一章:序節 第十七話 ピピンの子
ピピンの子
それは恐怖公という
ピピンとはなにか、それは悪魔である。
そしてピピンの子は悪魔の子である。―
人々はその
以前はそうは呼ばれていなかった。
昔の話だ。―
グラディウス
「父さま どうして父さまは悪魔と呼ばれるようになったのですか?」
父はこう言った。
「為すべきことを為したからさ」と
二言目も発した。
「人は為すべきことを為すと恐れ、
為さなくてもいいことを為さないと人は
だから人は皆、私を恐れたのだ。」
俺にはよく分からなかった。
だから戦場へ降り立った。
父の背中を追うかのように、
父を恐れた逸話に、戦場の一つにとある西の島国との争いがあったという。
その争いで、父は敵方の
そして父が行った方法は、完璧な殲滅戦。
2万の敵兵を一瞬にして2000へと減らした。
全滅というほかなかった。
敵方も含め、戦争では死者は多くとも
戦争とは外交手段であり、外交的
国を守れても、報酬がなければ民が反乱を起こし、国は内側から瓦解する。
そのため、各国間では捕まえた捕虜を交換条件として、金銭や食料と交換するというもの。
負けたら土地を奪われ、勝ったら捕虜で金品の交換する。
"殺さず捕虜として捕らえる"
それが暗黙の了解となっていた。
父はそれを破ったのだ。
それは完全な脅しとし、西方の島国との交換条件としてこの学園の支援を提案したという話だ。
俺はそれに憧れたわけではない。
ただ父の背中を追っていただけだった。
ただ次代の
"為すべきことを為す"ために、ただ父と同じ道に歩いていただけだった。
たとえその先に、荒れたモノであろうと―
戦場を幼少ながら歩いていると、
その場で泣いている自分と年が同じであろう少女が泣いていた。
俺は荒んだ目でそれを見ていたが、何も感じなかった。
同情もない、憐れみも、心配もなかった。
だが心底気になった。
なにをそんなに泣いているのだろうか?と
家族だろうか....親類だろうか....想い人か
だが人は死ぬ。確かにそれは悲しいものだ。
しかし、人は成長するものだ。
前を向いて歩くんだ。
今は泣け、好きなだけ泣くんだ。
そして為すべきことを.....
スパッとリンゴに矢が刺さる。
そのリンゴはパタリと倒れる。
先ほどまで聞こえていたおおきく大きく泣き叫んでいた声は止んだ。
俺はその矢が飛ぶ方向を見た。
そこには喜ぶ兵士が居た。
その兵士たちは父が貴族とあってか、かなり
そしてクロスボウを人に向けたのだ。
弓で人を撃つというのも、そうだが、
クロスボウは狩りのためのもの。
それが一般的な考えだ。
だが彼らは
彼らは言う。
「よっしゃ 一匹目だ」
「ふふーん 俺は二匹目だ」
「バッカ俺が一位だよ 4匹だよ!」
彼らは競い合っていたのだ。
彼女らに弔いもせず、ただ狩りの対象として矢を放ったのだ。
「お もう一匹居るじゃん」
「おい見ろ 結構....身なりが」
「おい バカやめろ!!」
次は俺に矢を放った。
気がつくと俺は"為すべきことを為した"―
父が言っていたことがわかった。
為すべきとは、
人として守るべき
周囲になにを言われようが、
どうと言われようが矜持を果たすことが"騎士"としての義務だと感じた。
これを俺は 『ダモクレスの剣』の
"大いなる力には大いなる責任が伴う"
と呼ぶことにした。
公爵家として生まれた者として、その
だが、 それはそうだとしても.....
力なき者は力あるものに
賢者たちは
"人も世も生き抜くために必要な手段だ"と言っていた。
同感だ。
生きるためなら、父の血も啜ろう、母の肉を齧ろう、そして公爵家として為すべきことを為して、大罪人となろう。
だがそれは俺が、"運"がよかっただけだった。
その"矜持"は、
俺が"たまたま"父の元で養った結果だということが明々とハッキリとした。
だからだからこそ
"持たざるモノ"をただの食わぬ、漁らず、貪らず娯楽として狩る"持っていると勘違いしているモノ"が心底嫌いになった。
そう俺は心底、
俺は"持てるモノ"として生きよう。
それが "俺の為すべきことだ"
いつしか民も人も貴族すら、
俺のことをピピンの子と呼ぶようになった。
―――――
書斎室。
両脇には書簡が保管した棚があり、奥には剣を隠したハミルトンが居た。
ハミルトンは左足を前に出し、出来る限り俺にその右手に携えた剣と肩の動きを見せなかった。
ハミルトンは左足を大きく踏み出し、上半身をかがめた。
かがんだ瞬間、に右に動かすとハミルトンが着ていたマントがその軌道に沿うように靡く。
グラディウスの目には、
書斎の本棚の間一面に
そしてハミルトンはマントに穴を開けず、下から撫で斬りするかのようにグラディウスに切り上げた。
グラディウスはその戦闘経験から、後ろ一歩に下がり、剣を横にし、その
だがその剣撃は重く、後ろに浮き飛ばさるような衝撃が来る。
グラディウス
(強いっ!! 戦い慣れている)
ハミルトン
「どうした? たった一撃で
グラディウス
「ほざけっ」
そしてハミルトンはもう一度同じ構えをする。
グラディウス
「同じ芸しか取り柄がないのか?」
そうにこやなかな顔で言う。
応答もしなかったハミルトンはもう一度同じやり方をする。
グラディウスは剣を構え、反撃の準備をする。
グラディウス
(この技はほぼ
一度動きが分かれば同じきdッ)
ミエラ
「グラディウス!!」
気付くとグラディウスの頬には左手拳が打ち込まれていた。
吹き飛んだ瞳に遅れた記憶と今の記憶の混濁を始めていた。
グラディウスは立ち上がる。
口に溜まった血を吐き出す。
だがハミルトンは態勢を立て直し、まっすぐ立っていた。
ミエラ
(これが....戦いなの?.....)
グラディウス
(ちっ....あいつ、
だが焦点が合わない目は確かに記憶していた。
ハミルトンがマントで上半身を隠した瞬間、左脇が微かに動いた という記憶を。
視線誘導。
戦いや日常生活において、作業する際に注目する視線を移動させること。
つまりハミルトンの動きは、
右側に大きく靡いたマントに注目させて、暗所である狭い左手側から
だがおかしいのは、右手の剣撃より左手のほうが
ミエラ
「ハッ!! グラディウスさま ハミルトンは確か左利きです!」
ハミルトンは真顔で不服そうな声でちっと舌打ちする。
グラディウスは気付く。
「お前、本来 盾使いか?」
ハミルトンは言う。
「学園は狭いですからね 盾を持ってこないのですよ」
その短いショートソードもこの狭い書斎室や回廊では
適材適所と言わざるおえなかった。
そして、盾使いは戦場では利き手を持つことが一般的である。
戦場では、利き手で防御をしていたほうが生存率に大きく関係している。
これは突然の行動に咄嗟に早く動けるのは利き手だからという理由だ。
利き手を武器にする場合は、
慣れた利き手を扱った攻撃性を高めるが、その防御性を下げる。
これが利き手で持つ盾を扱う戦い方だ。
そしてもっとも厄介なのは、左利きの盾使いだ。
基本的に人は右手を利き手とし、武器やモノを扱う際に、右手で扱う。
人の体は上から剣を振り下ろすと、
胸と腕の筋肉により、
その剣先、
左手側に剣が落ちやすい。
その傾向上、
人との対面で対抗側にある手が一番反応しやすいのだ。
つまり俺の右利きは左利きの盾使いには攻撃が"見えやすい"のだ。
グラディウスは
だが、相手は盾がない。
そのために接近戦が
グラディウスはハミルトンの元へと突っ込む。
ハミルトンは一振り、二振りと剣で薙ぎ払うがグラディウスはそれを防ぎ、回避する。
そしてその
かぁああああああああああんと衝撃音が響く。
ハミルトンは言う。
「子供が大人に勝てるわけがないだろ?(真顔)」
グラディウスの右手を掴み、蹴りで吹き飛ばす。
がはっ!! だが吹き飛びそうな体だったがハミルトンに抑えられ、以前その場にいた。
はぁ...はぁ....
グラディウスの体には明らかにダメージが入っていた。
ハミルトン
「やっぱ子供の体は柔らかないな(真顔)」
ミエラ
「グラディウス、助けた!!!」
そう女性の声が聞こえる先にはミエラが先ほど倒れていた少年をおんぶしていた。
ハミルトン
「参戦しなかった理由はそれか 大層だねぇ(真顔)」
グラディウス
「それが"騎士の仕事だからな"」
グラディウスは精一杯の力を振り絞り、体を持ち上げた。
ハミルトンの首を足で挟んだ。
ハミルトン
「なんの真似だ(真顔)」
グラディウス
「戦場でやることと言ったら、首切りだろ」
そう首筋をつま先でなでる。
ハミルトンはハッとなり、
一瞬で首筋をなでるが、血はなかった。
「.........」
ハミルトンは投げ飛ばした先に居るはずのグラディウスがいつの間にか消えていた。
グラディウスは書斎の外側に置いていた槍を回収し、ミエラとともに走っていた。
ミエラは苦し紛れに言った。
ミエラ
「ごめん...全然戦えなかった。」
グラディウス
「いやいい あれが最善だ」
ミエラ
「..........」
グラディウスはポンポンッとミエラの頭をなでる。
どこに向かおうか、
後ろにはハミルトンが付いてきていた。
ミエラ
(来てるッ.....!?)
ハミルトン
(やはり 書斎の外に
グラディウス
「あの群れに紛れるぞ!!」
その先いたのは放心している人たちの集まりだった。
ミエラ覚悟し、「わかった」とその一言で一行は突っ込む。
ハミルトンは突っ込んでいった一行についていかず、一瞬その場で考える。
(無策に追いかけて、ここの人に傷をつけたら団長に殺される。
かといってみすみすとピピンの子たちを追いかけないわけには行かない。
ピピンの子以外はリストにはなかっただが、
ここまで用意周到なんだ。
リストにある子を追いかけていたら、
自然と暗殺対象である『イリアスロンドール』と『クレス』に追いつく可能性がある。
なら追いかけるか....だが下手に追いかけて見失っても....)
ちょろちょろと動く先が細いなにかが見えた。
(槍だっ!!)
ハミルトンはその人の群れで十分に剣を振れなかったが、それは相手も同じと思い、その槍まで走っていく。
避け、どかし、避けるが意外にもその人混みは多かった。
ハミルトン
(くそっ 意外にも人が多い、槍...あれ?)
気付くと近くに見えていた槍はなく、気付くと人混みの隙間からその一突きがやってきた。
だが、 またかぁあんっと槍と
グラディウス
(くそっ....槍はその精密性の高さと距離で強さを誇っている....だが)
グラディウスの突きは確かに正確だった。
一突きで心の臓へと突き刺していたはずだった。
鎧を着込んでいると言えば、聞こえはいいが衝撃かなにかで後ろで仰け反られてもいいものが彼には一切の揺れがなかった。
グラディウスは手慣れた手つきで槍を後ろに持っていく。そしてすぐさまに消えた。
ハミルトン
(..............見失った なんつう精度だ)
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