞いた。
不思議とどこかすっと救われたような気分になった。
まだぼくはどうしたいのかわからない。
だけど、そうだな これも
少年は手を差し出す。
「ん」
それは握手という意味だった。
クレスも少年の手を握った。
少年は言う。
「お互い友達いない同士 いいよ友達自慢というイベント参加するよ」
クレスは微笑む。
「いいのか? 意味はわからないのに」
「まず君と出会ったこと自体が意味がわからない これも出会いの神の思し召しだ」
「なるほど そんな考えがあるのか...
そうだ お互いに友達になったんだ
名前を知りたい なんていう名前だ?」
「俺は イリアス・ロンドール だ」
「私はクレス・カルエ・デ・サルゴと言います」
「とりあえず集合場所に来てくれないか?」
「集合場所?」
「ああ、そこで多分友達自慢する」
「まぁいいけど、 」
そうイリアスはクレスの後ろについていく。
イリアス
「そういえばクレスは俺をどう紹介するんだ?」
クレス
「え? うーん 僕と俺で使い分ける天邪鬼黒髪少年かな?」
イリアス
「色々と失礼なことだけはわかった。
友達になるのは失敗だったか?」
クレス
「知らずに後ろ髪、知って後悔なら知って後悔派なんだろ? いいじゃないか」
イリアス
「言いように捉えても意味がないよ クレス」
クレス
「大丈夫だ イリアス 君を紹介する彼女はもっとめんどくさいよ 君よりも」
イリアス
「そう...え? 今めんどくさいって言った?」
クレス
「さ 行くぞ」
先に行こうとするクレスとあ、おいとついていくイリアス。
―
クレスのこの行いは、果たして彼が望むゲームと呼べるのだろうか?
彼が作り上げていく物語は一体どうなるのか。
少年が望むゲームとは一体どんなのか?
それがわかる日は今だ遠い。
―
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